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中国のハイコンテクスト文化の元をなす「諷諫」とは?

日中の人間を見てて常に思うのは、我々の間には埋められそうで中々埋められない溝が存在することです。

例えば、日本は失言や過ちを犯した人でもほとぼりが冷めると舞台に戻ってきますが(水に流す)、これは中国人の感覚からするとあり得ないことで、中国の場合歴史的に見ても過ちを犯す=「死」に直結する為、自己の感情と舌を律することが重要になります。


これが、中国人におけるハイコンテクスト文化の形成に影響を与えているんですよね。文化大革命で何かとケチをつけられ「揭发」(告発)され命を失ったり、辺境地へ飛ばされたり人がいました。上海の70代の方々の中で、とにかく人の意見は絶対認めない人がいます。話が全く通じず、「境界性人格障害」(ボーダー)じゃないのか?と思うような人によく出会います。

当時彼らの多くが新疆へ「改造」目的で送られ人も多く、自分の過ちを認めたり(aありもしない)罪を立証されたりすると命がなくなったりしたわけです。話を聞くと、日本人と結婚した上海人女性が新疆で生まれ育ったという人も結構いてびっくりします。

この日中の違い(異文化)について分かってない日本人は結構多いかなと感じています。私としては、とりあえず史記の列伝を読むことから始めることをお勧めします。

春秋戦国時代に活躍した遊説家なんかは、口一つで国を降伏させたり、相手から有利な条件を引き出せるような有能な人達ですが、言動を誤るとその場で即殺される話もたくさんあったわけです。

項羽と劉邦に登場する酈食其は功を焦り煮殺されてしまいましたね。


中国語で、「諷諫(ふうかん)」(fěng jiàn)という言葉があります。下の者が上に対してもの申すというものですが、要はストレートな者の言い方ではなく、わかりやすい例を用いて暗に上の人に物を申すわけです。



よくあるやり方は古典の話から引用してそれとなく君主にそれおかしいですよ、昔の偉人がこんなこと言ってましたよ、間違ってません?と婉曲的に伝えるんですね。


*中国の役人の方と話をしていると、この古典や詩からの引用が半端なく多く、中国の大学生以上の中国語のレベルが求められます。



諫言自体の目的は、聞いた人が自らの過ちを理解し、行いを改めるところにあるのに、「私はこう思う、あなたは間違っている」という言い方をしてしまうことで、上の人を怒らせ自分の身に火の粉が降りかかり、大火傷をしたり、ひいては死に至ることがあっては、こんなに馬鹿馬鹿しいことはないということです。


これが諷諫(ふうかん)です。中国のハイコンテクスト文化の真髄というか、一番根本をなすものになるのかなと私は考えています。

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