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推しコミックエッセイについて語り合う

推しコミックエッセイを教えてください!

はちみつコミックエッセイ編集部では、2023年5月20日(土)にレーベル立ち上げ2周年を記念して、豪華ゲストをお招きしTwitterスペースにてトークイベントを開催しました。ゲストの方には、

・「2021年以降に発売されたコミックエッセイ私のNo.1」
・「今後こんなコミックエッセイが読みたい」

をテーマに推しコミックエッセイをセレクト頂き、作品のおすすめポイントを熱く語って頂きました。今回の記事では、当日登場したコミックエッセイをバババと13冊一気に紹介していきます!

当日ご登場いただいたゲストのご紹介


かざりさん

web上でイラスト大教室を開きイラストレーターや漫画家の憩いの場・勉強の場を運営。コミックエッセイが好きすぎて、はちみつコミックエッセイ主催のファンミーティングにも参加。語りつくせないほどの熱い情熱がある。

勝間準さん

元書店員で現在は出版社にお勤め。現役の書店員時代には数々のコミックエッセイを応援する売り場展開をするほどの応援隊長!特に好きなのは「食」にまつわるコミックエッセイ。その細身の身体からは想像できないほど。
 

山﨑旬さん

現KADOKAWAコミックエッセイ編集部編集長。メディアファクトリー、KADOKAWAと松田編集長の下で働いている頃から数々のヒット作を世に送り出す。1度担当した著者からは「一生担当をお願いしたい」と話題になる。 


山本ありさん

パン、グルメ、旅等のコミックエッセイ著作多数。食べ歩き飲み歩き大好き、作るのも大好き!なありさんが描く食べ物や飲み物はとても魅力的。生粋の東京生まれ東京育ちな部分が垣間見れるのも魅力。6/23新刊「明日晴れたら、日帰り旅行へ」発売。

森井ユカさん

立体造形家、キャラクターデザイナー、雑貨コレクターで出版物も多数。樹脂粘土を用いて「あたしンち」「おいピータン!!」などのキャラクターの立体イラストを制作しカバーデザインにも。イラストレーターの夫が漫画を担当したコミックエッセイ「よくばり個人旅行 旅立つまでのガイドブック」は旅の準備と手配の楽しみかたがわかりやすく楽しく描かれている。

ゲストの推しコミックエッセイの紹介!

かざりさんの推しコミックエッセイ

➀『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい!』(幻冬舎)
著者 水谷さるころ 監修 山脇由貴子

私が子どもによく怒ってしまうので、悩みの参考にしたいと思って読みましたが、とても勉強になりました。夫婦でカウンセリングを受ける様子や、カウンセリングの質問内容も細かく描かれているので、カウンセリングを受けたいけど受けられないという方にも参考になると思います。結婚していたら、どんな相手でもなんとかやっていかないといけない部分があると思います。ご主人と向き合いながら、その思考錯誤の過程を見せてくれている、水谷さるころさんの漫画はどれも面白いです。

➁『スピリチュアル否定派の私が、旅に出てプロのヒーラーになった話。』(ぶんか社) 著者 英治あかり

他人の人生を垣間見せてくれるのが、コミックエッセイのジャンルの素晴らしい所だと思っています。身の回りにスピリチュアル好きな人はいたとしても、そこまでガッツリ聞けない人の半生をエッセイだから読まさせてもらえるなと。友人にプロのヒーラーがいたら、引っ張られて私もヒーラーになろうかなと思ってしまうけれど、コミックエッセイだからこそそういう事にもならず、「へ~」という距離感で読めるのが良いなと思います。


➂『37歳ままならナイスなソロ生活』(はちみつコミックエッセイ)
著者 中島悠里

とにかく面白いです。出来事や感情のバリエーションが特異的!そんな表現する!? 頭の中そんなことになる!? という話しばかりです。人見知りスイッチの押し間違いとか、すごいわかる~みたいな(笑) 面白いだけじゃなくて、共感できる感情をこんなにテンポよく伝えてくれる所が素晴らしいです。「ソロ生活」というと蔑んだ方向にもっていかれがちだけど、まったくそんな風にならない所もいいなと。とても楽しくて素晴らしい作品です。

➃『こう見えて失語症です』 主婦の友社
原案 米谷瑞恵さん 漫画 あらいぴろよ

  旦那さんが脳出血の後遺症で失語症になった事をきっかけに、原案の米谷瑞恵さんが自ら言語聴覚士になり、夫婦で一緒にリハビリの勉強をしていくお話です。脳の病気になっても、前向きに明るく生きる姿を描いてくれています。病気になっても、人間は出来事をどう受け取るかは自由、全部自分でコントロールできるという事を見せてくれる、すごい良いコミックエッセイです。失語症の勉強にもなるし、生き方や考え方の勉強になる作品です。

➄『いってらっしゃいのその後で』(KADOKAWA)
著者 ツルリンゴスター

 育児の様子にも触れながら、あくまでも主体は親で日常を淡々と描いてくれるのがすごく素敵。劇的なことや壮大なテーマではなく、コミックエッセイはそうそう!こういうのが読みたいの!と思わせてくれる。普通の人の普通の人生の心の機微を描いてくれていて良いなという風に思います。

コミックエッセイ愛に溢れたかざりさんには、+5冊も紹介してもらいました!その他にもおすすめコミックエッセイがいっぱいです!

・『うっかり婚も気がつけば10年め。』(著者 こいしさん)
・『キレる私をやめたい ~夫をグ永子ーで殴る妻をやめるまで~』(著者 田房永子)
・『ニシハラさんのわかりにくい恋』(著者 ニシハラハコ)
・『カルト村で生まれました。』(著者 高田かや)
・『フィリピンではしゃぐ。』(著者 はしゃ)

勝間準さんの推しコミックエッセイ

➀『くいしんぼうの南インド生活』(イーストプレス)
著者 しばざきとしえ 監修 あーちゃん

 異国の食べ物がすごい美味しそうに描かれています。食べ物の名前は覚えられないんですけど(笑)食べてみたいなぁと思わせられます。行く事はないかなと思いつつ、行ってみたいなという思いにかられます。原案を描いている方がカフェをやっていてその様子が描かれていたり、現地の人が日本料理をどう思っているかも描かれていて面白いですね。意外に味噌汁の評判がいいみたいですね。作中にも登場していた世界一甘いと言われる「グラブ・ジャムン」が食べてみたいです。丸く揚げたドーナツをシロップに漬けたみたいなもので、すごい甘いらしいけど慣れると美味しいそうです。 

➁ころんでもポジティブ 毎日を少しでも明るく楽しく生きる23の思考術(はちみつコミックエッセイ) 著者 こしいみほ

 読んでいて、好きだなぁ~と思った作品です。「コミックエッセイは薬にはなるけど、毒にはならない」と思っていて、それを体現したかのようなコミックエッセイです。著者のこしいみほさんの思考の切り替え方って、恐らく自分には真似できないんだろうけど、自分なりの切り替え方があるんじゃないかなと思わせられます。こしいさんの切り替え方は、笑えるのがすごいし、本が出た時は「すげー作家さんが出て来たな」と思いました。いつか、食器洗いのお皿を水切りカゴに積む勝負をしたいです(笑) 

山﨑旬さんの推しコミックエッセイ

➀『将棋の渡辺くん』(講談社)
著者 伊奈めぐみ

 渡辺明棋士の奥様・伊奈めぐみさんが、渡辺さんの仕事や日常周りの事を描いているエッセイマンガです。個人的に、コミックエッセイはテーマを問わず、「この人以外では絶対に描けないこと」を描いている作品に惹かれます。『将棋の渡辺くん』も、家族として物理的に一緒に暮らしている作者にしか描けない漫画ですよね。渡辺さんご自身は、中学生でプロになり、それ以来ずっと棋士として活躍されている方ですが、プライベートでは大のぬいぐるみ好きで家ではたくさんのぬいぐるみと暮らしていたりと、少し(?)変わっているとてもユニークな方のようです。そんな渡辺さんの人柄を、日常漫画を通して知ることができるのが、この作品のいちばんの魅力だと思います。
 すごく素晴らしいなと思ったのは、奥さんの伊奈さんは元々漫画を描いていた方ではなく、この作品の編集者が「漫画を描いてみませんか?」と声をかけたらしいんです。日本を代表する棋士の日常を、漫画の執筆自体が初めての作者が、家族にしか描けない視点で描くというのが、唯一無二ですごく好きです。おすすめなのが、2巻に収録されているご夫婦の対談ページ。若き日の渡辺さんが対局で敗れた際に、奥様の前で少しだけ泣いた事があるらしいのですが、その時、その瞬間に一緒にいる人しか分からない、「天才がちょっとだけ見せた涙」のエピソードにすごく感動しました。漫画ではなくて文章の対談ページなんですけど、こういう「おまけ」が単行本に入っているのもコミックエッセイのいいところだと思います。


➁『私だけ年をとっているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』
(文藝春秋) 著者 水谷緑

個人的には歴史に残る本だと思っています。水谷さんみたいに自ら取材する方で、いろんな所に恐れず入っていて自分の言葉で伝えるコミックエッセイを自分も作っていきたいですね。


山本ありさんの推しコミックエッセイ

『MOGUMOGU食べ歩きくま』(講談社)
著者 ナガノ

 この作品は、自分との対話と感想だけで最後まで描いて読ませているのがすごいです。私も食べ歩きの作品を描いているので分かるのですが、2~3話は一人語りでいけるけど、それが続くと「またこれか」という一本調子の展開になりがちなんです。そもそもクマが可愛いというのがあるんですけどね(笑)
 基本はクマが散歩しながら食べるという構成なんですが、淡々としていて大きな事件は起きません。テンポが大事なんだけど、無駄なセリフがない。溜息の「ふう」とか、そうゆうシーンで1コマ使うんですよ!セリフの取捨選択がすごい絶妙で、あの描き方はナガノさんの独特の感性だから絶対に真似できません。
 「美味しい」とか「楽しい」みたいな感情の表現を無理して描いていない点もとても自然体で好きです。海外に行く話もあるんですけど、「疲れた」とかいってベッドで寝ちゃうんですよ。私の場合は、頑張ってどこか行かなきゃというのがあるから、「疲れて寝る」とかを描くのをやめちゃう。ここいらなくない?私が疲れていても読者的には「知らねーよ。」みたいになるかなと思って結構飛ばしちゃうんですけど(笑)共感のポイントが「分かる、分かる、みんなやるよね!」じゃなくて「そういう時ってあるよね…」みたいなかなり薄いところをすくってくるんです!そのすくい方が上手すぎると思って。強引な共感みたいのがなくて、それがすごいなと思って。真似したいけどできないですね。

森井ユカさんの推しコミックエッセイ

➀『人生最大の失敗』(はちみつコミックエッセイ)
著者 野原広子

とても大好きなんです。野原さんは登場人物ごとの視点が鮮やかに変わっていくというのが、骨頂だと思います。映画を見ているような読後感というか、技術のある方だと思います。不思議なのが、自分の気分や状況とか、年齢などによって印象が変わるお話だなと思う点です。私は、多角的に描かれているコミックエッセイがすごく好きなのですが、野原さんの作品は視点が多角的で、読む状況によって捉え方を変える事ができるのが素晴らしいなと思います。何度読んでもちょっとずつ違う、何回も読みたいなと強く思わせてくれる作品だなと思っています。


➁『北欧こじらせ日記』(世界文化社)
著者 週末北欧部chika

 著者のChikaさんは元々ネットで描いてらして、どんどん人気が出て、本にもなり、ますます知名度が上がり、周囲がざわつきました。シンプルな画風で必要最低限しか描かれていないのですが、構成がとても巧みで、背景が全くなくてもそこがどこなのかが分かるし、見えるんです。そこは素晴らしいなと思います。シンプルな画風は真似しようと思ってもできない事なのですが、私にも書けるかもと、良い意味で思わせられる作品だと思います。
 chikaさんは学生時代に訪れたフィンランドが大好きになってしまって、生活をジリジリとフィンランドに寄せていきます。この後に出た『こじらせ日記 移住決定編』は、実際に寿司職人としてフィンランドに移住するまでを描いた内容で、『こじらせ日記』はその序章みたいな感じです。フィンランド旅行で買ってきたもの窓辺に置くなどささやかな所から始まります。決して大それたことはしていないのですが、自然にその先のフィンランド移住への生活に繋がっていくというのが、とてもリアルで夢があって良いなと思います。画風とかお話しの運びがすごく優しくて、綿菓子食べているような気持ちになる、読んだ人が誰も不愉快にならない作品です。


➂『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』 (竹書房) 企画・原案 小島美羽  漫画 ポレポレ美

 孤独死の現場で、遺品整理業者として仕事をしている小島美羽さんの体験や思いをポレポレ美さんが漫画にされています。タイトル通りにシリアスで重い内容のお話もあります。小島さんが遺品整理の仕事を始めた時に、よりこの仕事の事を世間に知ってほしいと、孤独死された方のお部屋のミニチュアを作るのですが、そのミニチュアの完成度がものすごく高いんです。現場を知っている人でないと作れません。私も立体表現をするので、同業者として本当に心を打たれるものがあります。
 ミニチュアの写真と、小島さんが孤独死の現場で遺品整理してきた体験をポレポレ美さんが描いた漫画で構成されているのですが、よくぞこういう表現や段取りでコミックエッセイを作ってくれたと、この本を作ったスタッフの皆さんに御礼を言いたくなるような作品です。シリアスといいましたが、小島さんの視点はとても大らかです。中には事件性のある現場などもあるのですが、現場をこなすうちに達観されていくというか。全てを許容するような視点で描かれていて、非常に興味深く、心に残る作品でした。
 当然のことながら作中には亡くなった人は出てこないのですが、ミニチュアや漫画の表現から、故人の姿や気配がありありと浮かび上がります。自分が立体を作っているから分かるのですが、人間は原始時代から、実際に書くよりも早く立体に手を出しているんです。やっぱり作るという行為は、気持ちを込めやすい。遺伝子レベルであるんじゃないかなと思います。孤独死の現場に携わる中で、小島さんに感極まったものがあり、ミニチュアを作り始めたという彼女の気持ちが誰よりも分かるなと思いました。



以上!ゲストの皆さんにご紹介してもらったコミックエッセイをおすすめ理由と共にバババと紹介いたしました。

皆さまのセレクトにコミックエッセイへの只ならぬ熱い思いが感じられます。どれも面白そうな作品ばかりですよね!

「このコミックエッセイ読んでみたい!」と興味の湧く1冊との出会いがありましたら、編集部としてはこの上ない幸せです。

さいごに。

コミックエッセイの編集者であっても、読みそびれていた作品がたくさん。こんなに面白い作品が沢山あるのに、読まれないのはもったいないですよね。1冊を作り上げるまでの膨大な時間、大変さを知ったらからこそ尚更です。コミックエッセイの奥深い世界を伝え、さらに盛り上げられる企画もしていけたらなと思っています。

はちみつコミックエッセイも立ち上げからもう2年。20冊以上の作品を生み出してきました。読んだ人の心をぽっと灯したり、笑えたり、元気づけられたり、なぐさめられたり、心に寄り添う作品を作っていきたいですね。3周年に向けて頑張っていきます。

スペースにお越しくださった皆さん、ご登場いただいたゲストの皆さん、
ありがとうございました!

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