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WITHコロナ時代の地産地消とは ~福島県での講演~ その2


前回の記事から間が空いてしまったが、福島県で3回行った講演をここに記しておきたい。
①コロナ時代の観光戦略はどうなる
②コロナ時代の飲食業はどうなる
③それを受けて、地方は食産業をどう考えなければならないか、ということである。


① コロナ時代の観光戦略

まず、ワクチンを待っていても仕方がない。また、ワクチンが効くのかどうかも本来まだわかっていない。インフルエンザワクチンは様々な改良を繰り返されて今に至るが、それでも死者を出している。おそらく、季節や何らかの理由とともに「コロナウイルスが(変異も含め)ぶり返す。そのたびに、なんらかの「制限」が、国をまたぐandまたがない移動、集会に課せられるだろう。
また、国際移動は「ウイルスの拡大を招く」という認識が世界中で(表面上は)広がってしまうだろう。それでも観光したい人は発生するが、選択肢が変わる。中国ではすでに「清潔」「余裕」などが観光サイトでの人気検索キーワードになっている。
感染や不測の事態に備え、「医療体制」が整っているエリアの評価が高まっていくと思われる移動手段も、なるべく短く(早く)、3密を避けたものが求められていく。
要するに、今までの「観光としての」引力である、「世界遺産」「風景」「達成感」「食」「レジャー」「人」「驚き」「買い物」「癒し」「贅沢」etc…そういった『これまでの引力』に、『衛生』や『密ではない』といった新しい引力が生まれていく。観光産業に力を入れる地方は、これからも『変わらぬ引力』はなんだろう?これから生まれる『引力』はなんだろう?ということを考える必要がある。

しかし、このコロナの影響により、『観光での地域おこし』について、地元の理解が得られにくくなっていく恐れが高い。新しいホテルや農泊などは相当の感染対策などを強いられたり、地元住民から拒絶が起きるかもしれない。

既に観光業としては、とてもとてもとても小さくなってしまった観光需要を、世界中で奪い合っている状況である。しかしコロナという大きな足かせがそれを阻む。地域の反発に加え、世界中な競争の中で、どうやって観光客を獲得するのか。観光スポット、ホテル、単独で観光客が呼べるのか?
衛生目の整備に加え、広報戦略・仕掛け、データ分析などの力を結集しないといけない。しかし、日本はまだまだDMOの設立や効果的な運営も課題だらけである。

上記記事における、DMOの役割や在り方の指摘は、そもそもそれが「できていない」ことの現れである(この辺はどこの自治体に聞いても活動が全くできていないと言うている)。


② コロナ時代の飲食業はどうなる

私はいま飲食店の不動産状況をいろいろ把握できる仕事もしている。ほぼ東京圏だが。そこで分かるのは、恐ろしいくらい多くの空き物件が日に日に誕生していることだ。東京圏のうちいくつかの地区、都会のいくつかの地域(例えば大阪の北新地や難波など)は半分の飲食店が淘汰される可能性すらある。夜型のチェーン居酒屋、オフィスワーカーのランチ狙いのチェーンレストランやお店、夜の街のスナックや小規模居酒屋などがその対象となるだろう。

そもそも飲食業は、給付金などだけではキャッシュが追い付かない。もともと自転車操業の企業も多い(上手くいっているようにみえても、新店オープンを続々とするようなところは基本的にキャッシュは次の投資のために持つので)。

少し話はそれるが、飲食業の拡大ビジネスモデルが上手くいかなくなるだろう。一等地に数店舗開設➡キャッシュ調達➡ブランディング➡フランチャイズ化➡回収、、、こういったモデルに銀行が貸しにくくなるだろう。

いくつものお店で聞くのは、一度コロナの影響が出ると、自粛期間などが解除されてもお客さんが戻るまでに時間がかかるということである。自粛期間中は、ケータリング、テイクアウトだけでは売上が上がらない。そもそもケータリングできる範囲にお客さんがそこまで棲んでいないエリアもある(渋谷、銀座、新宿など)

コロナの影響で、飲食業に深刻な影響を与えるのは、人材面だろう。人材の確保がより困難になる。アルバイトとして敬遠されるだろうが、かといって正社員化はなかなかできない。家賃減免も長くは続かないだろう。

飲食業のキャリアデザインがもともと描きにくいのも問題だ。

小規模店舗のいままでの経営スタイルは、
 ・自店舗で食材を吟味し、仕込む
 ・長年やってきた職人・技が価値を持つ
 ・夜が中心の営業スタイル➡雇用は必然的に不安定

という状態であった。

一方、大手のチェーン企業だと、
 ・セントラルキッチンと効率化
  ➡食材(外国産も多種多数利用 なぜなら供給量と価格が安定している)は価格と供給量重視
 ・食べログやぐるなび中での広報戦略
 ・季節雇用、臨時雇用がスタッフの中心
  ➡スキルが継承されない(得られない)➡スタッフのキャリアデザインを描きにくい

という状態である。手に職を、ということで飲食業の魅力はもちろん多いのだがこの不安定な時代で、どこまでそれが耐えられるのだろうか。

そんな中注目されるのは「人件費率を下げるが品ぞろえは充実させるスタイル」だ。

この鳴門BASEは、東京のIT企業が手掛ける飲食店である。きっかけは地域からの「規格外品」活用の要望を徳島県からもらったことだったが、IT企業ならではの業務効率化で、規格外品を活用した料理の製造を、調理から「急速冷凍」までを、自社運営でセントラルキッチン(加工場)を構築し実現させた。加工場横と徳島駅ナカに居酒屋経営。冷凍商品(刺身などもある)だが味付けは専門家が調理しているので人気は高い。提供までを簡略化しているので店舗には職人はおらず、「アルバイトだけで運営できる居酒屋」を実現している。オーダーもお客様のスマホで可能。人数削減だけでなく、閉店後の掃除なども簡素で、残業などもほぼない。人件費率が低いので、ある程度の自粛期間でもアルバイトを抱えられるだけでなく、加工場の商品をケータリングやテイクアウトで提供することも可能だ。その加工の作業でアルバイトを活用することもできる。注文から発注までのフローをIT化し、社員は遠隔でも運営可能だ。
「鮮度や材料にこだわり」過ぎるよりも、ロスがなく、簡略化された運営を目指した方が、売り上げと利益が確保しやすい可能性がある。料理人としてのスキルは加工場で培っていき、他のエリアで加工場の引き合いがあればそこの「工場長」としてメニュー開発などに関わっていくというキャリアデザインが描ける。すでに徳島県だけでなく秋田、愛媛などで設立準備中だ。

集客方法も変わるだろう。通常飲食店だと、5割以上の常連客(目標8割)と、新規の顧客で売り上げを立てる。価格帯にもよるが、新規の顧客(一見さん)が中心になる場合もあるので、ぐるなび、食べログなどサイトなどで新規を獲得するのが一般的だ(最近はレッティとかいろいろあるが)。その後、SNSで、「定期的な」情報発信したり、スタンプなどによる顧客維持(インセンティブ)を行っていく。

しかしこれでは難しくなるのは「自粛期間の対応」である。新規は来ない。とすれば、常連顧客が支える仕組みを構築していくしかない。10割の売り上げを常連から獲得するという意識が必用だろう。お店に来なくてもお金が支払われる仕組みとインセン維持施策(サブスクというよりオンラインサロン)を構築していく必要があるだろう。

③それを受けて、地方は食産業をどう考えなければならないか

これまで述べてきたことをまとめると、
(1)観光は相当な競争時代になる。地域の力を結集しなければならない
(2)都会の飲食店は非常に厳しい状況になる。
(3)飲食業は人材確保がもともと困難。なので、効果的な加工場の設立と低コストで変化に強いフードサプライチェーン構築が必要
である。

これからの地方の食産業は、東京を目指すことも必要ではあるが、地域の中での価値の作り方を変えていくべきである。地産地消という言葉を超えて、もっと多くの意味での「地域内での経済循環」「地域産品の有効活用」を考え、実践しなければならない。鳴門BASEの事例は、地域のものを地域の人が食べることができるだけでなく、効率的に提供するという新しい価値を生み出すことができている。


次回の話では、福島で知ることができた地産地消の事例と、今日の③の内容をより深く話していくつもりだ。

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