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10月27日は「文字・活字文化の日」、そして「営繕かるかや怪異譚」

今日、10月27日は「文字・活字文化の日」です。

さらに、10月27日から11月9日までの2週間(文化の日をはさんだ2週間)は読書週間でもあります。

2021・第75回読書週間標語「最後の頁を閉じた  違う私がいた」

個人的にも、印刷業界人としても応援したい2週間。

読書週間に思うこと

出版・印刷関連業界は長く苦境が続いています。

また、本屋さんの数も減るいっぽう。良い本に出会う機会がどんどん減っているように感じます。

今は、電子書籍で好きなときに好きな本を選ぶことができる時代です。

けれども、本屋さんで一冊一冊手に取りながら良書を探すのも、これまた楽しい。

小学校の時にたくさん読書をした子どもは、中学・高校での勉強が楽しめたり、新しいことへの興味が増したりするそうです。

また、大人になってからも認知機能などが高い傾向にあるとも言われています。

もう、十分すぎるほど大人になってしまいましたが、読書習慣は途切れさせずに続けたいものです。

多くの子どもたちに、たくさん本を読んで欲しい。心からそう思います。

そして「営繕かるかや怪異譚」

「営繕かるかや怪異譚」著者は、小野不由美さん。角川文庫です。

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なぜなんでしょう? 読後感がとてもスッキリするのは。

そして、ホッとするような暖かな気分も味あわせてもらえます。

家などの建物を修繕することを「営繕」といいます。

本作は、タイトルにある通り、「怪異」が起きる建物に住まう人を営繕によって救う物語。

主人公は霊能力者などではなく、単なる大工さん。

彼のもとには、家にまつわる怪異に悩まされている人々からの相談が舞い込みます。

そして、営繕することで、その怪異を鎮めていきます。

しかし、彼はスーパーな存在ではなく、特別な能力を持つ人間ではない。

除霊したり、浄めたり、怪異を取り除いたりするわけではありません。

建物の「疵」を直すだけです。

「障りになる疵は障りにならないよう直す、残していい疵はそれ以上傷まないように手当てして残す」

これが、主人公の営繕屋の考え方です。

彼に「疵」を直してもらった家は、その後、怪異は起こらなくなります。

というか、怪異(のもとになっている過去の出来事)と、今住んでいる人たちが折りあいをつけられるようになるということ。

過去とのつながりを完全に絶ちきってしまうのではない。

むしろ活かしていくという方向性が、読後感の良さにつながっているのでしょう。

いわゆる「怪異譚」ではない

ここまで書いてきて、ハッと気づきました。

タイトルには、「怪異譚」とついていますが、怪異メインの小説ではないなあ、と。

とんでもない怪奇現象が起きて、主人公が怪異と対決! して怪異を収めるような話ではないです。


むしろ、主人公が地味で、登場時間も短い。

一編の最後にすっと出てきて、サラっと営繕して怪異が収まる。

作品全体としては、営繕屋が主人公なのですが、各編ごとの主人公は、怪異に悩まされている人々。

また、この登場人物の背景の描かれかたが、ちょっと切なかったりするんです。

感情移入しやすいというか。

この構成が見事にはまった作品だと言えます(生意気なこといってすみません)。

そして、考えさせられるのは、自分自身のこと。

なかなか、過去の全てと折りあいをつけるのって難しいなあって。

いろんな理由で不仲になってしまったり、大きな揉め事になってしまったりすることがあり。

そんなこと事々にも、なんとか折りあいをつけていくって、大切なことなのかもしれませんね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

「営繕かるかや怪異譚」はいろんなレビューを読んでも、非常に評価の高い作品です。

それも、読後感の良さによるものなのだろうと思います。

ぜひ、ご一読ください。

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