見出し画像

読書記録「恋文の技術」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、森見登美彦さんの「恋文の技術」ポプラ社 (2011)です!

森見登美彦「恋文の技術」ポプラ社

・あらすじ
京都の大学院生であった守田一郎は、教授の強い薦めによりクラゲの研究のために能登半島にある実験所へ派遣(もとい島流し)される。京都の華やかな賑わいと比較して特にすることのない能登での生活。守田は京都にいる大学の同級生や知り合いに対して文通を行う。

例えば、マシュマロのように丸っぽい風体で愛嬌のある小松崎君は同じ実験室の三枝さんに恋をしている。恋愛相談を持ちかけられた守田は様々なアドバイスをするも、

「恋愛が成就するまでパンツを脱がない」
「彼女の乳に惹かれたわけではないのです」
「ぷくぷく粽を彼女に食べさせたら腹を壊してしまった」

などとすっとんきょんな考えをする始末。

手紙の中ではいかにも素晴らしいアドバイスを送る守田だが、自分のことは棚に上げてさも高名な文豪かの如く筆が回る文通弁慶っぷりはなかなかである。

その他、ゼミの先輩であり犬猿の仲である大塚緋沙子(様)、家庭教師で勉強を教えていたおマセな小学生のまみや君、(絶賛反抗期中の)心優しき妹、そして大学OBの森見登美彦大先生など、ユニークな方々との文通を見れる書簡体小説。

以前渋谷の天狼院書店で行われた「森見登美彦・阿呆読書会」なるものに参加した。森見登美彦さん好きが集まって、作中で語られる愛すべき阿呆について語り合う読書会である。

その参加者がこぞって阿呆ばかりであると、おすすめしていたのがこちらの「恋文の技術」。

この物語は守田一郎が知り合いに向けて書いた手紙のみで構成されるため、守田自身がどんな手紙を受け取ったかを読者は読むことはできない。だが、森見ワールド全開の(守田自身を含めて)風変わりな人ばかりである。

ちなみに、「恋文の技術」なんていかにも役に立ちそうなタイトルであるが、技法的なことはもちろん書かれていない。

(いや、森美さん自身はすでにその技術を確立しているというが、残念ながらそれをお伝えするのはあとがきが狭すぎる)。

強いてこの本から学べることといえば、「教訓を求めるな」ということ。

教訓を得ることもできない阿呆な話が人生には充ち満ちているということです。

同著 164頁より抜粋

いかにも森見さんの作品らしいお言葉である。我々は読んだ本からなにか一つでも良いことを得よう、支払った分の対価を得ようと躍起になる事が多い。

無論この本を読むことによって満足感を得たり、話のネタになると思えばすでに何かしらの対価は受け取っているが、何でもかんでも人生の指針となる言葉や教訓を得ようとするのは疲れてしまう。

哲学や教養などを深めることはいいことだが、そのためにユーモアを忘れてはならない。そのほうが人間らしいではあるまいか。

他の方の手紙と照らし合わせることにより、この話にはこんあ裏話があったのだなと読み返すのも楽しい作品。また、守田自身が一体のなんのために"恋文"を書こうとしているのか、教訓を求めず読んでみてはいかがだろうか。

川口市出身の自称読書家より

この記事が参加している募集

読書感想文

今日もお読みいただきありがとうございました。いただいたサポートは、東京読書倶楽部の運営費に使わせていただきます。