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10年前の北京モーターショー

上海駐在時代の2014年の備忘録から

北京モーターショーの交通費問題

北京モーターショーで北京に来ている。
新車が118台も出展されることもあり盛り上がっているが、一方で、参加企業の間でちょっと話題になっているのが検察のモーターショーへの介入。

中国では、こういったプレスイベントの際は、出席する記者に「交通費」や「労務費」と称して「紅包(ホンバオ)=袖の下」を支払うのが常。大体一人の記者に300元(4,800円)から500元(8,000円)を支払う。これは中国の悪しき習慣だが、給与の低い記者にとっては重要な収入源になっているため、政府が「お金をもらって記事を書くな」と通達を出しても、なかなか直らない。

しかし、今回の北京モーターショーで、検察がこの「交通費」の取り締まりを行うため、モーターショー会場に検察のメンバーを送り込み、発見した場合は摘発するという噂が流れている。

ある日系企業には事前に検察から通達が来たという話もある。各社は現場で「交通費」を渡したと気づかれないように、いろいろ画策している。

では銀行振込みにすればいいじゃないかと思うが、証拠が残る振込みはもっと危険と記者に拒否される。習近平政権以降、メディアに対する監視、通報制度を絡めた相互監視による「チクリ」を恐れる記者は多い。

習近平政権になってから汚職の摘発が次々に行われており、その一環だという人と、内部抗争でプレッシャーをかけているという人がいるが真相はわからない。

今日のモーターショー会場で、どんな出来事が起きるのか…
2005年、各日系自動車メーカーに3名ずつ警備員が配置され、入口にも大量の警備員や公安が動員された抗日デモの際の上海モーターショー以来の緊張感が走っている。

中国メディアがリリースをデータで欲しがる理由

中国のあるビジネス誌の記者が「中国の記者は歩合制で記事一本いくらとなっているので、とにかかくたくさん記事を書かなければならない」と言っていた。

この原稿料が安い。しかも、記事の中で固有名詞を間違えたり、数字を間違えたりすると罰金があり、書いた記事数本分の給料が飛んでしまうという。

記者は、本数をこなさなければならないのと、この罰金があることから、なかなか独自の記事を書きたがらないと言われる。

記者発表会の際に企業は、日本のようなリリースではなく「新聞稿」という、既に記事になった状態の文章でリリースを書き、デジタルデータにして渡すことが常識となっている。

数をこなさなければならない、ミスをしないということから、記者は新聞稿をコピーペーストできるデーを求めてくるので「中国記者はコピーペーストで記事を書く」と揶揄されるが、実際は、そんな切実な理由があるようだ。

日本に中国現地の“本当”が伝わってこないのは誰のせい?

実は、このモーターショーでは何の問題も起きませんでした。私たちが担当する会社のブースに配置された3人の警備員がブースに置かれた新車に乗ったり、スマホで車と記念写真を撮ったりと楽しそうに警備をしていたのを思い出します。

その様子は日本では報道されず、ひたすら危ないという報道で、家族や友人から心配する連絡があ相次ぎましたが、全く問題ありませんでした。

日本の報道は必ずしも正しい中国の姿を報道していない。うのが2001年から中国広報に関わってそれによって日本の人たちは隣国である中国を正しく理解していないと思いる私の感想です。

それは既成概念の問題なのか、政治的な力が働いているのかわかりませんが、過去に正しい中国の姿を報道した日本のメディア(記者)はそう多くありませんでした。

日本メディア駐在員の怒り

2016年上海ディズニーリゾートオープンすることになり、取材に行くことになった日本メディアの駐在員Tさん。日本本社から「会場で並んでいなかったり、子どもにおしっこをさせていたり、食べ物を持ち込んで食べている所を撮ってくれ」と言われたと言って目を吊り上げて怒っていました。

彼は、駐在1年くらいでしたが、上海に住んで中国のあちこちに取材に行っており、中国のリアルな状況がよくわかっている記者ですが、本社の指示には逆らえないようでした。

指示してきた本社の上司は、おそらく中国に来たことはないでしょう。そんな光景を紹介して日本人が見下す中国人の姿を取り上げることが視聴率を上げると考えているんですかね。

自分の国の常識をもとに文化や常識、歴史も違う国のことを日本的な都合で解釈する……これはある意味仕方のないことですが、関係構築という広報的な考え方から見れば、海外を舞台に活躍する企業が改善すべき最初の課題だと思っています。

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