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40年間休まなかったマンガ家

こちら葛飾区亀有公園前派出所。通称「こち亀」。
1976年から2016年まで40年間、一度の休載もなく「週刊少年ジャンプ」に連載された、私も長年愛読していた有名な漫画です。

40年間、一度も休まずに毎週連載を続ける。

言うは易く行うは難し。本当に偉大な仕事だと思います。
私は毎週、約1000字程度のnoteを更新するだけで「今週は無理かも」と思うことがあります。今回で84週連続投稿が続いてはいますが、まだ約1年半。
あれだけの面白い連載を休まずに40年間も続けるなんて、信じられない。

作者の秋本治さんは、40年間連載を休まず続けた秘訣を、「秋本治の仕事術」という本で紹介されています。

この本で紹介されている仕事術の中で、「秋本さんは考え方が面白いなぁ」と感じた箇所がいくつかありました。
特に、秋本さんの時間術(タイムマネジメント)は非常に優れていると思います。

仕事ができる人をやっかむのは時間の無駄。

漫画家の世界は、私たちサラリーマン以上に才能にあふれたヒットメーカーが次から次へ出てきます。漫画家にとって、他の漫画家は一般的に言えばライバルなのですが、秋本さんはヒット作を出す漫画家の人に対して抱く気持ちは「売れてよかった!」ということだけだそうです。
仕事ができる人を見ると、羨ましい、自分にないものをもっている、というやっかみに近い感情を抱きがちですが、秋本さんは次のように考えるのが良いとおっしゃっています。

「あいつすごいな」と思ったら、「あいつのように自分もがんばろう」とプラス思考で考えるのがベストだと思います。
<中略>
みんなでがんばろうと思っていた方が、ライバルを蹴落としてのし上がってやろうという考えよりもよっぽど建設的だし、気持ちよく仕事ができるのではないかと思います。

秋本治の仕事術

「自分が気持ちよく仕事をするにはどうすれば良いか」を大事にする。
余計なことを考えるのは時間の無駄。ついつい気になるライバルや同期の動向ですが、よく考えたら、自分がどうにかできるのは自分の感情と自分の仕事だけなわけですから、秋本さんの考え方は、とても理にかなっていると思います。

自分の中で具体的に考えて結論まで導き、形にしたうえで人に相談を持ちかける

仕事で相談を受けた際に、部下や他部署の人から「この後、どうすればよいのでしょうか」と相談されることがあります。
相談してくれるのは良いのですが、何をどう考えて、相談に来ているのかが全く分からず、アドバイスのしようがありません。もう少し、自分で具体的に考えてから相談してもらえると、「そうしたいと考えるなら、こうするのはどうでしょう」と言えるのですが、意外に漠然とした相談を持ちかける人が少なくありません。

この「相談」の仕方について、秋本さんは、「自分の中で具体的に考えてから相談を持ちかける」ようにされているそうです。

連載マンガの内容は担当編集者と相談しながら決めていくものです。でも僕は「この次はどうしましょうかね?」などと、相手に丸投げするようなやり方ではなく、「次は寿司屋を舞台にこんな話をやりたいけど、どうですかね?」と、自分の中で具体的に決めたことを提案して相談するようにします。

秋本治の仕事術

間違っていようが、反対される確率が高かろうが、まずは自分の考えを具体的に示すことから始まります。うまくいけば「良いアイデアだから、進めてみたらどうか」という話になる可能性もあります。自分で一旦、スタートからゴールまで道筋を書いてみて、意見を求めることが、相談する方としても相談される方としても、最も中身のある議論ができると思います。

正確性は置いておき、とりあえず叩き台をつくることが肝要

仕事では、何か新しい取り組みや企画、既存の仕事の変更などについて、自分なりの「案」を作成して相談するということがスタートになります。
どんなに小さなことでも、何かを変えるときには自分なりの「案」を説明し、賛同が得られたら進める、反対が大きければ止めておく、という流れになります。
その自分なりの「案」を説明し、周囲の人の理解を求めるためのツールとして、「叩き台」(だいたいA4用紙1枚にまとめることが多い)をつくることが多いです。

マンガの現場では、「ネーム」という下書き、叩き台を作って、担当編集者の方と打合せを行い、修正を加えていくという流れになるそうです。
秋本さんは、この「叩き台」について、次のようにおっしゃっています。

几帳面な性格の人は、作業のひとつひとつに全力を注ぎこみ、各段階で正確無比なものをつくろうとしてしまうかもしれません。それを神業のようなスピードでできる人なら構わないですが、僕のような平凡な人間がスピードを求める場合、正確性はとりあえず置いておいて、先に進めることこそが重要だと思っています。

秋本治の仕事術

仕事には、かならず期限があります。期限までに仕上がらなければ、どれだけ頑張っても「ムダな作業」になってしまいます。
「チェックして直すのは、後からだってできるのですから」と秋本さんがおっしゃる通り、ひとまずは形にして、考え方や方向性にずれが無いかを確認する方が大切だと思います。

私の場合、依頼された仕事については、大まかな考え方が合っているかどうかを早々に叩き台を作成して依頼者に相談し、軌道修正をしながら仕上げていくというやり方で進めることを心がけています。
私は細かい点が気になりだすと、精度を高めたくなってしまう性分です。そのため、時間をかけて「自分の中での最高精度」をめざすと、時間がいくらあっても足らず、期限に間に合わないという最悪の事態を招きます。若いころ、実際に期限に遅れてしまい、「なぜ叩き台の段階で相談しないんだ!」とめちゃくちゃ叱られたこともありました。
それ以降、とにかく「期限内での最高の精度」をめざすようにしていますし、後輩や部下にも「早めに相談するとストレスが少ないよ」とオススメしています。

まとめ

秋本治の仕事術」には、タイムマネジメントとコミュニケーションについて、ビジネスの現場でも応用できる仕事術が上記の他にもたくさん紹介されている本です。

40年間、休まず仕事をし続けるために、特別なことをせず、地道に工夫して大きなことを成し遂げた秋本さんの、次の言葉をまとめに代えてご紹介します。

「ピンチを乗り切ると、自分にとって必ずプラスになります」
使い古された言葉ですが、”ピンチはチャンス”というのは間違いなく事実だと思います。

秋本治の仕事術

偉業を成し遂げた秋本さんにもピンチがあり、工夫して乗り越えることで、大きな自信につながったというエピソードが紹介されています。

私も今年は、ピンチの連続でした。自分の無知と無力さを感じつつ、周りの人の力を借りて、どうにか山場は越えたかな、といったところです。
今までにない、新たなチャレンジも多く、苦しみも多かったのですが、その分、得られた知識や人間関係もありました。

ピンチのときには、「苦しさ」に意識が行きます。
実際、苦しくて逃げたくなります。
「逃げる」べき状況もあり得ます。
一方、「立ち向かう」べき場合もあります。

私はこれまで、「立ち向かう」判断をしたときは、自分にできうるだけの工夫をして、不格好だろうと、何とかしてもがきながら乗り越えてきました。もちろん、上手くいくことばかりではなく、いざこざが起こったり、新たなトラブルに見舞われることもあります。本当に不格好で、思い出すのも辛い思い出もありますが、やり切った後に振り返ると、想像以上に、自分に得られるもの多かったように思います。
「ピンチはチャンス」という言葉は、後から振り返ると言える言葉であり、その経験を知っている人は、次なるピンチへの立ち向かい方や心構えが、少し成長しているように思います。

秋本さんの「ピンチを乗り切ると、自分にとって必ずプラスになります」という言葉に、自分の苦しみの乗り越え方が間違いではなかったんだな、と励ましをいただいた気分になったのでした。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。


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