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よの33 自称コーヒー好き その2

コーヒー好きの私は最後のページを読み終え、ゆっくりと本を閉じた。じーんと込みあげてくる感動。閉じるのが惜しかった。
コーヒーを一口飲む。美味い。いい本を読み終えた後に飲むコーヒーは格別だ。

この本は2度目だったが、不思議と初めてかのような新鮮な気持ちで読めた。思いのほか内容を覚えていなかったのだ。おかげで同じ感動を再び味わうことができた。得した気分である。1冊で2度美味しいとはこのことだ。

私はコーヒーに黒砂糖を入れ味わいながら飲んだ。最初はブラックで、次に砂糖の塊を溶かさず入れ、最後にミルクを入れ、3種類の味を楽しむのが好きだ。

ん?まてよ。ふと疑問がよぎった。

本当にお得なのだろうか。
私は本の内容を完全に忘れていた。読んで思い出したというより初めて読んだという感覚に近い。

数年するとまた忘れるだろう。
そしてその時また新鮮な気持ちで読むだろう。

それは、お得といえるのか。

そもそも忘れるのに読む必要ある?
私は一瞬何かものすごい真理にぶち当たりそうな予感を得たが、本能的にそこには触れちゃいけないと思えて、何事もなかったように残りのコーヒーにミルクを入れ一気に飲み干した。



小さな喜びの積み重ねが大きな喜びを創っていくと信じています。ほんの小さな「クスッ」がどなたかの喜びのほんの一粒になったら、とても嬉しいなぁと思いながら創っています。