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ジーンとドライブ いびつさの遺伝

「なんなのよ~。」
「~しなさいよ~。」
ジーンはどこか女っぽい口調で話す。腕を組んで片方の手を頬にあて、時に小指を立てている時がある。

「あのさ。ひょっとしてオネエなの?」
結婚8年目の夫に言うセリフではないが聞いてみた。
「何言ってるのよ~。」
疑念が膨らむばかりである…。

時折、ジーンに女っぽさを感じるのは何で?どうでもいいことが気になる。
自分はどうなんだ?と考えて見れば、私は女だがもしかすると男っぽいかもしれない。母のお腹にいる時から突き出たお腹を見て、「男の子の可能性が大。」と予想されていたのに女だったし、付けられた名前も男の名前っぽい。体つきだって、お尻だけは女っぽさ満載の大きさだけど、おっぱいが小さい。ずーっとコンプレックスのひとつだった。女子の会話に入るのが苦手だったし、女子っぽい可愛いセリフを言えないところがある。好みの洋服だってレースやフリルは似合わない。でも、かと言って…男ではない。
誰だってどちらの要素も持っているのかもしれない。そんな落としどころでいいのだろうか?ま。どうでもいいことなんだけれど、近頃、ジーンの女っぽさが気になって仕方がないのである。

ふざけて、義母がジーンを呼ぶ時の真似をしたら、「違う!そんなんじゃない。」と言ってジーンが義母の真似をした。流石に親子だ。そっくりすぎてたまげた。父親の真似を息子がしてそっくりなのは分かるけど、異性である母親の真似がこれほど似るのか…。
ある会食中、不意に義母を見ると、腕を組んで片方の手を頬にあて…、小指を立てて…ジーンが時々しているポーズと同じなのを見てギョッとした。
それ以来、ジーンに義母が重なって見えるようになってしまった私。
ジーンの女っぽさは、一般的なそれではなく、義母からきている。そう感じる。言うことなすこと義母のDNAを感じる。義父のDNAだってあるはずだが、それはあまり表面には現れてはいない。義母の影響はきっと生れ落ちてからも影響が強い。
いつか何かで見たことがある。何かを経験した時などに感じた感情や衝撃のようなもの等、心の動きまでDNAレベルで遺伝するというのだ。
DNAレベルで備わっていると言われちゃ、もう仕方がない。私に両親のDNAが遺伝されているように、ジーンにも義父母のDNAが遺伝されている。みんなそうなのだ。そうなると、義母の人生も紐解きたくなる。
どんなに親子関係がいびつでも、どんなに親を忌み嫌っても、どんなに親から思う愛情を得られなくても、その親のDNAが自分にも受け継がれている。それを分かったうえで、親や自分のことを客観的に見つめることは難しい。

結婚したての頃を思い出してみれば、まさにジーンは義母そのものだった。だが、無意識にそれに反発もしていて、捻じれに捻じれていた。そのクサクサした感情が、義母と同性である私との喧嘩で放出されていた気がする。
義父を見る目も義母目線で、ジーンの目線ではなかった。
それが、今は違っているようだ。ジーンの目で義父を見ている。そして、義母の真似をしてお道化ている。少しは、客観的に見ているのかしら…、そう思った。それが出来たら生きやすくなる気がする。
ちょっとくらい女っぽくても、ま、いいか。


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