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How to Среда ~モスクワからフィルムを取り寄せる~

 初めましての人は初めまして。
そうでもない人はこんにちは。
主にフィルムカメラを使って他愛もない写真を撮っているkazと申します。

 今回、モスクワの写真用品店「Среда」さんから
フイルムを個人輸入する手順を説明するため、noteを開設してみました。
順を追って説明するので、使う人は使って、使わない人は無視してください。

その1
フィルム!海を越えて

 そもそもフィルムの個人輸入の意図とは。昨今この手のニッチな趣味に手を出す人なら、
「いや○○や××で買えばいいじゃん」と思うかもしれない。
ま、試しに見て下さい。


 少し前の話になるが。Kodakのフィルムなんかが顕著で、海外価格と国内価格に倍近い価格差が付くことがある。
これなら「送料や手間を掛けても向こうから輸入した方がいいじゃん」と思うプロレタリアートの諸君は少なくないんじゃないか。

 私は他の趣味(食虫植物や蘭の栽培)で個人輸入は既に手を出していたし、歴としたプロレタリアートなので
「纏まった本数でフィルムを輸入すればいいんじゃないか」と思ってしまった。
(日本法人の相対的な売上が下がって長期的には益々国内のフィルム供給が先細るのではないか、とは考えることは無くはない)

 まあそんなこんなで、ドイツからFoma(チェコのフィルムメーカー)のケミカル含め一式を輸入したりもしている。
フォマパンだいすき。

 今回もその延長線上だ。


その2
ロシアに愛をこめて

 些か前置きが長引いた。
つまりは輸入をするとお得なことがあるよ、そのやり方を教えるよ、というだけのエントリだ。
姿勢を楽にして読んで貰いたい。

 で、今回紹介するのはロシア・モスクワにある
「Среда」という写真用品店だ。
くぺ…なんとか…あ?ではない。

 アルファベットに直すと「Sreda」。スレダだ。
アクセント的にはスにアクセントを置き、やや気だるげに「スレダァー」。

 このサイト、実は3年ほど前にも利用した。

 ロシアのAstrumというメーカーの出したカラーフィルム。
まあ中身はKodakの航空用フィルムの詰め替えなんだが、
これが日本に上陸した際に、東側のカメラフリークとして使ってみる他の選択肢はなかった。

 いやこれがいい味出すのよ。

 で、このフィルムを安く手に入れる手段はないか。
探した結果、このサイトで安く取り扱っていた。
当時の日本実売価格が一本1000円くらい。
Средаで買うと一本辺り700円(送料込み)くらい。


 どーん。

 勿論ロシア語のみだった為、Google翻訳と露日辞書を頼りに注文したら、ちゃんと届いたのだ。先日最後の一本を使い切ってしまったが。


その3
新たなるフィルム

 それから3年。
 使い切ったAstrumの代替となるフィルムが売っていないか探していた
(SFL A-Colorの36枚とかないかなー)所、見慣れないフィルムが並んでいるのを見つけた。


 SFLの新商品で、説明を読んだ所、
「Kodak Vision3のバックコートを剥がしてC-41現像に対応させたテストロット」とのことだった。

 Vision3とはKodakの映画用の現行フィルム。
しかし現像方法がECN-2というもののため、日本国内では現像を取り扱っていない。

 少し前に、Kodakのコンパクトカメラの海賊版だか詰め直しだかで中国から入荷してきたフィルムにこれが詰められており、
C-41として現像に掛けるとバックコートのカーボンが溶けて詰まってしまい、
後続の人のフィルムや現像機そのものが破損する可能性がある、と
ラボ等から注意喚起が出ていたものだ。

(ロシア含むアジア圏では取り扱うラボがある)

 そのフィルムのバックコートを剥がしてC-41、つまりは普通にカラーネガとして現像出来るようにした、と。

 実は「そういう作り方」をしているフィルムは他にもちゃんとある。
 Cinestillがそれだ。
 しかしバックコート除去の手間の分少しお高い。

 つまりこのフィルムを輸入すれば、
Vision3の映りが(比較的)安く楽しめるかなー、という単純な動機である。
(バックコート除去によりフィルムの感度や風合いが異なる可能性もあるが)

 試しにTwitterを利用して、現像してくれそうなラボ数店に
「このフィルムを購入したら現像してくれますか」と問い合わせたところ、
一社から「テストは必要だがイケると思う」と解答頂き、再度の輸入を試みた。


その4
必要なものって、なに?

 前置きがどんどん長くなる。
まあ、物事なんでも丁寧な前戯は大事だ。

 ここからは実際にСредаで注文する際に必要なものから説明する。
と、いってもそんなに大したものはない。

① 翻訳サイト

②クレジットカードかPaypal

③お金

④限りないチャレンジ魂

⑤おおらかな心

⑥2週間~1ヶ月ほどの時間

以上となる。

 もしあなたがロシア語ネイティブなら必要ないが、翻訳サイトは大事。商品の説明や案内のアウトラインを把握出来る。

 支払いはクレジットカードやPaypalが使える。
この期に及んで、
「ロシアにクレジットカード情報流すのはなんか怖い……」
などと宣う人はいないと見越すが、
まあPaypalは使えるので。

 勿論、お金は必要。
商品の代金の他に送料が加算される。
レートに関しては後で説明するけど、送料が4000円くらい別途掛かることは覚悟しておいて欲しい。

 後は、「到着をじっくり待つ根気」と
「トラブルが起きたらロシア語で問い合わせる勇気」
「多少のことは水に流す度量の大きさ」は必要となる。

「注文したのに届かないんですけど……」
「商品が間違って届いたんですけど……」
なんてことを私に相談されても困る。
文字通り「知らんがな」としか回答できないぞ。

 一か八かで直メをするのだ。

 ただ、海外基準なのかなんなのか。
オーストリアのショップもそうだったんだけど、
「会員パスワード忘れたからリセットして」とかメール送っても特に何も反応がなかったりする。
(結局垢作り直した)

 と、いうか忘れすぎだな私。


その5
注・文・方・法

「台詞がなげーぜ!最初からここだけ読みたかったんだよ!」

と苛立って来たレディース・アンド・ジェントルマン。最近では性の多様性を尊重して余り使わないらしい。

 つまりはそういう皆さんに向けてついに本題に入ろうと思う。

 まずは、ウェブサイトそのものを知らねばならぬ。


 まずは色々とこのサイトを眺めてみるといいと思う。


 上の欄がカテゴリ。フィルムや現像液や用品、アパレルに中古カメラもある。

 翻訳サイトで色々文章を訳しながら、気になるものを探すといいと思う。作り自体は日本のwebショップと大差ないし。


 価格が見慣れない単位かもしれない。ロシアの通貨はルーブルだ。

 細かいレートは「ルーブル 円」とかで検索するといいと思うが、
だいたい1ルーブル2円前後。今回は1.5円まで下がっていたのも輸入した動機である。

 で、輸入する決心が出来たら商品をカートに……
入れてはいけない。

 もう一度書いておくね。カートに
入れてはいけない。


 ちゃんとした理由があって、
このサイトはまず会員登録をしないと購入が出来ないんだけど、ゲスト(会員未登録時)にカートに入れて
会員登録を行うと
「ゲストユーザーとは別のカート」扱いになるようなのだ。

 や、マジよ?

 こうなると、ゲストユーザーの商品保持期限(1時間)を過ぎるまで商品の在庫数が減ってしまうのだ。

 ある程度纏まった本数買おうとすると痛い目見る。

見た。

 さて、そうなるとまずは会員登録作業を行っておきたい。

 何故かログインだけは英語で記入されているのでわかりやすいんじゃないかな。
で、ここから新規登録/ログイン画面に移る。

 なんとなくよくみるスタイルのやつ。
既入力されていた私の情報を一旦削除したから変なエラーが出ているけど気にしない。

 左側が新規登録フォーム。右側がログインフォームとなる。
右下にはワンタイムログインとかあるんだけどこれは今回紹介しない。
よくわかんなかったから。

 新規登録フォームを拡大した。
日本語でも説明を付けておいたから参考にするといいと思う。

 唯一手こずりそうなのは国名の設定で、
ロシア語で日本ってどう書くの?という問題が出てくる。
Японияと書く。選択肢の一番下の方にあるぞ。

 海外通販に慣れてる人は
「あ、電話番号の前に+81が付いてるからこれだな」と見当が付くかもしれない。

 電話番号は、03とか090とかの番号から最初の0一桁を抜いて入力する。
03-1111-2222だとすれば 3-1111-2222と入力だ。
これは世界共通なのでいらん説明だったか。

 下の欄のロシア語はそれぞれ

法人

新製品に関する情報を受け取る

個人情報の取り扱いについて利用規約に同意します

を意味する。確か一番下にはチェックを入れておかないと登録出来なかったと思う。当然だけど。

 必要項目を記入すると、SMSか登録メールアドレスに認証番号が送られるので、その認証番号を入力すれば見事会員登録成功だ。

 登録したメールアドレスにこういうメールが届いていれば登録成功となる。
登録したアドレスとパスワードを使ってログインして、欲しい商品をカートに入れていこう。

 会計したければカート内の青いボタンを押す。


 少し待たされ、送料の選択画面に移行する。


 何種類かあるが、国際便は一番下のやつだ。


 続いて注文者・配送先情報を入力する。
説明付き画像付けといたからこれでわかるだろう。

 唯一気を付けておきたいのが、基本的に海外通販は
「番地,町名,市,県,国」の順番で書くケースが多い。
ところがロシアの場合は日本と同様の順番で書くらしい。
国名 県/市町村、
町名,番地(以下アパート名)。

 町名と番地は逆に書いちゃったこともあるけどちゃんと届いたし、
納品書の表記は国際表記に直されていたので大丈夫だと思う。

 以上の工程を踏むと、最終的な合計金額が算出される。
PayPalかクレジットカードで支払うことが出来るので好きな方を選ぼう。


※Tips!!
通貨両替に関して:
お店からはルーブルで請求され、引き落としはおそらくこのエントリを読んでいる人だと日本円になるのではないか。
その為の両替をどこかで行う必要がある。
と、いっても普通意識すらせずに勝手に行われるんだけど。
ここで念を押しておきたいのは
「Paypalに両替をさせてはいけない」という一点。
Paypalを使用する場合、請求に対して現地通貨で支払うか、日本円で支払うか設定することができる。
ここでPaypalで両替する設定にしている人は要注意だ。
Paypalの両替、レートがかなり悪い。
両替手数料も4%取られる。普通のカード会社の倍以上だ。
Paypalからの請求は現地通貨で支払う設定にして、クレジットカード会社に勝手に両替しておいてもらおう。
設定方法は多分ググれば出てくる。


その6
出荷と待ち時間と到着


 無事、オーダーが通ればおそらく2~3日中には登録したメールアドレスに、
追跡番号が記載されたメールが届くだろう。
17Trackなどでリアルタイムで追跡ができるぞ。

 到着までのおおよその目安は、ロシア便の場合10日~2週間。

 ただし、昨今の疫病他の事情で納期が大幅に遅れることがあるので、
長いと一ヶ月は覚悟しておくべきだろう。
一ヶ月経過しても届かないようならショップに問い合わせるといいと思う。
今回は発送からぴったり10日間で受領することができた。


 梱包はかなりしっかりしているので、輸送事故の可能性は高くはないかも。
今回私が輸入したのはまだ試験的なバッチとのことで色々と粗さは目立っている。


「ま、いいか」精神は重要である。


その7
やめてくれ!


 上記の説明で、恐らくやる気のある人なら誰でもモスクワからフィルムや用品を購入することが出来るようになったと思う。
念の為、これはやめておいてね、という事だけ羅列しておく。

・C-41現像だからどこでも現像出来るでしょ。近場で出そうっと。
 お店で取り扱いのあるC-41フィルム。日本では見慣れないものもあるが、現像に出す前に必ずラボに相談すべきと思う。現に購入する事前に数店に問い合わせた結果としては
「たぶん出来ると思うけど確証がないからご遠慮ください」という解答が多数だった。
 先述のAstrumにしても、何も考えず家電量販店に出したら改造フィルム扱いで現像料2倍の上、あちこちのラボをたらい回しにされたりした。
(どうもフィルムの終端をテープ止めしているのが良くなかったらしい)

 今回取り上げたSFL CINEMA 250Dに関しては現像を取り扱ってくれると思われるのは、私の知る限りでは
「カメラはスズキ」「チャンプカメラ」の2社だ。
勿論、フィルムが変わればまた状況も変わるだろうから、珍しいフィルムを見かけても輸入前に相談は必ずすべき。


・あれ?商品が届かないんですけど?なんでだと思いますか?
 もう一度書いておく。「知らんがな」。

私は別にСредаの代理店ではないし、お金を貰って宣伝しているわけでもない。
 幸いにもトラブルに巻き込まれたことはまだないけれど、仮に何かトラブルが起きたとして、それについて相談されても答える事は出来ない。

 強いて言うなら、
「いやー、僕の時は10日で届いたんですけどねー。ロシア便はたまに納期バラつくから一ヶ月くらい待ったらどうですか?それで駄目なら問い合わせですねー」
 もれなくこれをコピペしてご送付致します。

・『どうせロシアのお店なんか滅多に使わないし、この際ダダこねて値引きとか要求してみようかなw

 死刑。


その8
現像 -Developing-

 今回取り上げたSFL Cinema 250D。
現像は通常のC-41プロセスでちゃんと出来るようだ。





 全体的な印象としては、異常な程白が飽和しやすい、という点と、ややアンダー気味に撮るとドラマチックに写る、というところ。

 ISOは色々試してみたけれど、250~400までが許容範囲だと思う。
 ISO100以下は真っ当に写るけど、この白飛びの症状がかなり強く出るようになる。

 ISO100


 勿論、白飛びしづらい被写体に関しては結構有効かもしれない。


 ISO250

 ISO100


 壁フォトなんかにはかなり向いていそうな印象。

 IS0250


 たいへん長くなってしまった。
これで少なくとも、「日本に輸入することは出来る」「現像してくれるお店がある」ことまでは確認できた。

 口が酸っぱくなってくる気分だけれど、くれぐれも
「現像の可否を確認するか、商品を取り扱いしているショップで現像に出す」こと。

 これ、お約束ね。


・最後に


 昨今、フィルムカメラを取り巻く現状は段々世知辛くなっていき、現行のフィルムもバシバシ絶版になったりしている。
 愛と、勇気と、少しの諦めがあれば個人輸入という「手段」が増えることとなる。
 本エントリでは、その「手段」を説明できればいいかな、と思った。

 みんな!バシバシロシアからフィルム輸入して、日本法人作らせちゃおうぜ!




kaz



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