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トップアスリートへのインタビューのコツ。

今まで何十人、何百回とトップアスリートにインタビューをした。

忘れもしない、25年前の最初のインタビューは名古屋グランパスの飯島寿久さんでした。その時の光景と、インタビューが下手すぎて先輩に猛烈に怒られたことは今も忘れられない思い出だ。

最初はグランパス担当だったので、ベンゲル監督にもストイコビッチさんにもインタビューした。その後ドラゴンズ、女子ゴルフ、フィギュアスケートと担当した競技の数だけ、インタビューの経験も増えていく。

だんだんインタビューが上手くなっていく手応えを感じた。
いいインタビューができた時はものすごく嬉しかった。

いいインタビューとは何だろう?


大きな傾向として、最初はただ質問するだけ。これがディレクターの初期。
次の段階では、こんなことを言ってくれたら自分の企画が面白くなるな〜、という「言わせたい言葉」に導くような質問になる。
この「言わせるインタビュー」で多くのスポーツディレクターが壁にぶち当たる。この壁を乗り越えた者だけが一人前のスポーツディレクターになれる。

この勝利を誰に伝えたいですか?
目標のメダルの色は何色ですか?

トップアスリートに、これは通用しない。
トップは「言わされる」ことを拒む。

あ、言わせようとしているな・・・。
そう感じてしまったら、へそを曲げるのがトップアスリートだ。

あるディレクターが、悔しさをバネに立ち上がるアスリートの企画をつくろうと決めつけて、「この悔しさを何にぶつけますか?」などと気安く聞いてはいけない。
言わされると察知したトップアスリートは、「特に悔しいわけではないです」と答えるだろう。

それは、インタビューが下手なのではない。企画の制作能力が低いのだ。
「悔しい」と答えたときでも、「悔しくない」と答えたときでも、どんな答えでも良質な企画が作れるのなら、言わせるインタビューをしなくて済む。

どんな答えでもいい企画が作れるディレクターに成長したとして、ではどんなインタビューをするのが良いのだろうか?

それは、トップアスリートが言いたいと思っていることを言わせること。
質問はなんでもいい。こちらが黙って頷いているだけで、勝手に話してくれるならそれが正解。

試合中のあるプレーについて、その一点についてのみ、ものすごく喋りたいだろうなと察知したら、「あのプレーは・・・?」とだけ言えばいい。あとは勝手に話してくれる。逆にそれ以外の質問は何を聞いても響かない。

「あのプレー」に気づけるかどうかが問題なのだ。そのためには、トップアスリートのことを、特に練習をよく見なければならない。さらにその競技のことを、対戦相手のことを、ここまでの成績のことを深く勉強する必要がある。

トップアスリートが自ら発した言葉は宝物だ。宝物があればその後の編集はどうにでもなる。そんなふうに考えて日々勉強を続けていくと、トップアスリートにもいいインタビューが出来るんだと思っている。






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