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大河「光る君へ」(18)岐路

 久しぶりに長めの福井滞在を敢行しました。大河と同じく色々盛りだくさんだったので今週中に旅行記アップ予定です(あくまで予定です予定)。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

 こんにちは少納言です。GWも明けたこの日に、明るく元気な侍従さんではなく陰キャな私の語りから始めるなんて、誠に申し訳なく存じます。ですが道兼さま推しの私としましては、どうしても黙ってはいられず……暫しのお目汚し、お耳汚しをお許しくださいませ。
 道兼さま……思えば、初回の冷酷にして傍若無人なお振舞い、誰がどう見ても擁護することのできないお方にございました。なのに何故でしょう?回を追うごとに、どうにも目が離せなくなっていくどころか、その動き、仕草、口から出る言葉のひとつひとつに、胸がきゅっと締めつけられて、惹かれていくばかりの自分がいました。こんなことは初めてです。
 勿論、犯してしまった罪はなかったことにはできません。吐いた言葉も元には戻せません。それは当の道兼さまが一番よくわかっておいででした。
 最期の
「俺は……浄土に行こうとしておるのか?」「ぶざまな……こんな悪人が」
 という言葉であらためて確信いたしました。まひろさんのお母様を殺めてしまったあの時から、罪を罪として認め、ひと欠片も忘れることなく、すべて身の内に抱えながら生きていらしたのです。制止を振り切って御簾の内に入られた道長さまもきっと感じられたことでしょう、道兼さまが独りで負っていたものの重さを。
 今はただ、
(あの方の罪も無念も、全て天に昇って消えますように)
 というまひろさんの言葉通り、祈るばかりです。此の世に命ある限り続く想像を絶する痛みと苦しみから解放されて、生まれたての赤子のように柔らかく清らかな、素のままのお姿に戻られた……と信じたい。 
 私にとって道兼さまは、紫上に次ぐ最高の推しの一人でした。そのような存在に出会えたことは望外の幸せにございました。感謝に堪えません。 
 いくら語っても語り尽くせない気もいたしますが、キリがありませんのでこの辺りで止めておきます。長々と、大変失礼いたしました。少納言でした。

侍「右近ちゃん……泣」
右「侍従ちゃん……泣」
侍「アタシ、道兼さまって正直好きじゃなかったけどー、今回はさすがに泣けるよううわーん」
右「侍従ちゃん、実資さねすけサンじゃあるまいし一言余計よ。それにしてもあっけなかったわね……まさに世は無常。これで藤原三兄弟の生き残りは道長くんのみか」
王「兼家さまはある程度この結果を見越していたかもしれないわね。なんたってあの安倍晴明が(途中までとはいえ)ガッツリついてたわけだし」
侍「エッどういうこと?!」
右「ああ、兼家パッパ『万事兄弟しっかり協力して臨め』みたいなこと言ってたもんね。実現が難しいからこそあえて言うんだよねこういうの。なんせ道隆さまは『長くない』(晴明談)し、道兼さまも平安的には『罪障が重い』から長生きできないとみて、内心道長くんに託してたってことか」
王「そうそう。ただ、道兼さまが七日関白といわれるほど早く逝くとは思ってなかったかも。道長くんの補佐により兄弟の政権を固めておけばベストだったわね」
侍「あー!とすると、詮子さまのアレ、結果的に兼家パッパの計画通り……!ってコト?!詮子さまって初めっから道長くんと大の仲良しだし一番認めてるし!!」
右「政治に関しては、詮子さまが一番パッパの才を受け継いでるわよね。自分の息子とはいえ帝の御前でのあの口上っぷりシビれた。理詰めだけでもなく情に訴えるだけでもなく、絶妙なところを突いてたわ」
王「見事帝のお心を動かしたものね。とはいえ権大納言でしかない道長くんをいきなり関白にはできないから右大臣、および太政官一上いちのかみに就けて藤原一族の筆頭とした。つまり帝とも直接話せる上に公卿のトップで議定を主宰できる、一番オイシイポジション。事実上の政権掌握よ」
右「これは内大臣据え置きの伊周くん憤懣やるかたないわね。にしても、定子さまへのあの暴言ドン引きだったわ」
侍「あーーーほんとヤバかったよねアレ!!!あれこそ物の怪?!道隆さま憑いちゃった?!って思った!」
王「ね。傍で食い殺しそうな顔してた清少納言サンだけじゃなく、世の中の女性全員を敵に回したわよ。道長くんに上に行かれたところで順番としては全くおかしくないし、次に回って来るの待ってればいいだけのことなのに、何を焦ってるんだか」
右「人望ない自覚はあるんじゃないの?定子さまにまで言われちゃうくらいだし。皇子生め生め連呼は半分意趣返しよね。ちっさ。道隆パッパの更に劣化版ときたら、もはや兼家パッパの片鱗も残ってないわね。粉レベルよ粉」
侍「右近ちゃんキビチイ!でも同意!」
王「あ、ところでさ侍従ちゃん。今回の最後、例の廃屋でまひろちゃんと道長くんが行き会うけど目も合わせず言葉も交わさず、だったじゃない?アレの解釈聞きたいの」
侍「エッアタシに?!」
右「侍従ちゃんは道長くん推しじゃん。私も聞きたい、謎だったから」
侍「えーとえーと、あくまでアタシの個人的な意見だけどー、アレは現実じゃなく、まひろちゃんの心の中での風景だと思う。もしかしたら道長くんも、同じようにまひろちゃんを思い浮かべてたかもしれない(ソウルメイトだもんね!)。だけど今語ることはお互いに何もない。今は己だけを見つめて己と対話をしなきゃいけない時だって、二人おんなじ心持ちでいますよってことじゃないかなー。リアル妻である倫子さまや明子さまも踏み込めない領域なのよ、あの廃屋はさ」
王「なるほど。流石だわ侍従ちゃん。ファンの鑑ね」
右「まあ普通に考えて、右大臣ほどの重い地位になればウカウカ夜歩きなんてできないもんね」
侍「そうそう!ヒカル王子だってそうだったデショ?でもさー正直言って、二人のラブラブっぷり観たかったなー。いや今それどころじゃないってわかるけどさー。しょぼんぬ」
王「もはや恋愛を超えた絆ってことなんでしょうね。とするとリアルではまひろちゃんも」
右「イイ女になったし……」
侍「ちょっと待って待って!コレもアタシ言いたい!宣孝オジサンの
『思い描いた通りじゃ!』
って、メチャクチャ意味深じゃなーい?遠い大宰府で紅をつけたまひろちゃんを想像しつつ選んでたってえー!キャー!!!」
右「今まであんまり言及しなかったけど私、宣孝サン結構好きなのよね。生活力あるしオシャレだし、イケオジだわ」
王「右近ちゃんは生きる力が強い人が好きね。大事よね」
侍「イミシン!な会話で、じゃあまた来週ー!」

※今回の政争についての詳しい記事は此方↓

 今回も濃ゆい回でした。
 道兼が居並ぶ公卿の目前で斃れるシーン、素晴らしかったですね。周りの声が消える演出も良い。駆け寄った道長の黒一色の正装に対し、道兼の衣裳の透け感がたまらなく美しかった。帝に詰め寄る詮子さまも実にカッコよかった。平安の女性は大人しく奥に引っ込んでいたのではなく、裏で糸を引きガンガン政治を動かしていたという説がありますが、まさに体現してましたね。
 何度でもいいますが本当にこのドラマ、平安時代が題材の大河第一作目として歴史に残りますね、ええ確実に。
 さて数多の福井県人・元福井県人が待ち望む「越前編」まであとわずか。期待しかありません。楽しみだなあ。その前に是非とも福井旅行記事(長編)を書かなくては(使命感)。頑張ります。
<つづく> 


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「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。