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町の本屋さん

つい10年位前までは、書店に本を注文すると大概「2週間かかります」といわれたものだ。
これには、「自転車で運んでいるの?」なんて嫌味を言いたくなるほど不満だった。
それに、自分が欲しい本を店員さんに説明するのも気恥ずかしくて苦手だった。
それがアマゾンを使うと、人目をはばからず自宅から注文でき、早くて翌日に届く。
初めて使ったときは、感動した。

しかし、その快適さに目を奪われて忘れていたことがある。
それは、書店で客注したときには送料が全くかからないということ。
出版取次と書店の間には、雑誌や新刊本を定期的に配本するシステムがある。
客注本もそのシステムに乗って配送されるため、客が送料を負担することはない。
出版流通の仕組みといえば、自転車操業的な配本と返品が繰り返されることばかりが取り沙汰されがちだが、このように客にメリットがある側面もある。
宅配業界の著しい人手不足にもかんがみれば、優れた流通システムが既に存在するにもかかわらず、自分の欲しい本1冊だけのために配送をチャーターすることは、社会に著しい負荷をかけているようで後ろめたい。
明治以来脈々と、全国津々浦々まで築かれてきた出版流通の生態系は、可能な限り持続してほしいと考えるようになった。

そこで、この流通システムや地元書店を買い支えする方法はないかと思い悩んでいたとき、近所の書店で「Honya Club」を教えてもらった。
出版取次大手が運営するオンライン書店には、日販の「Honya Club」、トーハンの「e-hon」がある。
これらのシステムを使って「書店受け取り」を指定して注文すると、取次に在庫があれば2~3日で書店に届く。かつての「2週間」に比べれば格段に便利になっていて驚いた。
そして、その売上は、書店につく。上述の配本ルートをたどるので、もちろん送料の負担はない。店員さんに「○○」という本が欲しくて…と言う小恥ずかしさもない。注文後は、その出荷状況、書店への入荷状況は、メールで通知されて安心だ。

「町の本屋さん」が消滅することは、その町に最も身近で敷居の低い文化拠点がなくなってしまうことを意味する。
秋田県内でも、25市町村のうち9自治体が既に「書店ゼロ自治体」だ。
そもそも、基本的に本はどこで買っても値段も中身も一緒。
だから、自分の町を書店ゼロ自治体にさせないためにも、こうしたオンライン書店も活用しつつ(出版取次の思うツボで少々癪な気持ちもあるのだが、ともかく)、町の書店を大事にしたい。

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