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『POP LIFE: The Podcast』#281 エルヴィス―巨大すぎるアイコンの輪郭…をまとめてみた!

前回に続き、2回に渡ってエルヴィス特集をしてくれた『POP LIFE: The Podcast』の補足を更新します。今回は#281、2回目のエピソードを補足します。補足と言いながら私的な感情が入ってるのはご勘弁を!

1:30~「エルヴィスのプレイリスト」
タナソーさん選曲(なのかな?)のプレイリスト、初めての方には入門編として凄く良いですよ。

2:25~「『ブルームーン』と『ブルーハワイ』」
三原さんのプレイリストに入っていたというこの二曲。エルヴィスが生まれたテュペロの町は本当に何もなくて、夜にはただブルームーンが輝くだけ、だったそうです。『ブルーハワイ』、こういう誰でも知ってるような曲におけるエルヴィスの歌唱の素晴らしさは、もう一度見直されるべき。

6:00~「エルヴィスが死んだ日」
1977年8月16日。JBはすぐにグレイスランドに駆けつけて、エルヴィスの遺体と面会したそうですね。個人的には8月15日の翌日に毎年アメリカの象徴であるエルヴィスのイベントに参加していて、そんなところからも日本でエルヴィスファンでいるアンビバレンツな思いは抱えてました。

7:50~「エルヴィスは役者志向が強かった」
一応フォローしておくと、エルヴィス主演映画も初期は結構見るところがあります。『燃える平原児』は監督もドン・シーゲルだったり、座組も気合が入ってる。しかし『ラスベガス万歳』で相手役を務めたアン・マーグレットがあまりに素晴らしく、以降はエルヴィスが食われないように無名の俳優ばかり起用したとか、そういう残念な話ばかり聞くようになります。
パーカーが潰してしまったと言われる映画は『ウエストサイドストーリー』や『スター誕生』などがあります。

8:40~「幻の日本公演」
交渉役もつとめていた湯川れい子さんは、「お金はともかく延期は絶対に出来ないから数万人入れる屋根付きの会場用意して」と言われたそう。ビートルズが色々ありながらもようやく開催した武道館公演が66年で1万人。当時の日本にとってどれだけ非現実的な要求だったかが分かります(つまりやるつもりはなかったのだろう)

8:50~「エルヴィスとモハメド・アリ」
エルヴィスとアリは互いを尊敬しあう親友同士でした。エルヴィスはアリの試合をテレビ観戦していましたし、アリもエルヴィスのヴェガス公演を見に行っています。エルヴィスはアリに「PEOPLE'S CHOICE」と書かれたガウンをプレゼントし、アリはそれを着て試合に挑みました。

しかしアリはこの試合で二度目の敗戦を喫する

10:25~「『エルヴィス』はどこまで史実か?」
『エルヴィス』は時系列の嘘や史実でない部分も確かに多いです。ただ、「こんな感じだった」というまとめ方であって、大筋ではまったくの嘘ということはないです。
嘘というんじゃないんですけど、私が一番思うのは「エルヴィスは反抗しようとしていたのか?」という部分。もう少しナチュラルボーンな、無意識でやることが当時の基準から大きくはみだしてしまう(だからこそ危険な)人だったのではないか?ということ。
ちなみにエルヴィス生存説の時によく使われる「Elvis Lives」というのはアナグラムになっててその偶然も凄いですよね。

13:15~「エルヴィスとB.Bキングが友達だった?」
これは『お~い竜馬!』で竜馬と以蔵と武市半平太が幼馴染だった!みたいな設定になってるのと一緒!と割り切りましょう!幼少期のエルヴィスが雷のような啓示を受けたことを表す為に、首から雷ぶら下げてるのも笑いました!
今回の映画は歴史的に実際に存在している「写真」から物語を創造していくんですよね。そこも上手い演出だと思ってます。

18:35~「『エルヴィス』にはスタジオワークのシーンが少ない」
それが存分に楽しめるのが『エルヴィス・オン・ステージ』なので皆さん、見ましょう(録音ではなくライブリハではありますが)!「作曲をしてない」と言われるエルヴィスですが、どれだけアレンジにおいて重要な役割を担っていたのかも分かります。

22:12~「エルヴィスを初めて知る人はこの映画からで良い」
私も本当にそう思います。音源もベスト盤で良いんですよ。まずはエッセンスを知れれば良いんですよ。その上で今回の映画はエルヴィス本人への興味を持たせる架け橋になってるのが素晴らしい。

24:50~「ポップカルチャーにおいて最初に才能を見つけるのは女性である」
エルヴィスを最初にサン・レコードのサム・フィリップスに薦めたのは、受付のマリオン・ケイスカーでした(映画の俳優、似てましたね)。エルヴィスは彼女に「どんな歌を歌うの?」と聞かれて「誰にも似てません」と答えたそうです。

28:25~「兵役に行ってイノセントが失われる」
これは湯川れい子さんもまったく同じことを言っていて、除隊後のエルヴィスの歌声は明らかに変わった、と。これは軍隊で仲良くなったチャーリー・ホッジからベルカント唱法を指導してもらい実際に声域が格段に広くなったのもありますが、そういう技術的なことではない、絶対的な悲しみや孤独を知ってしまった、だからこそ包み込むような優しさのある声になったと私も思います。それを反骨精神が削がれた、と取るか、大きな優しさを獲得したと取るか。私は当然後者です。

31:30~「世界初の生中継されたショー」
1973年1月に世界同時中継された『アロハ・フロム・ハワイ』。ビートルズが演奏した『Our World』(1967)は全編ライブ番組だったわけではないので、ショーとしてはエルヴィスが最初、そして最後?
このショー、ハワイ現地では深夜0時頃から開始されました。これは時差を考慮して日本でゴールデンタイムに放送されるように決定したと言われています。つまり、エルヴィスは本当に日本には来たかったのだと思う。ちなみに「日本に行ったら講道館を訪ねたい」と語っていたそうです。

39:40~「マイケルとエルヴィス」
マイケルのエルヴィスに対する感情は凄く複雑だったと思います。このスピーチでは具体的にエルヴィスの名前を出して黒人文化の搾取を糾弾しています。

しかし、エルヴィスの娘であるリサ・マリーと結婚もしている。一言では表現できないとても複雑な感情。

41:16~「リサ・マリーの娘」
つまりエルヴィスの孫であるライリー・キーオ。『マッドマックス 怒りのデスロード』のケイパブルで記憶してる方も多い筈。

『アンダー・ザ・シルバーレイク』やソダバーグ作品など良作への出演が続き、ハリウッド的悲劇の連鎖を断ち切って活躍していますが、弟が2020年に自死してしまいました。
ちなみに『エルヴィス』が10数分のスタンディングオベーションを浴びた第75回カンヌ映画祭で、初監督作(共同監督)である『WAR PONY』が新人監督賞「カメラ・ドール」を受賞しました。不思議な因縁を感じますが、日本でも公開して欲しい。

42:00~「今回の映画の選曲について」
パーカーがホテルオーナーとギャラの取引をしている時にエルヴィスが歌っているのが、『サスピシャス・マインド』。「僕は罠にかかってここから出られない」という歌詞ですが、『ブレードランナー2049』でヴェガスに潜伏しているハリソン・フォードとライアン・ゴズリングがバトルになるシーンでもこの曲が流れてました。選曲意図が一緒!
今回の選曲意図は徹底してブラックミュージックとの繋がりが意識されてますが、エルヴィスのオリジナリティは白人音楽と黒人音楽を融合した点。その白人音楽への言及は徹底的に足りなかったです。この足りなさとか正確性を欠いた感じに監督の意図を感じるか、無邪気な暴走と取るかで意見は分かれるのかも。

54:55~「エルヴィスもパーカーも有象無象から出てくる感じ」
これは今回、視線の演出で表現されてると思いました。エルヴィスが幼少期に黒人音楽を目撃するのは壁の割れ目だったりテントの隙間だったり。一方のパーカーがエルヴィスを目撃するのも階段の隙間からやガラス越し。つまり両方「覗き見る」ものとして描かれている。これは「アメリカとは覗き見るものである」という言い換えも可能な演出だと思いました。
バズ・ラーマンには「当たり前!」だろと言われてしまうかもしれませんが、『エルヴィス』はこのように映画としての演出がしっかりしている所がホッとしました。

57:45~「映画に”解像度”を求める」
個人的に今回、エルヴィスが最初に登場した衝撃を、爆音のギターのチョーキングで表現した時点でやられました。本人や役者のパフォーマンスですらなく、「ギュイ~ン!」って音で表現する。この正確性などをすべて吹っ飛ばした飛躍は発明だと思いました。
あと映画では避けるべきと言われる「回想の回想」どころか「回想の回想の回想」くらいまで行ってる感じに、振り切れてるな!と笑っちゃいました。バイオピックにはむしろこの飛躍が必要なのではないか?とすら思いました。

1:03:55~「トム・ハンクスとエルヴィス」
トム・ハンクスはエルヴィス・インパーソネーターが大量に登場する『トラブル IN ベガス』へのカメオ出演、『フォレスト・ガンプ』には(幼少期ではあるが)エルヴィスが登場。何かとエルヴィスに縁がありますね。

1:09:00~「『エルヴィス』は映画館で見た方が良い」
もうこれは絶対にそうですね。私は今のところ5回見ていて、丸の内ピカデリー、丸の内ピカデリーDOLBY CINEMA、立川シネマシティ、新宿TOHO IMAX、グランドシネマ池袋レーザーIMAXなんですが、丸の内ピカデリーDOLBY CINEMAが一番良かったかも。音は勿論、黒が深いのでピンクのジャケットとかの色が際立っていた。ただ、それぞれもう終わってるかもしれないですね。早く見て!

1:10:15~「『ボヘミアン・ラプソディ』と『エルヴィス』」
エルヴィスが全国区になるかならないかの最初期、ミルトン・バールショーで『ハウンドドッグ』を演奏した時、お客さんの笑い声が聞こえます。

QUEENの『ロック・モントリオール』を見た時、フレディがこの格好で出てきたら当時のお客さんで笑ってる人が写ってたんですよ。

本当に衝撃的なものを最初に見た人たちに訪れる最初の反応って、「笑う」なんじゃないかな?って思ってます。

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