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公務員にもマーケティングは必要ですか?(9) ~AIDMAモデル、AISASモデル~

これまでは、3Cから4P・4Cへと商品やサービス、公務員で言うところの施策や事業を生み出すためのお話でした。
ここからは、生み出した施策や事業をどうやって住民に伝えよう?というフェーズのお話です。

「せっかくイイことをやっているのに誰も知らない」、「こんなに楽しいのに参加者が少ない」、「広報紙でお知らせしても反応がない」、「行政はPRが下手だ」、こんな経験ありませんか?
そして、そんな時に模索するのが様々なツールだと思います。

広報紙、ホームページ、プレスリリース、テレビCM、DM(対象者全員、無作為抽出など)、チラシ、メールマガジン、ポスター、ワークショップ、説明会、アンケート、Facebook、Twitter、Youtube、、、

どれが一番効果的で効率的なツールだと思いますか?

そうです、一番効果的で効率的なツールなんて無いのです。
スマホやSNSがこれだけ普及しても、これさえやればターゲットにきっと届く特別なツールなんてものは存在しないのです。

では、どうすればいいのか?
どんな時も使える万能なツールはありませんので、ターゲットの心理や興味関心の度合いに応じた適切なツールを選択するしかありません。
となると、ターゲットの心理や興味関心の度合いを把握しなければいけません。

そこで登場するのが、顧客心理に応じた購買行動のプロセスモデルです。
インターネット検索をすれば、たくさんのモデルが紹介されていますが、ここではAIDMA(アイドマ)モデルとAISAS(アイサス)モデル、SIPS(シップス)モデルをご紹介します。
これらのモデルは、衝動買いのような短期的な場合でも、欲しいと思ってからじっくり考えて迷って、ようやく半年後や1年後に買うような長期的な場合でも、同じプロセスを辿ると言われています。

1920年代にアメリカで生まれたモデル。Attentionを認知段階、Interest、Desire、Memoryを感情段階、Actionを行動段階に分類。
Aまず視覚や聴覚など五感で目を引く「おっ、ナニコレ?」
Iこれがどういうものなのか知りたくなる「もう少し詳しく知りたいな・・・」
D詳細を知って自分にもベネフィットがあると思う「これなら自分にも合いそうだな」
M高価なものはすぐには買えないので準備期間が必要「買うための理由やサポートはないかな?」
A買う理由や資金が準備できたので買う「買えて嬉しい、楽しい、満足」

1920年代に生まれたAIDMAモデルを、インターネットが普及した2000年代にアレンジして日本で生まれたのがAISASモデル。

SearchとShareがインターネットの普及による行動の変化です。
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの登場により、Interestで興味を持ったらまずネット検索して調べるという行動が当たり前になりました。
したがって、ホームページを充実させることが必須条件になっています。
また、SNSの普及により購入した後の「楽しい、嬉しい」といった感情を共有するようになり、それが有名人などのインフルエンサーを誕生させました。

どちらのモデルにおいても、顧客の心理状態に合った無理のないスムーズな流れやストーリーを作ることが重要です。
そのためには、上記のAIDMAモデルで示したように、各段階で顧客に何と言ってほしいのか、セリフを想像し、そのセリフを言ってもらうためには何をすれば良いのかを考えます。

AISASモデルでもう少し詳しく考えてみます。

この図を使って、冒頭の悩みやボヤキを検証してみます。

「せっかくイイことをやっているのに誰も知らない」

これはAttentionでつまずいているケース。
イイことをやっていれば、おいしければ、クオリティが高ければ、ホームページを開設すれば、“勝手に”人が集まってくると思っていませんか?
どんなにイイものでも、それを知らせる努力をしなければ誰も知らないままです。
この段階では質より量!
ターゲットが目にしやすいツールや場所で地道にPRするしかないのです。

東京都内のローカルネタで恐縮ですが、この看板見たことありませんか?

車やバス等で移動する人は、一度は目にしたことがあると思います。
中央線西八王子駅前の歯医者さんなのに、中央線沿線だけに留まらず都内のいたるところに看板が立っています。
これぞまさに質より量!
以前見たテレビ番組で、きぬた先生にインタビューをしていましたが、もはや趣味の領域に達しており、夢はNYのタイムズスクエアに同じ看板を出したいとおっしゃっていました。
ぜひ実現させてほしいですね。

本題に戻ります。

「こんなに楽しいのに参加者が少ない」

これはすべての段階に課題がありそうですが、Interestでつまずいているのであれば、楽しいと思っているのは担当者だけで、自己満足なのかもしれません。
過去記事の(2)~そこにニーズはありますか?~でも説明したように、「やりたいこと、できること、求められていること」の求められていること(ニーズ)が欠けていないか確認した方がいいかもしれません。

SeachやActionでつまづいているのであれば、楽しいかどうかを判断するための情報が欠けている可能性があります。あるいは、情報が少ないから他との違いが分からないのかもしれません。
ホームページの充実や説明会など、ターゲットが必要な情報を得る機会を増やす必要がありそうです。

また、手続きは簡単ですか?
申し込み方法が窓口や郵送で申請書に記入となると、その場で完了してしまうネット申し込みに慣れている人は、めんどくさいと思うかも。
2回目以降の人にとっては毎回、氏名・住所・電話番号などを記入して、身分証明書も提示して、しかも抽選で、、、となると、もういいやと諦めてしまうかもしれません。
他にも会場の立地が悪いことも考えられます。

住民目線で見直す(4Cへの転換を考える)と、改善点が見つかるかもしれません。
お心当たりのある方は、過去記事の(4)~4Pを4Cへ~をご参照ください。

リピーターが伸び悩んでいる場合は、Shareでつまずいているのではないでしょうか?
アンケートなどで満足度調査や意向調査をしてみたら何か分かるかもしれません。

どの段階でつまずいているにせよ、3CのCustomerやCompetiterの分析をもっと深掘りする必要がありそうです。

「広報紙でお知らせしても反応がない」

ターゲットの心理段階とツールが合っていないのかもしれません。
InterestやSeachでつまずいている人、つまりもっと詳しい情報を求めている人に対して、情報量の少ない広報紙やチラシでアピールしていませんか?
ターゲットがもっと詳細な情報を求めているのであれば、チラシや広報紙にQRコードなどをつけて、詳細情報が載っているホームページに誘導するなど工夫が必要です。

「行政はPRが下手だ」

嘆きたい気持ちはわかりますが、トライ&エラーを繰り返していくしか近道はなさそうです。ネバーギブアップ!

分量が多くなってしまったので、具体的事例(RIZAP)とSIPSの紹介は次回掲載します。

つづく

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