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社会科教育の問題点

私が多く担当してきた小学生から高校入試で学ぶ内容は、基礎教養としての内容としてはとても優秀だと思います。
いわゆる義務教育で学ぶ内容というのは、いろいろな分野を知るうえで入口となってくれる良い内容です。各教科見渡しても、なかなか網羅されていて内容も素晴らしいです。
しかし、伝える側の問題というのが、常にその内容とは相反して存在します。
たとえば、中学校での社会の授業では、3分野を順に進めていきます。
およそ、まず地理、次に歴史、最後に公民という感じです。
内容を短く挙げておきます。
地理は世界の地理事情、日本国内の地理事情。
歴史は日本史を中心に世界史の一部まで及びます。
そして、公民は日本国憲法、経済、金融の仕組み、政治の仕組み、福祉の仕組みなどなど一般生活に必要な一般常識全般を取り扱っています。
これを3年弱でやるというなかなかの強行軍ぶりです。
今までみてきた生徒さんの学校のほとんどは、それぞれの教科を1年で終えることができず、1年生でやる地理が2年生にくい込み、2年生でやる歴史が3年生にくい込み、公民は、最後まで学校の指導ができず、ひどい教師になると授業をやらずに読んでおくように生徒に伝えて、平気でテストに出してくる始末です。
私のみてきた生徒さんの中には、公民という教科を認知していない生徒さんもいました。
まあ、よほど勉強をやらなかった生徒さんたちではありますが、社会生活に密着した教科として公民の知名度が、中学教育において低い事情というのは見過ごすわけにはならないなと常々思っています。
無論、私の授業では、しっかりと説明して、とても納得した状態でテストに送り出すので良い点数を取って来てくれることが多いですが、私の説明する内容を学校の先生からは全く指導されていないということもよく耳にします。
この公民という教科の扱いですが、社会生活をおくる日々においてもとても重要な内容になっています。その内容の中身についてより詳しく箇条書きしておきますと、
・憲法を始め、法律関係(民法、刑法)
・三権分立(司法、行政、立法)
・金融経済の仕組み(銀行の仕組み、為替や金利についても触れ、身近なクレジットカードなどにも及びます。)
・地方自治や選挙(選挙権が18歳からになりましたので、詳しめにテキストでは書いてありますが、授業内容は生徒さんに聞いてみると薄めです。)
・メディアとの付き合い方(メディアリテラシー)などなど
ざっと並べてみただけでも、多岐にわたります。
この全然違う分野を一緒にされた内容を半年あるかないかで、学校の教師は何とか説明を終えなければならないということ。これ自体、ひとことで言ってしまえば、酷な状況です。
そして、この内容を消化していかなければならないにも関わらず、生徒さんからよく耳にするのは、何人かの班に分かれて、レクチャーさせる場面がなぜだか多く、その内容も生徒がよくつかめないものが多くなっているようです。私が受け持ってきた愛知、三重の学校の事情しか分かりませんが、社会の仕組みで現在決まっていて運用されているルールを体得させなければならない教科の役割りということがひとつあるとしたなら、しっかりと説明してあげる時間に多くを割かなくてはならないのではないかと思います。
おそらく、この両県で同じような展開になっているということは、教育分野でも試行錯誤し続けている国の指示でやっていることとは思いますが、毎年毎年最後まで終わることができなくなっているケースが顕著であることについて、何年も見過ごしていることの方に問題意識をもっていくべきだと思います。その先の高校受験では、そんな事情は全く関係なく詳しめの問題を出題され、それに対応しなくてはならない生徒さんたちにとって、本当に迷惑な話です。
それぞれの教科の特性があって、内容の違い、濃さがありますが、この公民という極めて社会生活に密着した特色を持つ教科を生徒さん一人一人にその必要性と重要性を理解させることは、今の状況を変えることはひとつ急務だと思います。
私が経済について、まともに学びだしたのは、大学1年の一般教養の時から株を生業にしていた時期でした。いわば大人になってからです。学びだすと専門用語も多く、とても難しく感じましたが、最近では経済学から生まれてきたカタカナの言葉が日本語の中には散見されるようになりました。
一般の会話の中に言葉が落ちてきているほどになったということは、一般教養として知っておかなければ、相手が何を言っているか分からないということにもなります。
政治、経済、金融、法律、人権問題などなどを公民という教科で一括りにして、ごった煮でぞんざいに学ばせるのではなく、切り離してしっかりとこれからの若い人たちに学んでもらう機会と時間を与える必要があるといえます。
ほぼ私のところにきた生徒さんには、その制度の問題点まで説明すると、こんなに重要な教科だったとは気づかなかったと目を丸くしてしっかりと学んでいってくれます。

その若者たち全員が納得できない許せないと言ってくれる内容を少々。
小選挙区比例代表並立制、立候補した名前で落選したにも関わらず、名簿に載っていた比例の名前で復活当選ができてしまうこと。
政治権力に携わる人達の腐敗の入口は、この制度そのものにあることも、しっかりと伝えています。


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