イメージの百人一首97「来ぬ人を―」
※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。
【第97首】
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
《こぬひとを まつほのうらの ゆうなぎに やくやもしおの みもこがれつつ》
あなたは恋人が来るのを待っています。なかなか来てくれない恋人に、あなたはじりじりとした気持ちでいます。淡路島の松帆の浦で、夕方風がやんだ頃に、藻塩が作られます。藻塩とは海藻から採る塩のことで、精製するために火で煮詰める過程で、煙が立ち上ります。ゆらりゆらゆらと消えることなく立ち上る煙は、あなたの、待ち人への消えない想いのよう。その煙のもとで焼かれているのは、待つことに苦しむあなたのその身かもしれません。
権中納言定家《ごんちゅうなごんさだいえ》
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