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  世界最後の日

ねえ、もし、もしも、さ。
今日が世界最後の日だったら、君はどうする?

『え、どしたの。なに急に。
珍しいじゃん、お前がそんな仮定の話するなんてサ』

たまにはそんな話も良いかなと思って。
いつも、そういうのは君の領分だったからさ。

『領分て。
好きなんだよ、そういう、答え出ないコト考えるの。』

君がそういう話してさ、子供みたいな顔して。
なに言ってるんだ、そんなのあるわけないじゃんって。
思ってたけど。

『そうそう。いっつも、すげなく返されてさ。
そんで、なんでそんなこと言うんだよーっつったら、
嬉しそーにケラケラ笑うんだもん。』

でもね、そんなやり取りの一つひとつが、幸せだった。
大好きだったんだ。君のこと。

『なに、今日はヤケに素直じゃん。
どうしたの?
まるでお別れ告げるみたいじゃん。
やめてよー、傷付いちゃうよ?』

……。
実はさ、今日はね、世界最後の日なんだよ。

『え?
そんなニュースやってたっけ?
最近テレビ見てないからなー。』

嘘じゃないよ。本当に。
世界最後の日なの。
だからさ、君に聞きたくて。

『……』

世界最後の日、君は何をしていたの。



って、そんなこと聞いたって。
答えなんか返って来やしないか。
わかってるよ、君がそこに居ないことくらい。
知ってるんだ。ほら、有名な歌であったじゃない。



居なくなるなら、先に言っといてよね。
こっちにも、準備ってのがあるんだからさ。



会いたいな。
会いに行っても良いかな。
意外と簡単だと思うんだよね。



嘘嘘。冗談だって。
……じゃあ、またね。

『駄目だよ。』

うん。分かってるよ。

『いってらっしゃい。』

うん。いってきます。

『行っちゃったかな。
うん。行っちゃったみたい。
ほんと、最後まで世話が焼けるよね。全く。』



『でもさ、嬉しかったよ。
来てくれて。
でもどうしたって、泣顔より笑顔の方が好きだからさ。
忘れて。』

忘れないよ。

『そう願うことを許して。』

ううん。許さない。
だって君は。

『だってお前は。』


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懐かしい、夢を見ていた。
あの日、  世界最後の日はつつがなく終わった。
次の日からは、いつも通りの日常だった。
ただ一つ、決定的な欠けを除いて。
そして今日も。
変わらぬ欠けた世界で生きる。
定め。

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