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【詩】ローマにて

すべての道が向かうとされた
喧騒と、混乱にわく
七つの起伏の永遠の都
記録の足もとに埋もれていた
夥しい記憶が剥き出しになっている
遺跡が日常を交錯する
広大な異次元を
残された轍を踏みしめながら
人は、時空のひずみに遊び
滅びの声に、耳をすましている

フォロ・ロマーノ
人が集い、語り合う
かつて、賢人たちが歩いた路
ウェルギリウスが、詩を歌った
 愛はすべてを打ち負かす
カエサルが、論を唱えた
 人は見えぬものに大いに悩む
靴の音に磨かれつづけた
石だたみの細い路地
遠い想い出に目を馳せる
生きるって何だろう
人は、命を世欲に費やし
魂をすり減らしながら
享楽に身を投じる

井戸のむこうの
崩れかけた石の壁に
小さな影が見え隠れしている
近づくともなく
こちらをうかがっている
二千年前とおなじ眺め
引きとめる時間のこわばり
幸運をもたらす黒い猫
答えはみつかりましたか?
黄色い瞳が問いかけた


©2022  Hiroshi Kasumi



お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。