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不登校生活の中でいただいた励ましの言葉TOP2

我が家の子どもたち3人が次々と学校に行けなくなる中で、さまざまな言葉との出会いがありました。その中で特に印象深く、いつ思い返しても励まされる言葉がこの2つです。

「私はこの子のお話が聴きたいな」
「きちんとやらなくってええやん?」

どちらも同じ方からいただいています。松戸市常盤平で「まんぷく小屋」という子ども食堂と学習サポートを運営している中村佳子さんという方で、みんなから「よっちゃん」と慕われています。

おとなになってからひとを下の名前で呼ぶことが少なくなり、知り合って間もないのに「よっちゃん」は…と後ずさり気味だった私も、いつの間にかそう呼んでしまっていた、とてもとても暖かな方。

不登校生活4年目の冬、1年間の不登校を経て「友だちが欲しい」と言い出した小6の娘と一緒にこんな企画を持って、サポセン(まつど市民活動サポートセンター)に相談に行きました。

こんな未熟な思い付きをコーディネーターの方はひと言も否定することなく親身に聴いてくださり、「こんなところに相談に行ったらいいんじゃない?」と子どもの居場所や子ども食堂を紹介してくださりました。

その中に「まんぷく小屋」があり、私と娘はやりたいことを書き出した紙を持って、よっちゃんに会いに行ったのです。

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「私はこの子のお話が聴きたいな」

その日は子ども食堂の開催日ではなくて、静かな家の中でよっちゃんはお茶を出してくださり、「それで、どんなことがやりたいの?」と質問してくれました。

私は紙を差し出して説明を始めました。おしゃべりが得意ではない娘は横で黙って聞いています。私が3回目くらいに息継ぎした頃かな、よっちゃんが穏やかに言いました。

「私はこの子のお話が聴きたいな」

私は息をのんで黙りました。そうだ、やりたいといったのはこの子。私はどうして代わりにこんなに話しているんだろう。

ひとから「指摘」をされるだけでいつもなら「叱責された」とマイナス思考に陥りがちな私でも「叱られたのではない」とわかる、とても穏やかで暖かな言い方でした。

私は赤くなって黙りました。心臓はバクバク言っています。「大丈夫、叱られたんじゃない」と繰り返す脳内と、おしゃべりの苦手な娘が説明できるのかという心配で頭の中はぐるぐるです。

よっちゃんは質問をゆっくり繰り返し、娘の発言を待っていました。娘は小さな声でとぎれとぎれに言葉を絞り出し、詰まります。

よっちゃんは今度は質問の言葉を換えて聞いています。娘は深呼吸してもう一度話し出します。

話す、詰まる、を繰り返す娘に、ゆったりとした口調で質問をし、発言を待っているよっちゃん。

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私の心臓はようやく落ち着いてきました。頭のぐるぐるも少し遅くなり、自分の思考の断片が掴めるようになりました。

子どもたちが3人揃って不登校になり、私にとっては自慢の子どもたちが、あちらこちらで心配そうな顔をされるようになり、4年。「そんな心配されるような子じゃないんですよ」ということをアピールしよう、しなければ、という思いに急かされていたことに気づきました。

ここで言うなら、娘の苦手なおしゃべりを心配されないように、おしゃべりが苦手でもこんな素敵な企画を思いつける子なんですよ!というアピールをしなければ、というような。

でも、よっちゃんが娘の話を丁寧に時間をかけて聞いてくださっていることは、そのことそのものが私を勇気づけてくれました。

「この子はお話を聞くに値する子なんだよ、こんなに時間をかけてお話を聞きたい子なんだよ、こんな素敵なことを考えて、お話ができるじゃない?」

よっちゃんがそう言ってくれているように思いました。

子どもへの評価を気にするあまり、子どもの表現の機会を奪ってはならない、待ちなさい、ということもよっちゃんのこのひと言から学んだことでした。

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「きちんとやらなくってええやん?」

娘と2人、おしゃべり会の企画をどうにか実現できないか?と、試行錯誤しました。近隣30の小学校に電話をかけて企画の説明をし、該当する子がいたら声をかけてもらえないか?聞いたりもしました。

門前払いの学校もあれば、「教育委員会を通せば」という学校、とりあえず企画のお手紙持っておいでと言ってくれる学校、「いるにはいるけど、外出も難しい子だからそっとしておきたい」という学校。

とにかくうまく行きません。娘をがっかりさせたくなくて、私は思いつく限りのことをやってみました。

ある日、まんぷく小屋でよっちゃんに「うまく行きません…」と泣き言を言った時、よっちゃんが「きちんとやらなくってええやん?」と言ってくれたのです。「きちんきちんとしなくても大丈夫。誰も気にしないよ」と。

なんだろう、あの瞬間の変化は。今思い出しても泣きたいほどの安堵感だったのです。

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私には小さい頃から堅苦しいところがあって、なんでも「ひとから見てちゃんと見えるように」という思いがいつもありました。この時もその思いが強くあった気がします。娘がやりたいことを「ちゃんと形に」しなくちゃ、と。

そして、やはり自分の子どもたち3人ともが不登校という「(ひとから見て)ちゃんとしていない」状態の今、できそうなことはできる限り「ちゃんとしていて評価されるような見た目」につなげていきたいという焦りがありました。

焦らなくて大丈夫だよ、ちゃんとしてなくても大丈夫だよ、がんばっているのを知っているひとはたくさんいるよ。そう言ってもらえたように思ったのです。

結局、この「不登校の6年生の女の子のおしゃべり会」の企画は立ち消えになりました。

でも、よっちゃんがまんぷく小屋でつなげてくれた娘と同い年の女の子と一緒に、昨年5月に「Teen's遊びと語りの場まつど*あそびラボ」という任意団体を立ち上げて活動しています。

「きちんとやらない」つもりが、ひとつきちんとした形になったのですが、参加者が集まらない、とか、活動がうまく広がらない、とか悩んだ時は、「きちんとやらなくていいんだしね!」とメンバー3人で話しています。

Teen’s遊びと語りの場まつど*あそびラボの情報発信
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子どもの不登校、それも3人の不登校生活をサポートするのは、正直楽ではなく、煮詰まる時もたくさんあります。そんな時、いつも思い出すのはよっちゃんからいただいたこの2つの言葉。

子どもたちのお話をちゃんと聞いているかな?と不安になった時、最近子どものおしゃべりを遮っている気がするな、と思った時の方向転換に。

「ちゃんとしなきゃ」とか、「ひとからどう思われるかな?」と思い過ぎる時は肩の力が入り過ぎている時。大丈夫だよ、よっちゃんがああ言ってくれたんだから、と深呼吸。

不登校は楽じゃないけれど、不登校だからこそ知ったこと、出会えたこと、出会えた方たちがたくさんいることはまぎれもない事実です。そのことに励まされながら、毎日「笑って暮らす」をがんばっています。

※よっちゃん(中村佳子さん)のまんぷく小屋は、常盤平団地内で「まんぷく広場」という活動も広げています。お近くの方はぜひぜひ行ってみてください!



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