かすみを食べて生きる60:セルフ経鼻栄養
脳梗塞 発症1か月と27日目:リハビリ病院2か月目⑦
・食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(朝・昼食)と鼻からの経管栄養。首を左に向けると飲める。食事以外の時間は一口にスプーン半分の量の水分であれば飲んでもよい。
・状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。
口からの食事訓練と併用している経鼻栄養。
ここにもまだ自分でできることの余地があった。
これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と26日目:リハビリ病院2か月目⑥
発症1か月と28日目:リハビリ病院2か月目⑧>
セルフ経鼻栄養
嚥下障害のため嚥下訓練中の私は、口から食べる食事では必要な栄養を摂りきれていない。
そのため鼻から胃につながるチューブで直接栄養を入れる経鼻栄養を併用している。
朝食前と昼食後、そして夕食の一日3回。
そのたび看護師さんに、鼻のチューブを栄養の入った容器につながるチューブにつないでもらい、終わったら外してもらわなければならない。
経鼻のチューブを入れたのが発症2日目。
本日発症58日目にして、経鼻のチューブのつけ外しを自分ですることが許された!
まず鼻から入れているチューブがちゃんと胃に入っているか確認する。
チューブからシリンジで少しだけ空気を入れて、胃でぶくぶくと音がするか自分のおなかに聴診器をあてて聞く。
ちゃんと音が鳴ればOK。
栄養をバケツに入れて天井の点滴棒にぶら下げ、滴下筒をぎゅっと押して液だめを作る。
ブレーキを緩めて、バケツからのチューブ内の空気を出しきったら準備完了。
鼻のチューブとバケツのチューブをつないでブレーキを操作して栄養を適当な速さで落としていく。
私にとっての適当な速さは嵐の『happiness』ということになっている。
栄養が落ち終わったら、ブレーキをかけてチューブを外す。
栄養の後は鼻のチューブからシリンジで薬を入れて、その後チューブ内をきれいにするためにこれまたシリンジで白湯とお酢を通す。
5日前に習って、しばらく看護師さん見守りのもと自分でやってみて、今日自立のGOが出た。
これを自分でできるようになったことで、経鼻での食事前後に看護師さんを呼んで待つ時間が無くなった。
終わった後もすぐにトイレに行ける。助かる。
そしてもし退院して経鼻の栄養が続く際も、自分でできる。
自分でできることが増えるのはうれしい。
でも、この常に鼻から出ているチューブは何としても取って退院したい。
朝ごはん#3
さぁ、今日も朝ごはん!
昨日ミキサーがゆとマンゴーペーストのマリアージュにより謎のアジアンスイーツを作り出した私に、こわいものはない。
手前右手のお皿。とってもサーモンピンク。
献立はこちら。
サーモンの和え物
マンゴーペースト
ソフール
おかゆ
やっぱりサーモンだった。
これまでサーモンは他の白身魚に比べてのど通りが悪い印象だったけど、今回は大丈夫そう。
でもサーモン独特の風味があっておかゆとは合わないので、単品でいただく。
そしておかゆは、梅ペースト部分を食べきったらマンゴーペーストと混ぜる!
これ、なんだか癖になる味。
マンゴーペーストをおかゆと食べるので、ソフールもマンゴーに混ぜずに単品でいただくことができるようになった。
所要時間1時間5分。
まずまずのペース。
商店街を歩こう
今日の理学療法のリハビリは、第3回屋外歩行訓練!
外でちゃんと歩けるかの訓練。
1回目は家の近所のスーパー周辺、2回目は階段の多い寺。
3回目は大きめの商店街。
人通りも多く左右に店があるのでいろいろ気になる。
きょろきょろするとめまいが起きやすいので気をつける。
あぁ、百均に寄っておかゆ用のふりかけを買いたいな。
でも訓練中は金銭の使用は不可なので我慢。
外を歩くのも慣れてきたけど、やはり問題は嚥下反射が弱いため口に唾液が溜まってしまうこと。
足を止めて首を左に向けて唾液を飲むことで対応している。
今回も35分程度の外出で4回立ち止まって唾液を飲んだ。
できれば歩きながらできるようになりたい。
お昼ごはん#16
屋外歩行訓練で外から戻るとすぐに昼食。
今日もランチはミキサー食。
さてさて何でしょう。
今日は全体的にとっても緑。
思わずおかゆにGreenと書いてしまった。
今日の献立はこちら。
煮込みうどん
えび茶巾とチンゲン菜の柔らか煮
おかゆ
手前の黄色いお皿がえび茶巾とチンゲン菜。
では奥の緑は何だろう。
たぶん、煮込みうどんの具。
食べてみると恐らくほうれん草。
えび茶巾とチンゲン菜は少しのどを通りにくい。
チンゲン菜はほうれん草や小松菜より、少し繊維を感じた。
所要時間は1時間。まずまず。
湯舟、解禁!
作業療法は久しぶりのお風呂評価。
これまでシャワー浴であれば一人でやってよしだったのが、浴槽入浴も一人でやってよくなったぞー!!
病棟のお風呂は一人用。
浴槽に入る際は、時間内に自分でためなければならない。
シャワー浴でも髪を洗うと時間がぎりぎりの状況なので毎回は無理そうだけど、入りたくなったら湯舟に入れる。うれしい。
研究に協力したい
最短で考えても、まだ1か月はこの病院にお世話になる事が見えてきた。
そうわかった時、私は担当セラピストさんに伝えた。
「もし、ワレンベルグ症候群や脳梗塞後遺症について、試したいアプローチや取っておきたいデータがある方がいれば、入院している間であればできる限り協力するので言ってください」
今私は嚥下障害と右半身の感覚異常でとても困っている。
特に感覚異常はあまりなすすべがなく、しびれに悶えるしかない。
対処療法でも手立てがあれば知りたい。
情報が欲しい。
できれば手続きがわかり再現性がある、複数人の目を通った論文。
論文や学会発表で公表されれば、患者も調べることができる。
その研究をしているところに連絡を取ったり、今受けているリハビリ先に相談をできるかもしれない。
患者自身が家でのリハビリに取り入れたりもできるかもしれない。
一方で、リハビリのセラピストさんたちは診療報酬点数を確保するために日々分刻みでリハビリに入っているのも見ていてわかる。
セラピストさんは朝から17時過ぎまで忙しい。
合間に記録も書かなければならないだろうし、翌日の準備も必要だろう。
日々の業務と研究の両立は、恐らくプライベート時間を費やさないと難しそう。
セラピストさん達には、どうかよい休息をとってよい仕事をしてほしい。
でも一患者としては、個人では知りえない知見をまとめて公開してほしいという思いもある。
もしかしたらそのような役割の方も院内にいるのかもしれない。
全国のセラピストさんたちの職場が研究推奨して、しかるべき人が勤務時間内に研究ができる環境が少しでも整うことを願わずにいられない。
ーー振り返って
ずっと眺めていた滴下筒をいよいよ操作できるようになりました。
これで自分の好きなペースで栄養を落とすことができます。
自分でできることが増えるのはうれしいものの、これ以上口から食べれるようにならず、このチューブとずっと生きていくことになったらどうしようという不安もありました。
この時はただ、目の前のごはんを食べきるという直接訓練と、首周りの筋トレなどの関節訓練を粛々とやるしかありませんでした。
経鼻栄養が自立になり、この日お風呂での浴槽も自立にもなりました。
リハビリ病院生活のレベルがまた一段上がったように感じました。
結局入院中、研究協力の声がかかることはありませんでした。
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