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SaaS Design Conference2023登壇レポート 「流通SaaSを支えるUXリサーチのリアル」


本記事について

 Research Advent Calendar 2023 の9日目の記事。
2023年11月23日に開催されたSaaS Design Conference 2023の登壇内容についてまとめたもの。

自己紹介

靴の販売員から真逆のことにチャレンジしたいと思い、BtoBのデータベースマーケティング、BtoCのデータサイエンス領域に携わり、新規事業の立ち上げや組織の立ち上げに参画。その後、ものづくりに携わりたいという気持ちから、流通小売業界をAIの技術で支える株式会社Retail AIに一人目のUXリサーチャーとして入社。直近は同社グループ小売の購買体験設計に従事。

SaaS Design Conference 2023とは?

「SaaS Design Conference」は、第一線で活躍するSaaSに携わるデザイナーが集い、業界独自の課題、デザイナーとユーザー間の課題、専門性、働く姿など、SaaS業界で働くデザイナーの輪郭線を描き、もっと興味を持って頂くためのカンファレンスです。

2023 年の SaaS Design Conference は、11 月 23 日(木・祝日)勤労感謝の日に開催されました。参加は無料です。オフラインと Live 配信のハイブリッド形式で行われました。

登壇スライド

当日お話しできなかったこと

本当は当日お話ししたくてできなかった、苦戦したこととその対策について書きます。

1.インタビューのブラッシュアップ
実査を初めてすぐ、深掘りポイントが実際のインタビューで見つけられるか、初回の方のインタビューではあまり深く掘れていないのでは?と悩んでいました。これまで知らなかったことを聞き出さなけばと思うほど不安になるので、スプレッドシートに記載した5W1Hを聞くことに集中して、それだけで十分か?という観点で、見直しをかけ、深掘りのきっかけを作るイメージでインタビューをブラッシュアップしていきました。

2.文字起こしの自動化
分析の準備を行う際はインタビューの音声データの文字起こしを自動化する仕組みを構築しました。google docsなどの無償のものやsonix、easy-peasy.AIといった有償のものを試してみましたが、無償でも精度が高いものがあるのでは?と思い、音声認識AIのwhisperを使用しました。以下の記事にまとめていますのでご興味がある方はご一読いただけたら嬉しいです。

3.ジョブの定義の元データ作成
ジョブの定義を行う際、Figmaを使用したのですが、FigmaのCSV Populateというプラグインを使用して、Figmaに一括インポートしました。切片単位で付箋化し、ジョブを定義していきました。今回の目的以外でも、コード化、カテゴリー化していくのにもとても便利なので、分析の作業工数を減らしたいと思っている方にお試しいただきたいです。弊社プロダクトマネージャーに試してもらいましたが「すごかった」と喜んでいただきました!
こちらも以前まとめた記事を貼っておきます。

4.着眼点の定義・優先順位づけのアウトプット作成
"課題"と"障壁"の違いが不明瞭、個人というより抽象度の高い会社のジョブになっている、ペルソナが人口統計学的な情報になっている、など、ジョブパフォーマーの定義や意味を考慮できていない抽象的なアウトプットになっていました。
対策として以下のようなことを試み、解像度を上げていきました。

  • インタビューやアンケートの発言から詳細化したマイクロジョブを探す。

  • それぞれの行動を何を達成するために取っている行動なのか言語化する。

  • 課題ー障壁ー代替手段を対応関係にする。

  • 状況もミクロに具体的な環境、文脈、状態に細分化する。

こういった泥臭いブラッシュアップや部分的な仕組み化を重ねながらリサーチを進めていきました。

登壇で得たもの

登壇後に来場者の方達とお話しさせていただいた際、皆様からいただいた温かいフィードバックから今回のリサーチの実践内容に自信を持つことができました。

  • ジョブ理論を実際に取り入れたリサーチのステップをやったことがなく参考になった。

  • ジョブ理論に基づいて話していくと開発デザインだけでなく、ビジネス部門の方達とも同期しやすくなりそう。

  • 丁寧に実践されている事例を聞いて勇気をもらえた。

最後の勇気をもらえた、はこちらの方がとてつもなく勇気をもらえました。
こちらの記事には具体的すぎて書けないのですが、リアルタイムで弊社のメンバーからDMをもらい、◯◯のリサーチに使えそうなのですがどう思いますか?などコメントをもらえていたのはとても嬉しかったです。

今回の登壇が来場・視聴された方に新たな視点や実践のヒントを提供できていたら本当に嬉しいですし、そのためにも社内外問わず、定性調査の実践や意義を広める活動を行なっていこうと改めて思いました。

リサーチを通して、私一人だけが解像度が高くなっても意味はありません。事例を実践するだけでなく、共有やサポートしながら、周囲を巻き込み、実践を広げていくより良い体験を作っていけると思っています。

今回のリサーチは一緒に取り組んだプロダクトマネージャー、デザイナーのお二人がいなければ実施できていなかったのでお二人に本当に感謝しています。そして主催の平野さん、RESEARCH Conference Pop-up in FUKUOKAからのご縁で平野さんに繋いでくださった松薗さんへ、ありがとう以上の言葉があったらお伝えしたいです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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