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【寄席エッセイ】鼻の中のポリープをスキャンするんだ

前回はこちら→鼻ポリ


待望の続編!いや、全然時間経ってねえよ?

2は駄作であるというレッテルを覆すことはできるのか!それとも黒歴史にその名を刻むのか。そもそも鼻の中にある「ソレ」はなんなのか?宇宙人なのか?地底人なのか?いやポリープだけど。はっ!?もう謎解けてんじゃん!良かったじゃん!めでたしじゃん!コナン君に眠らせてもらった後に脚力増強シューズでズドーンでバゴオォーンでビルがドカーンでフィニッシュよ。

そんな大団円のエンディングの後に忍び寄るドス暗い影…ドス暗い水の底に…ってタイトルだと一気にB級感でるわね。私たちが見たのは「ソレ」のほんの一部に過ぎなかった…本格アクションコメディエンターテイメント唐揚げショー。鼻ポリ2!!!ついに公開!!!!!




はい。




そんなわけで、紹介書を胸に総合病院へ。行ったことない病院は勝手がわからん。




病院は苦手だ。特に総合病院。命と命の価値をひたすらに考えさせられる。しゅわっしゅわのおじいちゃんおばあちゃん。体が痛くて仕方がないだろう。体から管を出す人、目も開いてないで運ばれて行く人。命とは、それでも生きようとするこの命は。どうなっていくのだろう。私がこの状況になって、それでも生きたいと。生きていたいんだと。どうなんだろう。胸を張って答えられるぐらいの気持ちをもって在り続けられるだろうか。四肢が爆散しそうだ。うーん。




鼻茸をCTしにきただけなのに、すでに精神が参っている。ハードトゥキルな気持ちに火がついてしまった、仕方がないので自販でも探すか…散歩しよう。




でもよ、あるけどもあるけども体調悪そうな人しかいない。そりゃそうだ総合病院だもん。元気なやつは用事ねえのよ。烈火の如く怒るおじいちゃんだっている。でもそうやって声を出せてるうちは元気な証拠なんだよな。内容に関係していない私はただただ愛おしい。本当に生きるって難しい。





フレッシュなコーラを飲んでも気持ちがフレッシュしない。いっそルートビアあたりを自販機に置いてみたらどうだ。アタシ苦手だから買わないけどさ。





頭が下を向きすぎてでんぐり返しみたいになった私の名前が呼ばれる。CTを撮りに案内される。





「今日はどうされましたか?」



アイスブレイクしてくれる看護婦さん。優しい。素敵



「鼻にポリープできたらしいんすわ」



「えぇ!?」




あれ?優しくなかった?



彼女は絶句していた。それもそのはず見た目は何にも問題なさそうな私が鼻にキノコ仕込んでるなんて思わないだろう。でもそんなに驚かないでよくなぁい?怖いんだけどぉ?




そのあとは私のつまらない冗談を二、三発笑ってくれていたが心配が募る。大丈夫かな。やっぱり鼻にポリープって珍しいのかな。悪いのだったら嫌だな。でも今日CT撮るだけだしなぁ。結果言われないしな…




そんななか、CTマシーンへ。ここに寝っ転がって写真を撮るだけ。簡単だろ?簡単だよ。




担当の人に言われるままに寝っ転がる。そして手と頭を固定されながら諸々解説を受ける。




「頭を絶対に動かさないでくださいねぇー」



お綺麗な担当の女性はそう言う。私にはわかる。このトーンの説明はマジのやつだ。当たり前のことを当たり前にできないシーンがあり過ぎて絶望しつつも言わなきゃいけないことを奥歯を噛み締めて言うスタイル。それを言わなかったことで過去に「でも事前に言われてなかったから」なんて真顔で言われた事があるんだろう。次元の歪みが加速する。悲しい過去だ。猫を電子レンジに入れるなとは書いてなかった。だから悪いのはそっち。一見破綻しているロジックではあるが、事実書いてない。書いてないがそれを言うかねしかし。というのはなぜか通用しない。声の大きいモノに偏る世の中ってなんなんだろうねぇほんと。



多分指示を無視したらこのCTマシーンのようなモノが発する電磁波のようなやつで私はどこかに転送されてしまうだろう。宇宙か、地底か、豪邸のプールか。ドニーダーゴな気持ちで目を閉じる。私は約束を違わぬ男。1ミリもッ!動かないッ!気持ちは烈海王だった。声に出したら怒られるのでやめとこう。






あ。脇腹攣った。




バカなことを考えているとバカなことが起こるもんである。どうしようめちゃくちゃ痛い。いてててて。叫び出したい。体を捩りたい。烈海王みたいに大声出して泣きたい。




普段脇腹攣ることなんてないのに。なんで今。なんで今なんだ。数年ぶりの再会。なんで今なんだ。これは神が与えたもうた試練………



いやだからなんで今なんだよ、神。もっと仕事中に俺が成長しそうなタイミングで試練をおくれよ。これを乗り切ってもあのお姉さんに言われたこと守るだけだろ。別に褒めてもらえるわけでも………



はっ!?


これはつまり「試練はいつどこで現れるかわからない」そして「己の成長に拘りすぎるな」って意味ではないか?なんてこった。神。やはり貴方が神。傲慢な私の鼻をへし折りに。どこまでも見据えるその目。私を暖かく見守って……





いや!だからなんで今なんだよ。ぜってぇちげえって!今じゃないって!お姉さんもう機械動かしてるし、あぁ!痛い!すっごい叫びたい!脇腹がつるのってどうやって治るの!?どんな姿勢とったらいいの?でも手は塞がってるし!神ィ!八百万の神よ!筋肉の痙攣を鎮めたまぇぇぇエエエ!!!




一向に鎮まる気配はないが胆力で体を動かさないように保つ。徐々に痛みが…痛みが…痛い。冷や汗で私の影ができてしまう。現代アートまっしぐら。痛いけどここはそう…宇宙。スペース。NASA。スペースシャトル…スペースマウンテン………いってぇ!!!あーもう!痛え!




バカなことを考えてると痛みは少しずつ収束していく。耐えた。耐え切った。アタシはやったわよ。この苦難な状況。もし1ミリでも動いたらアウトだった。体を起こして目を開けたらお姉さんが花山薫なポーズでアタシに拳骨お見舞いしてだろう。大丈夫。もう安心だ。花山薫は……






あ。足攣りそう。




余計なことを考え過ぎたせいで何もしていないのに腿の前が反応した。神速のインパルス。何やってんだよ俺の細胞どもと脳みそは。あと神。試練のタイミングがr




でも攣ってはいない。攣ったら私は烈海王。そして起きたら花山薫。刃牙to刃牙。ここで攣らせるわけにはいかない。全力で回避せねば…




…でも俺元々動いてないし。なんで今こうなるんだよもー!対策がないじゃあないか!やっぱりここは、宇宙…意識を飛ばせ…煩悩を梵を…ボンチュー。ボンチューってやつ世紀末リーダー伝たけしにいたよな。ボンチュー。ボボンチュァァ!ってパンチを…あっ!やばい!もうあかん!!!攣りそう!チュアァァ!!




アイウォンチューでもアイニージューでもなく脳ボンチュー。NOボンチューじゃないよ。YESボンチュー。助けてゴン蔵。優しく殺して。



終わった。



ちがう。スキャンが終わった。多分1ミリも動いていない。今はまだ目は閉じたままだ。花山薫は避けられたかもしれないが。オーガの背中が目の前にあるかもしれん。「こんなハナッタレは。……殴る価値もねぇよ。」って言って去ってくれそう。それ知らないおじさんに悪口言われるだけじゃん。イッチバン辛いわ。



目を開ける。



とりあえず、お姉さんの反応を見る限り動かずに済んだようだ。CTスキャンに私の頭の中を覗くテクノロジーがあったらきっと鼻茸云々でなく心療内科に案内されてしまうだろう。まだ令和でよかった。会計を済ましそそくさと病院を出る段差で足が攣って片膝をついてなんか漫画キャラみたいな動きをしてたのはアタシです。



続く。

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