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大企業から中小企業への転職の洗礼 アメリカ転職1か月目

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。10年間働いたカリフォルニアにあるビッグファーマから、ちょうど1か月前に、東海岸ボストン近郊にある小さなスタートアップのバイオテックカンパニーへ転職しました。転職してもしばらくはカリフォルニアからリモートで働いています。3時間の時差がちょっとしんどい毎日です。東海岸の同僚が仕事を始める朝9時は、カリフォルニアではまだ6時です。

僕の愛読書であり、転職のたびに参考にしてきた"First 90 Days"(日本語版:90日で成果を出すリーダー)に従って、転職後のトランジションをスムーズに完了させるべく、新たな会社で奮闘しております。

転職後90日間で「お荷物」から「利益を出す人」に
最初の1か月を終えて、2か月目に突入する前に、自分がどこまでたどり着けたか振り返ってみました。この本で述べられていることは、
「新しい会社に入りたての人間は、会社に何も貢献できていないどころか、他の社員の時間を消費して、いろいろなことを学ばなければならないという『お荷物』からスタートする。効率的に重要な情報を学び、この『お荷物』の状態から脱却し、『利益を出す人』にならなければならない。このトランジションを90日間で完了させよう」というものです。

ラーニングアジェンダを作り、90日間のトランジションを成功させる
もうひとつ重要なこととして、「過去の自分の成功経験を引きずり過ぎない。独りよがりの解釈で仕事を進めてしまうのではなく、新たな会社特有の人、会社文化、政治、人事構成、意思決定プロセス、会議スタイルなどソフト面もしっかり情報収集しなければならない。そして、それらのソフト面の情報を踏まえて、自分のラーニングアジェンダ(どのような情報を学び、重視すべきか、それに基づいて自分はどのように会社に貢献できるか?パフォーマンスを発揮できるか?)を作り、適宜修正していき、90日間トランジション計画を成功させる」ということも書かれてます。

大企業から中小企業への転職の洗礼
僕の今回の転職は、自分の所属部署に100名以上の社員がいた大企業から、僕のもとでたった一人の若手社員がサポートしてくれるだけのスタートアップカンパニーへというものです。"The First 90 Days"計画を遂行しようにも、大企業と中小企業とでは、タイムラインの組み方が全く異なることを理解しなければならないと痛感しました。
大企業では、長いラーニング期間が取れ、しばらくは重要なアウトプットは求められません。大企業に転職した際には、転職後しばらくは、さまざまなオリエンテーションやトレーニングを受けます。プロジェクトについても資料をゆっくり読んで勉強する時間があります。インプット(ラーニング)だけに専念できる時間をたっぷりとることができます。その間、重要なアウトプット(会社への貢献)は求められません。一方、中小企業では、インプット(ラーニング)だけに専念できる時間などはありません。入社後すぐに、インプットをしながら、同時に重要なアウトプットも求められます。より具体的に言うと、転職後すぐに、まだプロジェクトの情報を十分消化し、把握しないまま、プロジェクト会議などに召集され、部門の代表として、重要なアウトプットを求められたりするという状況です。
今回の僕の転職では、プロジェクトの情報を学習し、自分のラーニングアジェンダを作りながら、まだ完成していない未完成のラーニングアジェンダの情報をもとに、同時にプロジェクトを進めて、さらにプロジェクトの進行とともに自分のラーニングアジェンダを修正・改善・発展・完成させていくという、インプット・アウトプット同時進行させていくことが必要でした。
覚悟はしていましたが、以前の大企業から大企業への転職時とは、タイムラインの取り方を全く変えなければならないことに気づきました。でも、このダイナミックさが、大企業では味わえない、僕が転職先に求めていたものでした。大企業の時は、しばらくはインプットに専念ができますが、その間、何もアウトプットしないので、「自分はこんなことで給料をもらっていいのだろうか?」と無力感にさいなまれました。学ぶだけで、なにも会社に貢献しない状態は、それはそれで不安でつらいものです。すなわち、「お荷物」状態がずっと続き、「利益を出す人」の実感がずっと得られないのです。その点、今回の転職では、インプットと同時に多大なアウトプットも求められるので、ストレスフルですが、同時に即戦力として会社にも貢献し始めていると実感できます。また、同時にアウトプットするということはインプットの効率を劇的に上げることにもなります。優先順位をしっかり考えて、重要なものからインプットしていかないと、とてもアウトプットが追いつきませんので、おのずと優先順位をつける目が磨かれます。また、同時にアウトプットをしていかなければならないため、自分に課せられるインプットの真剣度も爆上がりし、重要な情報がしっかり記憶に定着できます。

大企業と中小企業とでは、取引先の対応も大きく異なることも痛感しました。たまたま、以前にいた大きな製薬会社も、転職した小さな会社も、同じ取引先に委託して新薬候補の非臨床試験を行っています。しかし、その取引先の対応が、大きく異なることも痛感しました。以前の大きな製薬会社にいた時は、この取引先は、自らとても厳しいタイムラインを設定して、試験の最終報告書を提出する時期まで設定してコミットしてくれていました。取引先からしたら、たくさんの試験を依頼してくれる大口の顧客なので、顧客の中でも最重要の顧客として扱ってくれていたのでしょう。転職後、同じような委託試験の試験計画書を見ると、最終報告書提出予定日の項目には、日付の代わりに「後日決定」"TBD: to be determined"とだけ書かれているのに気づきました。同じような内容の仕事を委託しても、小口の中小企業に対しては、大変雑な対応しかしてくれないのだと痛感させられました。ただし、これも今後の進め方次第で、いくらでも改善できるかもしれません。自分の働き方次第で、自分のチームのパフォーマンス次第で、ダイナミックに状況を変えられるかもしれない中小企業の醍醐味を味わっていきたいです。

あと1か月後、2か月後に自分がどういう状態にいられるかを客観的に観察しながら、"The First 90 Days"計画を進めていきます。




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