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労働時間が過労死ラインに達していないのに脳出血が労災認定された男の話(実話)





過労死ライン

 最近では労働時間が過労死ラインに達していない場合でも労災に認定されることがあるようですね。ちなみに私はその当事者です。とても大変でしたが結果として認定されたので本当に良かった(?)です。どん底の人生から逆転したような気持ちです。労災に認定されるまでいろんなことがありましたがどういう状況で労災に認定されたのかを思い出しながら書いてみようと思います。自分の脳出血の原因が仕事かもしれないと思っている方がいたら是非読んでみてください。もしかしたら参考になるかもしれません。
 私は40代妻子持ちで内装の工事現場で現場管理兼職人としてちょうど6年ほど働いていましたが2021年12月の仕事帰りに社用車を運転中に脳出血による半身麻痺を発症し交通事故を起こし救急搬送され半年間入院しました。杖と装具を使って歩けるくらいには回復をしましたが半身麻痺の身体障害者になってしまいました。健常者と同じように働くことが出来なくなり、娘を抱き上げたり一緒に公園を走りまわって遊んであげることも出来なくなりました。
 いったいなぜこんなことになってしまったのでしょうか?原因は健康管理を怠ったことと劣悪な労働環境で6年間働いたことだと思います。健康管理は自分が悪いですが労働環境は雇用主が安全配慮義務違反をしたことが悪いですね。


では、どっちが悪いのか考えてしまいますが、どっちも悪いのです。どっちがどれくらい悪いのか?というのを過失割合と表現しますが、この割合は後の民事裁判で決めることになります。
 ちなみに健康管理はまったく出来ていませんでした。食事の8割くらいは外食でした。コンビニ弁当かカップラーメンばかりでスープは毎回飲み干しました。睡眠は毎日4時間程度、家族が寝ている早朝に家を出て深夜に帰宅してお酒を飲んで大いびきをかいて寝ました。タバコは毎日10本lくらい吸いました。会社の健康診断では高血圧なので要治療と毎回言われていましたが自覚症状がなくて仕事が忙しかったこともあり治療をせずに長年放置していました。ここだけを見ると会社からはお前が悪いからだろと言うでしょうね。では労働環境はどうだったのでしょうか?
 たまに朝9時に始まった仕事が次の日の夜に終わるというような長時間拘束される工事現場がありました、多い時は月に2,3回ありました。発症する1か月くらい前には4日間家に帰れない現場がありました。
 しかし、それよりも社用車を運転中の発症だから労災になるだろうと勝手に思いこんで期待をしてしまいました。
 そう思ったら何も調べずにすぐ上司に電話をかけてこの脳出血を労災にしてくださいとお願いをしました。当時は労災に関して無知だったので会社が労災かどうかを決定してくれるのだと本気で思っていました。かなりしつこく会社に電話をかけてお願いをしました。この時はまだ呂律が回っていなくて頭も回っていなかったのでめんどくさいやつだなと思われたと思います。しかしこちらは真剣です。家族の生活の為にどうかどうかお願いしますと泣きながらお願いをしました。すると、想いが通じたのでしょうか無理だと思うけどそこまで言うならやってみましょう。と言われて労災の申請をしてもらえることになりました。申請をしても良いけどどうせ無駄だよ?意味ないよ?みたいな雰囲気でした。それでもあの時は本当に嬉しくてこれで救われるかもしれないなと思いました。
 それにしても生命保険に加入していなかったことが本当に悔やまれました。しかし結果としては生命保険がなかったから労災申請という思考に至ったのだと思います。生命保険に入っていてお金に困らなかったらまったく違う結果になっていたはずです。
 入院してすぐに有給休暇を1ヶ月分くらい使いましたが基本給が付かないのにいろいろ引かれて入金されたのはたったの4万円くらいでした。「こんなんじゃ生活できないよ。」と妻に言われました。これでどうやって家族に生活しろって言うんだよ。って怒りを覚えました。退院後に解ったのですが自分の場合は基本給が付かない有給消化のお給料をもらわない方がはるかに得でした。ま、この時にそんなことは知る由もなかったのですが。
 お金には本当に困ったし追いつめられました。しかし、なんとかならないなりになんとかなりました。社会保険には休業給付金という制度があります。

休業給付金

業務外の理由の病気やケガで休む場合に申請すればお給料の60%が1年6か月間支給してもらえます。毎月お給料から引かれている高い保険料はこういう困った時に役立つようです。妻のパートと合わせて何とか家族が生活が出来るくらいのお金になりました。あとは高額医療制度、これは本当に助かりました。って詳しく知っているかのような書き方をしていますが入院していただけの私はお金の事は全て妻に任せていました。よく解っていませんのでAIに聞いたスクショを貼っておきますね。


 そして労災を申請すると言ってくれた会社からは何の連絡もない状態になってしまいました。確認をしてみると社労士に確認をしながら進めているとのことでした。こっちは急いでいるのに何の進展もなくてイライラしてしまい不安は募るばかりです。

労災を認定するのは


 どうしても労災に認定されたくていろいろ調べているうちにこちらも知識が付いてきました。本当に無知でしたね。そもそも労災かどうかを判断するのは労基署であり、会社としてはペナルティがある労災にはしたくないはずです。よし、それなら全てを弁護士にお願いしよう!お金がなくても成功報酬でいけるはずだから簡単に依頼出来るだろうなとその時は簡単に思いました。それからすぐに「労災 弁護士」で検索して出てきた弁護士事務所に片っ端から電話をかけました。しかしこどこの弁護士事務所も門前払いでした。どこも言うことは同じで「労災に認定されてから電話をしてください。」でした。何件電話しても結果は同じです。後に解ったことですがネットで検索して出てくる弁護士事務所というのは検索にかかりやすいように宣伝広告費をかけているから時間がかかりそうなややこしい案件は受けないらしいです。つまり労災認定後の案件は弁護士にとっては広告費をかけてでも受けたい美味しい案件ということですね。そりゃ弁護士も金儲けだから客を選ぶってことか。
 これはもう自分でやるしかないな!と決意して労基署に電話をしました。まずは本当に会社が労災申請してくれているのか確認をすると、通勤災害の申請がされていました。そこで担当者の方に労働環境が悪かったことを詳しく話しました。
 すると、会社からは通勤中の発症だから通勤災害ということで申請が出されていますが、私から聞いた話の内容だと労働災害の案件になりますので労働災害で改めて申請してくださいとのことでした。


暁光!

 通勤災害の申請時に会社から提出された出勤簿や賃金台帳などの資料はそのまま使ってもらえるとのことでした。しかし認定するには発症直前の1か月間と半年間の労働時間を確認しますと説明がありました。
 これはまずいなと思いました。なぜなら会社に提出している出勤簿は月末に思い出しながらまとめて適当に書いていたのでとても不正確です。記憶で書いているので実際の労働時間よりも若干長かったり短かったりする不正確なものでした。労基署にどうやって本当の労働時間を検証してもらおうかととても悩みました。
 過労死110番というサイトに紹介されていた弁護士事務所に電話で相談をした時にスマホの地図アプリの移動履歴が証拠として使える場合があると教えてもらったことを思い出しました。もしかしたらそれが使えるかもしれないなと思い地図アプリのタイムラインを開いてみたら移動履歴や滞在時間が全て記録されていました。仕事で地図アプリをよく使っていたので仕事中はいつもGPSをオンにしていたのが良かったです。酷い労働時間の日の記録もばっちり残っていました。これは使えそうです。
 それから妻に自分のノートPCを病院に持ってきてもらい労働災害の申請に必要な資料の作成を病室で開始しました。地図アプリの移動履歴をを提出できるように紙に印刷できるデータにしなくてはなりません。スクショを何枚も切り貼りする作業が必要でした。解りやすく矢印や解説文も挿入しました。回らない頭でどういう感じに仕上げたら見やすくなるかを考えて資料を作りました。エクセルで労働時間を計算した資料も作成しました。大変な作業でしたがパソコン作業で頭を使ったので良いリハビリになったと思います。しかし誤字脱字は酷かったので内容のチェックを全て妻にしてもらいました。夫婦による共同作業です。一時は入院中に離婚届を突き付けられるかと思い心配をしたのですがこの資料を作成している時は「労災認定」という同じ目標に向かって協力しあっていて運命共同体という感じでした。
 退院後に労基署から呼び出されて面談がありました。私の労働時間は過労死ライン以下なので認定基準以下だと話をされました。その日はがっかりして帰りました。
 過去の労働時間を増やすことなんて出来ませんが、どうにかして認定基準以上に時間が増やせないか考えました。すると出勤簿に書いていない労働時間があることに気が付きました。それは社用車による移動時間です。どういうことかというと、残業時間が多い私に対して会社は社用車で移動する時間を労働時間ではなく距離によって変動する移動手当というものに変更して残業時間を削減していたのです。


 労基署に確認をすると仕事に必要な道具を積んでいる社用車を運転する場合は現場への直行直帰の通勤時間も含めてすべて労働時間になるとのことでした。
 この移動時間を計算するためには会社から社用車に設置されているのデジタコのデータをもらえれば位置情報と運転時間が見れるのでとても簡単です。会社がそれを出してくれるか不安でしたが労基署が請求してくれたらあっさりと出してくれました。今思えばこのころはまだ協力的(?)でした。時間の解析は労基署が全てやってくれました。
 退院して3ヶ月の頃に2回目の面談がありました。やっとすべての資料が揃っていよいよ申請です。社用車のデジタコのデータを解析して正確な労働時間を計算してくださった担当者の方が同席していました。社用車の移動時間を合わせても過労死ラインには達していないと言われました。申請後の見通しとしてはフィフティフィフティかな?と言われました。こちらとしてはやれることはやりきったのでダメならダメでしょうがないねと妻と話しながら帰りました。あとは結果を待つだけです。
 発症から11か月が過ぎた2022年11月に労基署から電話があり労災に認定されましたので郵送する請求書の内容を確認して返信くださいとのことでした。「ありがとうございます!」と言って電話を切る前に「やったーーーーーーーーっ!!!!」と大声で叫んで泣きながらガッツポーズをしましたね。    めでたしめでたし(?)


 ここまで読んでいただきありがとうございました。続きはまた書く~。

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