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アメリカでも通用した日本のコミュニケーションの基本とは?

今から18年も前の2003年に念願の夢がかない、僕はアメリカに赴任することになりました。もともと内向的で日本語でのコミュニケーションでさえ自信のない僕は、少々臆病になりました。日本人よりずっと外向的に見えるアメリカ人の中で、僕はやっていけるのだろうか?

この時僕は、すでに37歳。これまでの教育も社会人経験も日本で得たものだけでした。英会話は少々習ったけど、実際にアメリカでアメリカ人と仕事をしていくとなると、アメリカの文化に基づいたコミュニケーションが大切になってくるだろう。小手先のテクニックでどうにかできるものではない。とりあえず、開き直って、「分かりやすく、正直に、礼儀正しく」(Clear, Honest, and Polite)をコミュニケーションのモットーとしていこう!と決めました。

そしてアメリカ赴任経験者の先輩方からはあまり勧められなかったあることをあえて積極的にコミュニケーションに取り入れました。それは、進んで「謝る」ことです。

アメリカに来る前、いろいろなところで「アメリカは訴訟社会だ。たとえ自分に非があってもむやみに謝ってはいけない。謝れば、自分が悪くて、相手が正しいと認めてしまうことになる」というアドバイスを受けました。たしかに自分が悪くもないのにペコペコ謝ってばかりいるようなことをしていては、いかにも自信のない人間のように見えて信頼も得られないとは思います。しかし、何か自分が間違ったことをしたり、人に迷惑をかけた場合にも、あえて謝らないというのは、しっくりいきませんでした。

僕は、日本の文化が大切にする「潔さ」が好きです。たとえ相手が悪いと感じても、ある部分で自分にも非があれば、相手よりも先にそれについて謝ることは、アメリカでも続けたいと思いました。何か問題が生じた時に、相手だけが100%悪くて、自分にはいっさい非がない、などということはほとんどないと思います。相手が約束を守らなかったり、迷惑をかけてきた時など、一方的に相手が悪く見える時でさえ、こちらのコミュニケーションも十分でなかったり、知らないうちに冷たい態度をとっていた、などこちらにも何かしらの非があるものです。相手を責める前に、自分の非も認め、それを先に謝ることは、日本の「潔さ」を大切にする文化のとても素晴らしいところだと思います。それなので、アメリカで働くようになってからもあえて意識して積極的に、自分の方から、気づいた自分の非について謝るように心がけてきました。僕が、たまたま大変素晴らしい仲間に恵まれたラッキーな人間なのかもしれませんが、これを続けた結果、一緒に働く仲間からは大きな信頼を得ることにつながったのです。

自分が潔く謝ると、相手のコミュニケーションも変わることを経験しました。ある会社に実験を依頼し、実験終了日からあと2日で2週間が経つという時になっても、いっこうに実験結果の連絡が入らないので、少々しびれを切らして、実験結果を早く送ってほしい旨の催促メールをを送りました。すると相手から実験結果報告は、実験終了から2週間後に送ることになっており、あと2日あるとの返信が届きました。僕は、契約に関与していなかったので、それを知らずに約束の2日前に失礼にも催促メールを送ってしまったと思い、すぐに謝罪のメールを送りました。「2週間後に送ることになっているとは知らず、2日前に催促してしまい、申し訳ございませんでした」のような内容です。すると、相手からは「2週間後に報告書を送るというのは、契約で交わしたものではなく、当社の新しい方針で、それをきちんと伝えていませんでした。こちらこそ申し訳ございませんでした」のような謝罪のメールが相手から届いたのです。しかも、その後、今後の実験については、実験終了後すぐにオンライン上で実験結果がみられるセキュリティシステムを提供するとまで改善してくれました。

これまでにも同じようにこちらが進んで自分の非を認めて謝ると、相手も気持ちよく腹を割ってコミュニケーションしてくれるようになることを何度も経験しました。なので、僕の中では、日本の「潔さ」を大切にするコミュニケーション文化は世界に通じる素晴らしいものだと思ってます。これまからも大切にしていきたいです。




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