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血液銀行とは?映画「鬼太郎誕生~ゲゲゲの謎~」の雑学

 映画「鬼太郎誕生~ゲゲゲの謎~」の主人公である水木の勤め先である帝国血液銀行
この血液銀行は現在では聞かない企業である。
 血液銀行は日本がまだ連合国軍の占領下であった時に、GHQ(連合国軍最高司令部)からの輸血対策の確立を日本政府へ指示した事から始まります。
 これは感染症対策をせず、輸血をしていた当時の日本の医療の状況を改善するようにと言う指示です。
 第二次世界大戦前の昭和12年(1937年)にアメリカのシカゴにある病院から始まった血液銀行のシステムが日本に導入される事となったのです。
 こうして血液銀行は昭和25年(1950年)から日本各地に広まった。この血液銀行は採血した血液を買い取り、採血した人へその買い取った額を払う事で血液を集めていた。
 集めた血液は医療に使用された。

1954年の雑誌より、血液銀行で採血している様子


 「鬼太郎誕生」で帝国血液銀行の場面で社内の階段に座る人達の描写が一瞬映る。この人達は自分の血を売りに来た人達であると思われる。
 血液銀行へ血を売る売血は自分の身体に血液があればお金が出来る、ほぼ元手なしで稼げる手段となっていた。
ただし、頻繁な売血を行う者によって採血された血液は、赤い血球部分が薄く、黄色い血漿部が目立つようになった質の低い血液になっていた。
こうした黄色い血漿部が目立つ血液が出回る「黄色い血」の問題が発生してしまう。
 輸血用血液の質はとうとう大きな問題になります。
 昭和39年(1964年)に起きた駐日アメリカ大使であるライシャワー氏が暴漢に刺される「ライシャワー事件」の時の事です。
 刺されたライシャワー大使は日本の病院で治療を受けます。
 この時に使われた輸血の血液でライシャワー大使は輸血後肝炎を患ってしまう。
 大使を自国の病院で病気にさせてしまった事で、日本政府は輸血用の血液を民間の血液銀行から品質を保証できる日本赤十字社だけにすると決めます。
 ライシャワー事件をきっかけに売血から献血へ日本の輸血事業は変わりました。
 昭和44年(1969年)には保存用輸血血液に売血の血液を使用するのを止め、平成2年(1990年)には有料採血の完全廃止となり、ボランティアによる献血のみになります。
 現在の日本で売血は行われていません。
 また映画「鬼太郎誕生」では「血液製剤M」という薬品が登場する。
血液製剤は採血した血液から有効成分を取り出して作られます。この血液製剤も現在では有償献血が禁止され献血によって作られています。
 血液製剤は輸血同様に感染のリスクがあり、1980年代には非加熱血液製剤にHIV(ヒト免疫不全ウィルス)が混入した物が日米で流通した事でHIV感染が広まった。
 薬剤エイズ事件と日本で呼ばれたこの事件では、日本の医薬品メーカーである株式会社ミドリ十字から流通した非加熱血液製剤でHIVに感染してしまい、ミドリ十字の当時の取締役が逮捕される事件になった。
 ミドリ十字はかつて昭和25年に創業した血液銀行「株式会社日本ブラッドバング」だった企業でした。
 ブラッドバンクはライシャワー事件の後に、売血による血液銀行の事業から血液を原料とする医薬品製造へ事業を転換し、ミドリ十字へ社名を改めていました。
 血液銀行は昭和の戦後から平成にかけて、日本人の健康に影響を与えていたと言えます。
 薬害エイズ事件以降、採血前の問診・検査や製造、市販された後も遡って調査するなど安全対策を日本赤十字社が担っています。

<参考資料>
・厚生労働省「血液事業のあゆみ~売血から献血、国内自給をめざして~」

https://www.mhlw.go.jp/content/11127000/000892510.pdf

・厚生労働省「血液事業の歩み」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1027-16h_0002.pdf

・厚生労働省「血液製剤とは」

https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h24_rv05b_day2.pdf

・社会福祉法人はばたき福祉事業団「薬害エイズ事件」


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