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戦略の立て方 002 〜 検討プロセス編

3C/SWOTのフレームを使った検討手順を書きます。
 
3C分析中心の前半とSWOT分析中心の後半との二部構成です(実行方法検討は省きます)。
 
なお、本稿(002検討プロセス編)は、全体観を持つことを優先して簡潔に書きます。具体的な検討方法や、このやり方を採る理由は思い切って省きます(各論に回す予定です)。
 
検討ポイントを並べると下図の7つになります。



(1) 3C分析
 
前半の最も大事な仕事は、顧客インタビューです。
 
インタビュー対象には、自分の会社のモノを長年愛用している上得意客*1を選びます。
 
インタビューでは、その人の人格(どんな人なのか)と、これまで愛用してきたモノの使用歴(選択歴)を中心に把握しようとします。
 
自分の会社のモノを初めて買う前に使っていたモノ、自社のモノを使っている間に気になったり併用したりした他社のモノが、競争相手(Competitor)です(「2. 競争相手の特定」)。
 
自社のモノを選んだときの決め手/使い続けている決め手が「強み(Strength)」、競争相手のモノが気になったり併用したりした決め手が「弱み(Weakness)」です(「3. 顧客が選ぶ決め手の洞察」)*2。
 
そして、順序が前後しますが、「自社のモノを選ぶ決め手を最重視する人」がターゲット顧客*3です(「1. 顧客の特定」)。
 
自分の会社と競争相手双方の決め手(StrengthとWeakness)がせめぎ合っている様が「競争構造」です。各社が互いに、お客さんをはじめとする“世の中への役立ち度”を競い合う構図です。
 
自社を選ぶ決め手(Strength)が際立つ場所に立っているとき、その“場所”が「自社のポジション」です。自分の会社の役立ち方です(「4. 競争構造を見極め自社のポジションを把握」)。
 
自社の強み(strength)、弱み(Weakness)、競争構造とポジション(Position)のそれぞれを明確にしていくと、その根底にある「競争力の源泉」が見えてきます*4。それは自分の会社が世の中の役に立つ力の源、会社の存在理由でもあります*5。
 
なお、競争構造とポジションについては「戦略の立て方001〜検討フレーム編」では説明を省略しました。今後各論のなかで書く予定です。


(2) SWOT分析
 
後半の焦点は「環境変化をどう捉えて活かすか」です。
 
ここでも「決め手」を真ん中に置いて考えます。環境変化が「決め手」にどんな影響を及ぼすのか、に注目します。
 
「決め手」にあまり影響のない環境変化は無視します。影響があるかどうかわからないときは保留にします、または、もしかしたら大きな影響があるかもしれない場合*6には追加で調査します。
 
こうして絶えず無数に起こる世の中の変化を、「決め手への影響の有無」というフィルターを通して選別します(「5. 決め手に影響を与える環境変化(Opportunity/Threat)」)。
 
機会(Opportunity)と脅威(Threat)となる変化を選別したら、強み(Strength)と弱み(Weakness)との整合度合いの変化を確認(「6. SWOTの比較」)して、打ち手を導き出します(「7. 自社のポジションを高める施策を導出」)。「戦略の立て方001〜検討フレーム編」に書いた通りです。
 
決め手、機会、脅威、そこから導出される打ち手には “正解”はありません。仮説を立てて資料や追加調査で確認する、いわゆる仮説検証を何度か繰り返します。
 
以上をまとめると下図のようになります。



本稿(戦略の立て方002)は、数年に一度の戦略検討の形で書きました。でも、環境変化が及ぼす「決め手」への影響は、普段から常に注目していることが大切だとわかります。月次や四半期毎のPDCAの際に、毎回確認することを習慣にすると良いでしょう。
 
なお、本稿(戦略の立て方002)では、消費市場(B2C)での競争を念頭に置いて書きました。ビジネス市場(B2B)や、BとCの間に強力なチャネルが入るビジネスシステム(B2B2C)の場合、大きな流れは同様ですが検討内容が少し異なります。相違点は別稿で書くことにします。
 
 
注釈
 
*1: 新規顧客を獲得して顧客を増やしたいのに、既存の上得意客にインタビューするのは違うのではないかと感じるかもしれません。でも、現在の上得意客も、自社のモノを初めて買ったときは“新規顧客”でした。逆に、未顧客にインタビューすると、(目標)シェアが30%もある会社でさえも、3人にインタビューしてようやく1人のターゲット顧客と話せる、ということになってしまいます(シェア10%なら10人にひとり!)。
 
*2: ここで「決め手」と書いているものは、Marketing 2.0 ではBPC(Buyer Purchase Criteria、顧客の購買基準)などと呼ばれていました。選んだ理由のような多分に理性的な基準でした。Marketing 3.0が主流になった21世紀の現在は、これでは顧客行動をつかめません。BPCを避けて「決め手」としています。
では「決め手」とは何か。誤解を恐れずにひとことで言うならば、“価値観”が比較的近い言葉になります。「ブランドの世界観が顧客の価値観に合う」という言い方は、概ね的を射ています。もっと十分な説明をしようとすると長くなるので、今後各論のひとつとして書く予定です。
 
*3: ターゲット顧客はMarketing 2.0では自社が選んだセグメント(デモグラなどによる分類)に属する人達のことでした。現在ではそれでは現実を捉えられません。顧客を分類する時代は既に終わりました。本稿では「自社のモノを選ぶ決め手を最重視する人」(そういう“価値観”を持っている人)としています。
 
*4: 「競争力の源泉」は戦略検討を1回やれば明確になるものではありません。何度も検討を繰り返すなかで、だんだんと輪郭が浮かび上がってくるという類いのものです。逆に、簡単にわかるようでは、たいした源泉ではないことになります。
 
*5: 最近流行りの“パーパス経営”を3C/SWOTのフレームで捉えると、こういう意味合いになります。
 
*6: 追加調査してまで確かめる必要がある事項、つまり、打ち手の方向が大きく変わる可能性ある確認事項のことを「論点」と呼びます(多分に経営コンサルティング業界用語かもしれませんけれど)。

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