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発言を理由としない除名処分

こんにちは!
今回は、日本維新の会の鈴木宗男議員の除名に関する見解を書いていきたいと思います。

除名の理由

最近、巷を騒がせている鈴木宗男議員。
宗男節という独特の語り口がなんとも味のある彼ですが、彼が日本維新の会を除名される様相です。

その除名処分の発端となったのは、鈴木宗男議員が「ロシアの勝利を確信」と失言したことにあります。

現在、ウクライナとロシアは戦争中であり、我が国日本はウクライナへの支援をするいわゆる西側の立場となります。
ロシアとはいわば敵国であり、この発言は鈴木議員が東側の認識を持っていることを明確にしたということにも繋がります。

形式的な除名理由

しかし、鈴木宗男議員はどうやら、発言の内容を理由として処分されたわけではないようです。
入手経路は不明ですが、立憲の有田芳生氏が、維新の鈴木議員への除名通知をツイートしていました。
この内容を踏まえると、鈴木議員は無許可の海外渡航についての手続きの瑕疵を問われて、除名という処分が下されたということにもなります。

おかしいですよね。
鈴木議員が問題となったのは、「ロシアの勝利を確信」という失言だったはず。
この発言内容が問われての処分ではない以上は、維新の会としては、「ロシアの勝利を確信」という発言自体を否定できなかったということにもなります。

発言内容を理由とした除名は難しい

この背景には、発言内容自体を理由とした除名というものは、民主主義的には難しいということがあります。
主張を理由とした除名処分とは、極端な話、ソ連のスターリンと大差がありません。

いわゆる東側の見解を述べるだけでも、粛清がなされるに足るのだという悪しき前例を作ることにもなります。
また、なにもロシアウクライナ問題に限らず、維新執行部として認めていない思想を、党内において言論統制することが事実上可能になるのです。

ロシア寄りのイメージを払拭したい維新の会が、かつてのソ連と同じような粛清を行うということ自体が、その立場の整合性を危うくしますし、民主主義国家の政党としての資質を問われるということにもなります。

なので維新は、発言を理由とした処分に踏み切れなかったのではないかと思います。

政権担当能力を失い、自壊する維新

維新は鈴木議員を除名することによって、維新の親露派のイメージを払拭したかったのではないかと思います。
しかし、除名処分の理由はあくまでも無許可の海外渡航である以上は、完全にこのイメージを払拭することはできません。

親露派のイメージを完全に払拭するには中途半端な対応だったと言わざるを得ません。
そもそも、発言内容を理由とした除名処分という選択肢が現実的では無かった以上は、ロシアが完全にロシア寄りのイメージを払拭するのは不可能だったのではないかと思います。

元を辿れば、ロシア寄りのイメージを背負う気も無いのに、かつて鈴木議員を維新に入党させたのが誤りなのではないかという話にもなると考えます。
これは当時の維新幹部、現在は民間人の松井一郎氏などにも責任が生じます。

唯一の大臣経験者の喪失

また維新は、親露イメージを完全に払拭できなかっただけではなく、鈴木議員という唯一の大臣経験者を失ったということにもなります。
以前、立憲の枝野氏が維新に対して素人ばかりという論評を下しましたが、まさに語るに落ちたなという感じです。名実ともに、日本維新の会が素人ばかりの政党と化したことは言うに及びません。

維新は政権担当能力を構成する要素の一つである、唯一無二の閣僚経験者を失いました。

唯一の「諫言」できる存在を喪失

一方で「私の発言が問題というのはもってのほかで、議員の認識をもって党が処分することが果たしていいことなのか。馬場代表は共産党について『無くなったらいい政党だ』と発言したが、処分されていない。自分に優しく人に厳しいというのはなじまない」と指摘しました。

維新 鈴木宗男参院議員“発言内容で処分の場合は裁判も検討” | NHK | 国会

また鈴木議員は、党幹部に対しても忌憚なくものを言える人物です。
政党において、このように公然と代表批判を行える人物はとても貴重です。
こういう人物こそがその政党の自浄性を機能させるには欠かせないのです。

仮に鈴木議員を除名にしたとして、鈴木議員のように馬場代表にも楯付ける人物がいかほど維新の中に存在するでしょうか。
代表のご機嫌を伺うばかりの太鼓持ちばかりが、維新の中に残っているというのが、そのシビアな現状なのではないでしょうか?

維新は政権担当能力を構成する要素の一つである、唯一無二の自浄性を失いました。

唯一の外交パイプを喪失

先述の通り、維新はロシア寄りのイメージを完全に払拭できたわけではありません。
しかし維新は、ロシアに対する唯一の外交パイプを失いました。
ロシア寄りのイメージが残っているのに、ロシアへのパイプは無いという謎の政党が生まれたのです。

現状、ロシアに対するパイプは必ずしも有効に働かないとは考えますが、政権交代を目指す維新としては、ゆくゆくの政権運営を考えた時に、ロシアへのパイプは持っておく必要があったのではないでしょうか?
ロシア寄りのイメージを完全に払拭できていないならば、それは尚更です。

維新は政権担当能力を構成する要素の一つである、唯一無二の外交パイプを失いました。

除名処分は妥当だったのか?

なんとなくの空気感で除名こそが妥当だという雰囲気があると感じますが、そもそもこれだけの自己矛盾を維新に生じさせる除名処分が、果たして妥当と言えるのでしょうか?

発言内容を理由に除名しても民主主義の政党としての資質が問われるし、無許可の海外渡航を理由にして除名しても、ロシア寄りのイメージを完全に払拭できないどころか、政権担当能力を構成するあらゆる要素を失うことになります。

除名以外の選択肢

例えば党員資格停止 数十日~数か月という処分であれば、政権担当能力を構成する要素を失わずに処分を下すということが可能だったのではないかと思います。
もちろん、そんな選択をすれば維新は世論の非難に晒されていることは目に見えていますが、私はその維新の選択は立派だと思うし、全面的に擁護したいと考えていました。

先述の通り、そもそもロシア寄りのイメージを完全に払拭するということ自体が現実的では無かった以上、目先のイメージに拘るのではなく、より実態的な政権担当能力を重視した決定を行うことが望ましかったのではないでしょうか?

イメージだけで政権を運営することはできません。そう、かつての悪夢の民主党のように。


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