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「党首公選」って何?(前編)

こんばんは、本日は党内民主主義とは何かということについて、考えてまいりたいと思います。

まず、そのきっかけとなったのは、昨今話題となっている以下の問題。

嚙み砕いて言えば、日本共産党において、党首公選を唱えた党員が党から処分にあったという話です。
ネットを見ていると、これに対して様々反応があります。
日本共産党は独裁政党であるとか、スターリン主義であるとか、粛清であるとか、どちらかと言えば、否定的な論評が多く見えます。

無論、肯定的な論評もありますが、そのいずれもが、共産党内の内なる論理の枠内に収まっており、正直私としては、聞くに値しないものばかりと受け止めています。

ではそもそも「党首公選」とはなんなのかということから考えてみましょう。

党首をみんなで決める

言葉通り、党首公選とは、党首を公(おおやか)に選ぶということです。
党首とは言わずもがな、政党のリーダーです。
公に選ぶとはつまり、公明正大に、党に属する一般党員なども含む有権者によって、選挙を行うということです。

現状の日本共産党の制度は「民主集中制」とも言われており、党首公選とは対となる仕組みを取っています。
形式的に、選挙で党首を選ぶ形にはなっているものの、複数の候補者が盛んに論戦を戦わせるような他党のような状態とはなっておらず、実質的には信任投票を前提とするようなあり方となっています。

これに対して今回、共産党の党員の方が、公明正大に党首を決めるといった「党首公選」の考えを提唱し、処分を食らったというのがその顛末です。

みんなで決める方が、納得を得やすい

党首公選は党首をみんなで決めるわけですが、これの最大のメリットが、みんなの納得を得たうえで、党首を選ぶことができるということです。
複数の候補者が存在する公明正大な選挙を経ることによって、例えば自身と考え方が違う人物が党首に選ばれたとしても、同じ党のメンバーとして、それを支えるという形にシフトしやすいのが、党首公選によって党首を決める仕組みの利点です。

対して、党首公選ではない決め方で党首決めを行ってしまうと、それぞれの構成員が納得をしない形で党首が決まってしまうわけなので、そのマイナスの感情はどんどん蓄積され、不満へと変わっていくというデメリットがあります。
不満が膨らめば、それが党への攻撃であるとか、裏切りであるとかに変化して、結果としては党に著しい損失をもたらすこともあり得ます。

公明正大な選挙を経る以上、自身の考えとは異なる人物が党首になるので、自身の考えを実現するためにはマイナス点があるようにも思いますが、長い目で見れば、その選挙で勝ちさえすれば一定のお墨付きが得られるわけなので、むしろ体制は盤石となり、考えが異なる人たちを上手く抑えながら、自身の考えを形にしていくことが可能となります。

そういう意味でも、党首公選は政党を運営する中では、効果的な仕組みですし、より党内民主主義が優れた政党と言えるのです。

派閥の存在も不可欠

では、制度として党首公選を取っていれば、その政党は民主的なのかと言えば、必ずしもそうではありません。
どれだけ優れた党内民主主義の制度があっても、党内に一つのグループしかなく、複数の候補者による選挙が成立しないのであれば、その制度は機能しているとは言えません。

そもそも党首公選の原点にあるのは、一つの政党に複数の派閥の存在がある中で、如何に党を安定的に統治していくのかという知恵だと思います。

誰しも、志を持って政治家を目指すわけですが、近い理念を持つ者同士で集い、やがてはそれが政党という形に形成されます。
しかし、細部を見れば、全く同じ考えというわけもなく、やがては同じ党内で異なる考えのグループが現れるのが自然な現象です。

その中で、違う考えばかりを強調していても、同じ政党で上手くやっていくのは難しいので、党首公選という広く納得できる形で党首を決めることによって、グループ間の調和、ひいては党の安定化を図るわけです。
そもそも党首公選とは、複数の派閥から生まれる考え方であり、複数の派閥の存在を前提とするような仕組みなのです。

そのためには、同じ党内の違う考えの人物を追い出したりせず、あくまでも同じ党内の中で互いに違う考えが存在することを許容できるような考え方が、政党を構成する全ての人に求められます。

派閥の存在が一つの指標になる

複数の派閥が存在していること自体が、その党が違う考えの人を追い出さないような、党内民主主義の熟練度が高い政党であることを示します。

派閥が少なければ少ないほどに、その政党の構成員が異なる考え方への免疫が弱いことになりますし、逆に派閥が多ければ多いほどに、その政党の構成員が、異なる考えへの免疫が強いことになります。

制度というのはあくまでも表面的な要素で、その実態は、異なる派閥の存在を許容できるのかという、構成員の度量と寛容さに懸かっている部分があるのです。

党内民主主義の両輪

まとめますと、優れた党内民主主義の政党とは、当然ながら、党首公選の制度が整備されていることが大前提となります。
そしてもう一つの前提として、派閥の多さという部分も一つの指標となるでしょう。
優れた党首公選の制度と、派閥の存在という両輪があってこそ、その政党は党内民主主義が優れていると言えるのです。

続きます

では、この記事(前編)ではここまでとします。
後編では、前編の記事の内容を踏まえて、現在、日本の主たる政党の党内民主主義はどういう存在にあるのかについて迫ってまいります。

以下、後編です。

以上、ありがとうございました。

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