見出し画像

個人情報商品化の時代 21世紀とその流儀

かたや20世紀は労働力商品化の時代だった。
かたや21世紀は個人情報商品化の時代である。

簡単にいうとカネの稼ぎかたが変わっていくのだ。
これから記すことは特に今年社会に出たフレッシュマンに聴いて欲しい内容となっている。
というのも今年社会に出た人々の最大勢力は2001年生まれであり、まさに個人情報が商品化される「21世紀の人材」だからだ。

それでは個人情報の商品化についての話しを始めよう。

労働力商品を売った1900年代


先ほど、1900年代は労働力商品化の時代だったと書いた。
これまた今年社会にでて働きはじめたフレッシュマンは肌身で痛感しているはずだ。

「働いて日銭を稼ぐ」

この8文字でざっくりとだが本質的に労働力の商品化をイメージしてもらうことが可能だ。
そしてこの8文字こそが、労働力の商品化の定義として簡にして要を得ている。

ではそれ以前に労働力の商品化はなかったのだろうか?
完全になかったとは言い切れないが、労働力は商品化されていなかった。

 江戸の農民は労働力を商品化していたのか?

ここでは、江戸時代の日本を軽く思い浮かべてほしい。
人々が働くことは日常茶飯であった。
「人」が「動く」と書いて「働く」だからね。
田畑を耕して農民は働いたが、それを原則としてカネには変えなかった。
田畑を耕して出来た野菜なり米なりを近隣の人々でプレゼントしたり交換したりしあったのだ。
だから江戸時代の農民は働いたが、それを原則としてカネとリンクさせなかった。
ここで思い出して欲しい。

「働いて日銭を稼ぐ」

これが労働力の商品化のイメージであり定義だったことを。
つまり「働いたが、それを原則としてカネには変えなかった」江戸の農民は労働力を商品化していなかったことがわかる。


 なぜ1900年代に労働力は商品化されたのか?

江戸時代の日本では労働力が商品化されていなかったことを述べた。
ではなぜ1900年代に入り日本で労働力が商品化されたのだろうか?
それは海外列強に対抗するため、日本の文明水準を向上させるためだ。

江戸の交換経済・ボランティア経済は「若者よこの杖を授けよう」の世界であり、悪いモノコトであってもなかなか改善の機会が訪れなかった。
善意とボランティアでもらったものにはなかなか難癖をつけずらいからだ。

だから江戸の交換経済・ボランティア経済にあって世の中は停滞し、文明水準もまた停滞していたのだ。
このままでは高い文明水準を持った欧米列強に伍すことは出来ない。
明治の元勲がそう思い至り交換経済・ボランティア経済から貨幣経済・市場経済への変遷の旗振りを行なったのだ。
この貨幣経済・市場経済の中核となっているのが「労働力の商品化」という概念である。
つまり明治維新以後なされた「労働力の商品化」は日本の中で貨幣経済・市場経済を勃興爛熟させ、文明水準を引き上げ海外列強と伍していくために必要不可欠なオペレーションだったのだ。

この労働力の商品化による文明水準引き上げオペレーションは1800年代末にスタートし1900年代に本格化した。
だから1900年代が労働力商品化の世紀だと言えるのだ。



労働力商品化の限界 1900年代末

だが2000年を前にして世の中がおかしくなってきた。
「働いて日銭を稼ぐ」というライフスタイルがうまく機能しなくなったのだ。
これは「労働力の商品化の限界」だとも言える。
1995年にインターネットが普及しはじめ、いみじくも同年にWindows95が販売開始されIT環境が整いはじめた。
この95年から始まる大きな社会変革をIT革命ということが多いが、本記事でもIT革命という呼称を使用する。
IT革命は世の中をどんどん機械化・オートメーション化させていく。
これにより生産性が上がって、働く人々の頭数が必要なくなっていった。
要は95年以降においてどんどん雇用が失われていったのだ。


 失われた30年

この95年に端を発するIT革命とそれに伴う雇用の減少によって、日本人の実質賃金は減少の一途を辿った。
完全に失業するまではいかないが、正規雇用から派遣雇用になったりして賃金が減少した人々がこの期間において後をたたない。
1995年〜2024年・・・
この期間を「失われた30年」ということが多いのはこういった了見による。


 労働力商品化を補完する個人情報商品化の波

こうして21世紀を前にした1995年から「働いて日銭を稼ぐ」というライフスタイルが曲がり角に差し掛かった。
人は一度獲得した生活水準をなかなか落とすことは出来ない。
だが失われた30年(1995年〜2024年)のあいだに所得は徐々に、だが確実に減少していった。
この所得減少分を補うなにかがなければ人々は生活水準を落としてしまう。

そこで2000年代に入り台頭したのが「個人情報の商品化」という「新たな波」である。



個人情報商品を売る2000年代

 スマホという個人情報商品化装置

2001年生まれのフレッシュマンがこの記事の想定中枢読者であるが、この世代ならばまず間違いなく持っているものがある。
それがスマホだ。
2006年までスマホという概念はなかった。
スマホほど個人情報の商品化を説明するのに適したアイテムはないし、それはとりも直さずスマホが個人情報を商品化していることの裏返しでもある。

スマホは本来100万円以上するスーパーコンピューターだ。
すこぶる高性能ですこぶる小さい。これは凄いモノなのだ。
だが我々はこの高価なスマホを月額使用料などを併せても、50万円かそこらで使っている見当になる。
ここはあくまでざっくりとしたイメージとして捉えてもらいたい。

   50万円の支払い 
     →→→
利用者  スマホ  企業
     ←←←
    100万円の価値

我々は100万円の価値のあるスマホをたかだか50万円の支払いで利用できているのだ。
では差額の50万円はどうなっているのか?

この差額が個人情報の商品化によって埋め合わされているのだ。


   個人情報商品50万円分!
      +
   50万円の支払い 
     →→→
利用者  スマホ  企業
     ←←←
    100万円の価値



 スマホはどうやって個人情報を商品化しているのか?


では我々が持っているスマホは、我々の個人情報をどうやって商品化しているのだろうか?
スマホにはその位置を特定する発信機が最低3つ付いている。
つまり持っているだけで位置はIT企業に特定されているのだ。
位置情報というのは個人情報の王様であり、これは非常に高価な情報となる。

個人情報とは、
誰が、どこで、何を、どのように、なぜ、〜〜した。
この6つのWが構成要素となっている。
その中でも「どこで」は非常に大切つまりは高価な情報となるのだ。
この個人情報の王様たる位置情報をスマホは商品化している訳である。

要はスマホを持っているだけなのに、、個人情報は商品化され続けているのだ。
ひいてはスマホを持っているからこそ、個人情報分が割り引かれてスマホを安価に利用できるとも云える。

  個人情報商品50万円分!
      +
   50万円の支払い 
     →→→
利用者  スマホ  企業
     ←←←
    100万円の価値



 検索エンジンいう個人情報の商品化装置

サイバー空間は個人情報の商品化スキームの塊だ。
あと一つだけ個人情報商品化の例をあげよう。

検索エンジンは無料で語句の意味を調べられる。
かつて有料の1000円ほどする辞書によって調べていた語意をサイバー空間にある検索エンジンによって無料で調べられるようになったのだ。
ではいったいこの1000円の対価はどこに消えたのだろうか?
我々は何を対価に払っているのだろうか?


  個人情報商品1000円分の頭の中
      + 
   0円の支払い
     →→
利用者 検索エンジン  IT企業
     ←←
   1000円分の価値


我々は検索エンジンに調べたいワードを打ち込むことにより、「頭の中」という個人情報を商品にして売却しているのだ。
それが1000円分の個人情報商品となり、IT企業が検索エンジンを介して供給するサービスの対価となっている。



失われた30年の基本構造

このようにしてサイバー空間において我々は知らず知らずのうちに個人情報を商品化して売却しているのだ。
このように個人情報を売却して、
「働いて稼ぐ」所得減少分を補って生活水準を保ってきた。

これが失われた30年(1995年〜2024年)のライフスタイルである。



21世紀 個人情報商品化の世紀


21世紀になって四半世紀が経とうとしているが、
いまだに「働いて稼ぐ」という潮流は強い。
だがこれからITによってさらに機械化・オートメーション化が進むと、雇用と労働所得がどんどん減少していく。
その時、我々はさらに「個人情報の商品化」並びに「売却」を行なって減少する労働所得を補う必要がある。

するとますますIT企業のもとに個人情報商品が集積していく。
このIT企業への個人情報商品の集積は、AI開発をより発展させて機械化・オートメーション化の流れを加速させる。

つまり・・・


IT化→機械化・オートメーション化進行→→雇用減少・労働所得減少→→個人情報の商品化売却による生活水準の維持→→個人情報商品がIT企業に蓄積される→→IT企業によってAI開発が発展→→IT企業による機械化・オートメーション化進行→→雇用減少・労働所得減少→→個人情報の商品化売却による生活水準の維持→→個人情報商品がIT企業に蓄積される→→IT企業によってAI開発が発展・・・・・・・

という個人情報の商品化を要にして、このような「労働力商品化から個人情報商品化への付け替えスパイラル」が現在進行形ですすんでいるのだ。


 個人情報商品化の行き着く先は?
 労働力商品化の減少すなわち雇用の減少である

個人情報商品の売却が盛んになっていくと、「誰が、何を、どこで、どのように、〜した」がIT企業によってますます精度高く把握されるようになる。
すると、世の中の効率化が進んで、そこに機械化・オートメーション化の進行が合わさり、雇用すなわち働き手はいらなくなっていく。
つまり労働力の商品化は減少していく訳である。
このような経路でも、
個人情報の商品化活況化 → 労働力の商品化減少
この流れを説明できる。

この小段落の内容を纏めると、
個人情報の商品化が進行すると労働力の商品化すなわち雇用が減少する。



 個人情報商品化とベーシックインカムの関係

個人情報の商品化は雇用をこの世の中から失わせていく。
すると人々は食い扶持に困ることとなる。
そこで人々はますます個人情報の商品化売却を進める。
結果、完全な個人情報を何かしらの組織に明け渡すようになる。

この時、その完全な個人情報を獲得した組織がもし仮に「統治機構」であるならば、
統治機構側から個人情報売却の対価として「ベーシックインカム」を受け取るという流れも見えてくる。
ちなみにベーシックインカムとは「最低所得保障」ないし「最低所得保障制度」と訳される。
この先にある雇用が失われた時代にあって、労働力を商品化して日銭を得られなくなった人々が頼る最低限の社会保障のことを指すケースが今のところは多い。



 個人情報商品化時代におけるベーシックインカム

    完全な個人情報
個人  →→→→→→→ 統治機構
    ←←←←←←←
    ベーシックインカム(最低所得保障)


このように、
個人が完全に個人情報を統治機構に明け渡す。
その見返りに最低限の所得・日銭をベーシックインカムという形で受け取る。

これがワタシの考える個人情報商品化論とベーシックインカム論の極端な合流地点である。



個人情報商品化という文脈から紐解く
日経平均最高値更新の理由

2024年の3月に日経平均株価が市場最高値を更新した。
これも「個人情報商品化」の見地から説明可能だ。

これまであまり鑑みられることのなかった「個人情報の商品化」という概念が、徐々にだが確実に日本国内でも浸透してきた。
その結果、日本企業の中にある「個人情報」に対する「価値」が新たに「発見」されたのだ。
だからその個人情報商品の価値分だけ、株価に上乗せがなされた。

したがって日経平均株価が史上最高値を更新したのだ。
・・・という文脈流で捉えることも出来るだろう。
ここではこれ以上の深入りは避けるが、今般の日本国内における株価高騰も個人情報商品化の文脈から説明が可能なのだ。




まとめ

1900年代は労働力を商品化して日銭を得る時代だった。
翻って、
我々がいま生きている2000年代は、
個人情報を商品化して日銭を得る時代になっていく。

この変遷は明白であり、もはや抗うことのできない趨勢ではないだろうか。
なぜならば、我々はもはやスマホを手放す生活を想像だに出来ないからだ。
2006年にスマホが世に出てから僅か20年弱で、我々はすっかりスマホが演出する利便性の奴隷となった。
その代償として我々はIT企業に個人情報を掌握されかけており、雇用すなわち労働力の商品化は減少の一途を辿っている。

これが今年社会人となったフレッシュマンが戦っていくステージの基本的社会構造なのだ。
このことを踏まえて戦えば、面白い戦いができるのではないかと思う。


個人情報商品化の潮流に抗うもよし。
個人情報商品化の潮流に身を任せるもよし。


ただし、
「労働力の商品化」から「個人情報の商品化」への潮流変化|《パラダイムシフト》があることを忘れないで戦って欲しいのだ。

そうすれば、
「いま自分が世界の中でどういった役割を演じているのか?」
このことを見失わないですむからだ。


ありがとう。
では、またどこかで必ず逢いましょう。


コーヒーゼリー380円 少し溶け出した(汗)


2024年4月27日(土)
カフェベローチェ淀屋橋店にて土佐堀川の夜景とコーヒーゼリーを堪能しつつ記す。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?