カツセマサヒコ

ライター/編集者。広告記事、取材記事、コラム、エッセイ、Web小説などを書いています

お前が“付加価値だ”と思ってるものなんて。

「で、一年目終えて、どうだった?」
「いやー、なんつーか、あっという間でした」
「そうだよなあ。入社前のイメージと、違った?」
「そうっすね。いやー、なんか、思ったより、地味じゃないスか?」
「あははは、まあ1~2年目だもんねえ」
「いや、でも、シューカツのときは、『即戦力を求めてます!』とか、『若いうちから活躍できる職場です!』って、言われてたんすよ」
「まあ、そう言うだろうね?」
「それがフタ

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拘束する言葉、高く飛ばす言葉

書け、と言われている原稿がいくつもあるし、出せ、と言われている企画がその倍近くある。でも、筆は進まず、脳は動かず、雑念ばかりがせっせと働いており、よくないことだけど、「よくあることだから」と諦めて、雑念と付き合っているのが今である。

雑念は雑念止まりで、そこから進展することなく萎んでいくのが平常運転だけれど、今日は珍しく雑念の方がむくむくと展開と推敲を繰り返して、これは金もらって出せる記事じゃあ

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華麗なるランウェイとその舞台裏の狭間で【 ha | za | ma ファッションショーレポート】

2018年6月8日。アパレルブランド 「 ha | za | ma (ハザマ)」の初となるファッションショー「 ha | za | ma 2018 A/W TOKYO COLLECTION
"NOT BAD NIGHTMARE(悪くない悪夢)"」が開催された。

その反響は既にSNSを通してご存知かもしれない。入場無料とはいえ、恵比寿ガーデンホール420席を2公演とも満席にし、それぞれ立ち見客を1

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パラレル親方と教育と雑草魂

個人で働くには、いつか限界が来る。

そう思ったのは、独立してわずか2カ月目のことだった。
仕事が超繁忙を迎え、睡眠時間が削れ、突然の嘔吐。2時間寝込んで、またすぐ原稿を書き始めて、そこで気付いた。

「ああ、これ、一生はムリ。てか、10年もムリ」

顔出しをして、多少身体を張ったロケをこなし、自身のSNSで拡散・流通し、新規案件の窓口になり、経理をやり、請求書の宛名書きをし、皿を洗い、洗濯物を干

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喫茶店でコーヒーを

「波長が合いすぎたんですよ。ただ、それだけのことです」

彼は、飲み終えたアイスコーヒーの氷をストローで突きながら、退屈そうに言った。

「でも、その波長が一番厄介なんです。他の人で、埋められるものじゃないから」

失恋話である。男が語る失恋話というのは、やたらとロマンチックな言葉で装飾する傾向があると、私は思う。この会社の後輩にしてみても、なぜかどこか成功体験を語るような口調で、終わった恋につい

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そのとき僕らは子どもだった

「どんな家がいいか」

そんな話をしていた気がする。

彼女は僕の手を握りながら、雨上がりの街を楽しそうに歩いていた。

「ああいうレンガづくりの家に憧れるんだよ。ニューヨークって、あんな感じでしょ」

僕が電柱2つほど先の家を指さすと、彼女はクスリと笑いながら声に出す。

「出た、ニューヨーク」

憧れは、鼻で笑われた。

「天井は高ければ高いほうがいい」だとか、「寝室は別がいい」だとか、妄想は

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