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【大学野球】2回戦 法大2ー1立大(4月20日 1勝1敗)を考察

1.はじめに

 4月20日(日曜)に行われた、法大ー立大(2回戦)の試合について、印象的なポイントや選手、今後のチームの方向性について考察したい。


2.試合の見どころ

【表1】両チームのスタメン

 法大・大島監督、立大・木村監督はともに今年度から監督に就任し、指揮官として初めてのリーグ戦を戦っているが、大島監督は2021年より、木村監督は昨春頃からコーチとしてチームに携わっており、選手の能力やバックグラウンドなどの新監督としてのチーム情報の不足によるデメリットはなく、昨年から試合出場を続けている主力も多く残っており、ガラリと雰囲気が変わった感じはしない。特に、立大は昨秋のリーグ戦では多くの試合で4年生が登録されず、メンバーを比べても新年度とは思えない程、リーグ戦経験者がズラリと並んでいる。また、木村監督は監督代行として昨秋リーグ戦の大半を指揮しており、選手の能力や特徴は十分頭に入っているはずだ。
 法大は、第2週の今週が開幕となり、前日はエースの篠木投手(4年・木更津総合高)が7回1失点の粘投も、打線が得点を奪えず黒星スタート。この日敗れて連敗スタートとなると、リーグ戦序盤に優勝争いから大きく後退するが、この試合は前日に先発した篠木投手を登録メンバーから外し、エースを除いた他の投手陣で試合に臨んだ。
 立大は、前週の開幕カードで早大に1勝2敗で勝ち点を落とした。3戦目は総合力の差で敗れたが、打線が早大の下級生を中心とした投手陣を攻略できず、得点力に不安を残し今週へ。前日は、小畠投手(3年・智弁学園高)が走者を許しても要所を締める投球で完封勝利し、この日はベンチから外して連勝を目指した。

3.両軍の新監督が目指すチームの基盤が見えた試合

 既に開幕カードを戦っている立大は大越投手(3年・東筑高)、先週は空き週のため今週開幕カードを迎え、初勝利を狙う法大は左腕の吉鶴投手(4年・木更津総合高)が先発。前日の1回戦に先発登板した法大・篠木投手と立大・小畠投手は、ともに登録メンバーから外れた。
 上空の強い風の影響により、レフト方向への打球の飛距離が普段より若干増す中、立大先勝で迎えた2回戦は4回まで両チーム無得点。5回に法大が吉鶴投手の適時打で1点を先制すると、直後に立大は桑垣選手(3年・中京大中京高)のスクイズで同点に。7回に法大が松下選手(3年・桐蔭学園高)の適時打で1点を勝ち越すと、その後は吉鶴投手の後を継いだ安達投手(4年・桐光学園高)が立大を無得点に抑えた。法大は2-1で競り勝って1勝1敗とし、明日の3回戦で勝ち点を狙う。

 この試合で、法大は3つの犠打を成功させた。3つの犠打は藤森選手(2年・天理高)、吉鶴投手、武川選手(4年・滋賀学園高)によるものだが、全て初球に投じられた球で成功させた。藤森選手は高校時代から小技が器用なタイプだが、先発の吉鶴投手や4番打者の武川選手も試合終盤に1球で仕留めた結果から察すると、普段の練習から多くの時間を割いて自信を深めていると感じた。一部の選手ではなく、投手や中軸を任されている選手が、成功しなければならない状況で結果を出したのは、大島監督の走者をコツコツと進塁させ、得点圏で多くの打席機会を作りたいという戦略が伝わってきた。このような意識がチーム全体に伝わると、僅差で競った時に1点を奪える可能性が高くなり、試合を優位に展開できるため、この日の3つ犠打を初球で成功させた事は、今後のリーグ戦を戦う中でも、チームに勢いを与えるものとなりそうだ。また、法大は1点を先制した直後の守りで、中盤の5回一死3塁の場面で内野手を守備位置を前へ指示した。終盤の8回や9回ならば理解できるが、中盤の5回で1点でも失いたくない大島監督の徹底した作戦は印象的だった。
 立大も着実に走者を進めて、得点を狙う意識を感じ、法大と似たタイプのチームを目指しているのを感じた。5回に1点を先制されたが、それまで無安打に抑えられていた打線は、先頭の西川選手(3年・神戸国際大付高)が初球にセーフティバントを敢行し、捕手の失策も絡んで無死3塁の好機を作る事に成功。この場面で、木村監督は7番打者の桑垣選手に初球からスクイズを指示し、桑垣選手もこれに応えてすぐに同点に追いついた。昨年までは監督と選手の意思疎通ができておらず、サインプレーの失敗も多かったが、この日は作戦の成功が目立ち、木村監督の目指す野球を選手たちも理解しているようだった。ただ、法大との差はチャンスの場面で積極的にスイングできない選手が多く、試合経験が豊富なだけで勝負どころで消極的になるのは、法大とは対照的にこれまで細かい指導を受けていなかったからであろう。7回に前打者が死球で出塁して2死満塁の好機を作り、1番・田中選手(4年・仙台育英高)はゾーン内へ投球された絶好の初球を見送った。法大はいつでも初球からスイングできるが、立大打線は消極的になり、結果的に無得点に終わり、試合もそのまま敗れた。試合内容はほぼ互角だったが、勝負所で積極的にプレーできたか否かで勝敗を分けた。


【表2】東京六大学野球春季リーグ戦 4月21日(日)
法大ー立大 2回戦 スコアボード


【表3】ボックススコア(法大)


【表4】ボックススコア(立大)

4.印象に残った選手

 法大・吉鶴投手、立大・大越投手は、ともに序盤からストレートのリリース位置が早くなり、高めのボールゾーンへ抜けるボール球が目立った。吉鶴投手は4回まで無安打に抑えていたが、ストライクとボールの投球がはっきりしており、安定感は感じられなかった。大越投手も3ボールから粘りの投球で4回まで無失点に抑えていたが、相手打者に助けられた場面もあり、次の登板までには無駄なボール球を少なくする投球を心がけたい。
 両チームの投手陣で印象的だったのは、法大の安達投手。試合が動き始めてきた終盤7回二死1・2塁から救援し、死球を与えて満塁にしたものの、1番打者の田中選手を見事に抑えた。その後も、走者を1人でも許すと嫌な展開だったが、ストライク先行の投球で走者を許さず、素晴らしいリリーフだった。腕が長く、制球力に不安がありそうな見た目だが、両コースを突く投球を武器にしてストレートも角度を感じた。間合いも短く、相手打者に考える隙を与えず、自分のペースで投げられる投手。最終学年でリーグ戦初登板となったが、今後の投球次第では楽しみな投手になり得る。
 立大・小林誠投手(2年・日大二高)も1イニングのみの登板だったが、楽しみな投手が出てきた。8回から登板し、先頭打者にセーフティーバントで出塁を許したが、その後の投球が落ち着いていた。二死3塁のピンチを迎えたが、失点が許されない場面でゾーン内へ甘い球は投じずに無失点で切り抜けた。全体的に成長は必要だが、投手として大切な武器を備えており、立大投手陣にとっては貴重な左腕となりそうだ。


参照:【表1】一球速報.com
【表2】〜【表4】東京六大学野球連盟HP

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