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声に出せば叶う。中学3年生のある一言から実現した区長と中高生の対談

こんにちは。文京区のユースセンター(※1)「b-lab(ビーラボ)」の運営に携わっている横田です。b-labには放課後や休日になると中高生が訪れ、リビングのようにくつろいだり、ダンスやバンドの練習をしたり、勉強したり……みんな思い思いに過ごします。

そんなb-labでわたしたちスタッフが意識しているのは、ここでしか出会えない憧れの存在との出会いや、多様な体験の機会を提供するなど、中高生の「やってみたい」が芽生えるさまざまな「きっかけ」をちりばめること。

今回は、実際に中高生の「やってみたい」を実現するために起こしたアクションと、その過程でわたしたちがどのようにサポートを行ったのか、具体的なエピソードについてご紹介します。

※1 ユースセンター中高生(ユース)にとっての、家庭でも学校でもない自由な第3の居場所。

中高生の “興味のかけら” はどこにあるかわからない

今回取り上げる中高生の活動は、b-labで年間2回発行されているフリーペーパー「Cha!Cha!Cha!」の制作。「Cha!Cha!Cha!」は、b-labスタッフ数名(編集長、デザイナー、学生インターンなど)と、有志の中高生たちが共同で制作しています。

今号の制作チームとして集まったのは4人。1人は、前号でも活躍してくれた中学3年生のゆかさん(仮名)です。そしてゆかさんから「ぜひ妹も一緒に活動させたいんです。絵が得意なのでフリーペーパーの挿絵を描きたいみたいで」という話があり、この春中学1年になったちあきさん(仮名)もメンバーに加わりました。

もう1人は中学1年のまみさん(仮名)。イラストやデザインが好きとのことで、「フリーペーパー制作に加わりたいんです」と自らスタッフに話しかけてくれました。

そして最後のひとり、高校2年生のいつきくん(仮名)は、わたしと音楽談義で仲良くなって一緒にバンド活動をするようになった頃、「そういえばこういう冊子制作をやってるんだけど、興味ある?スタジオの備品紹介とか書いてほしいな」と声をかけると、「文章を書くのは好きなのでやってみたいです!」と答えてくれました。

今回の制作メンバーのように、自身の興味関心・特技から「やりたい」という気持ちが芽生え、主体的な行動につながることも。何が中高生の「きっかけ」になるかはわからないので、会話を交わす中で興味や意欲のかけらを拾い上げるよう常に意識しています。

パッと閃いたアイデアだけど、「やってみる」を大事に

今号の目玉記事となったのは、b-lab立ち上げのキーパーソンでもある文京区の成澤廣修区長との直接対談です。この対談は、フリーペーパー制作のアイデアを出し合う企画会議で出たゆかさんの意見がきっかけで実現しました。

横田「ゆかさんは、『この人に会ってみたい!』とかある?」

ゆかさん「うーん、普段なかなか会えない人に会ってみたいです!区長とか……?」

横田「区長に何をインタビューすればいいかな?」

ゆかさん「わたしはずっと住んでいる文京区がすごく好きで、その感謝を区長に伝えたいです!」

横田「おお!じゃあ『中高生から見た、文京区の良いところ』を伝える対談の場を企画してみようか」

――というように、ゆかさんの一言で企画が進んでいきました。

「ほんとに区長呼べるのかな?」と不安も残る中、「まずは提案だけでもしてみようよ!」と中高生を励まし、企画書を作成。文京区の所管課へ企画書を手渡すと、区職員・スタッフ・中高生が集まる対面打ち合わせの場が設けられました。

普段大人と打ち合わせをする機会があまりない中高生は、やはり緊張した様子。ただ、中高生の言葉で想いを直接伝えることが大事だと思ったため、「なんで区長へインタビューをしたいと思ったのか、区長と何を話したいのか、ゆかさんからみんなに紹介してくれる?」と話を振りながら進行しました。

無事に対面打ち合わせを終え、区からの連絡を待っていると、なんと1週間ほどして区長から快諾のご連絡が。

中高生たちへ報告すると、「そんなにすぐ決まるの!?」「ほんとに区長と話せるの?!」と、最初は実感がわかない様子でした。

区長と直接話ができることを実感すると、中高生たちは自主的に質問内容を考えたり、その内容を区職員に自ら提案したりするように。スタッフにやらされて作業するのではなく、大人も10代も関係なく対話を重ねて準備を進めながら、当日を待ちました。

言葉にすれば叶う。そう思えたのは「きっかけ」のおかげ

ついに対談の日。b-labへ制作メンバーの中高生たちが集まり、そわそわしながらも質問内容や流れを再確認します。

そんな中、区長がふらっとb-labの「多目的スペース」へ来訪しました。

自己紹介を交わすと、さっそく対談開始。

「区長ってどんな仕事をしているんですか?」
「どうして区長になろうと思ったんですか?」
「中学生の頃の夢って何ですか?」

用意していた質問をどんどん投げかける中高生。

最初は緊張した様子でしたが、区長のフランクな人柄や、冗談を交えた会話の中で徐々にリラックスしていきました。

中高生「区長、おすすめの勉強法ってありますか?」

区長「勉強が苦手でね。逆に教えてほしいよ」

という一幕も。

最後には「ぼくが夢を叶えられたんだから、みんなも叶えられる。まずは夢を見つけてほしい」と区長から中高生へエールをいただき、無事に対談が終了しました。

区長とテーブルを囲んでじっくり話すという非日常の体験。中高生たちは、「普段できない体験ができた」「もっともっと聞きたいことがあったけど、時間が足りなかった」など、興奮した様子でした。

今回の経験を機に、中高生たちが「やりたいことを声に出せば、実現する」という手ごたえを感じ、「区長と対等に話をすることができた」という自信につながればと願っています。

一方で、わたし自身も今回の「伴走」を通して、「やりたいことを声に出せば、実現する」ことを実感しました。

区長との対談記事をフリーペーパーに掲載できるなんて当初は考えてもいなかったのに、できた。だからこそ、今後も中高生に「やりたいことを声に出せば、実現する」と自信をもって伝えられます。

逆に、今回は運よく実現できましたが、自分でも確信をもてていないのに中高生を励ますのは「ウソ」に近いと言えるかもしれません。中高生と接する際、「自分が本心で思っていることをそのまま伝える」ことを心がけよう。改めてそう考える「きっかけ」にもなった出来事でした。


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