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第81回フィルムさんぽ(クロスプロセス回)に参加してきた件


 毎度お馴染み、フィルムさんぽに参加してきた。

 今回のテーマは「クロスプロセス回」。要するに本来カラースライドを作成するためのリバーサルフィルムを通常のネガフィルムと同じC-41現像をする、というテクニックの事だ。

 これを行うとどうなるか。端的に言えば本来行わない処理を行う事となり、色彩バランスが破綻してコントラストが極端に向上する。


 使うフィルムによって色合いが赤くなったり緑になったり、青や黄色が強調されたりする特殊なテクニックだ。
 例えばロモグラフィーの一部特殊フィルムに関してはこの技法を応用して特徴的な色合いを出していたりする。ロモパープルとか。メトロポリスとか。
 今回はこのクロスプロセスを中心とした撮影会であったのだ。

 さて、使うカメラはいつもどおりアンケートでウクライナ製のKIEV-19Mに決まった。



 このカメラ、一眼レフKievシリーズといい17以降のナンバリングのものはニコンFマウント相似のマウントになっている。
 設計図は恐らく同じなのだろうが、精度の関係でFマウントレンズを取り付けると外れなくなることもあるそうだ。

 幸い、私の手元の19Mはタムロンアダプトールも含めてFマウントレンズが問題なく取り外しできる。

 さて、問題は使うフィルムである。
 手元に先述のLomography Metropolisは一本持っていた。しかし以前のクロスプロセス回に参加する時にメルカリで購入してそのまま冷凍庫にブチこんでおいたへんなフィルムが何本かあったのだ。
 メトロポリスは近年のロモグラフィーのフィルムでは恐らく売れ筋のものだと思う。私も数度使ったことがある。

 メトロポリスがこういう写りをすることは私も含めて参加者の多くが把握しており、特に常連がメトロポリス使っても別におもしろくないのではないか。
 私の中の芸人魂が首をもたげる。
 開催前にカメスズさんに「保険と本命2本現像できるか」を確認したところ、取り敢えずOKを頂いた。

 そこで保険も兼ねてどのフィルムを使うかアンケートを取った結果がこれだ。


 鬼かアンタら。

 しかし古い言葉に「安価は絶対だ」というものがある。ここは私もアンケート結果に背くわけにはいかないのでは。


 と、言うわけでメインで使ったのが、
 左のKodak Ektachrome P1600
 簡単に説明すると、ISO400のポジフィルムだが増感現像に対応しており、光量不足の状態で撮影して2段、3段増感現像すればISO1600や3200のスライドが得られるものだ。ライブハウス撮影なんかにいいよね。

 使用期限は2001年だ。別に聞いて回った訳ではないが、今日の参加者さんにはこのフィルムより年下の人が恐らくいたと思う。

 期限切れフィルム、特にリバーサルフィルムは劣化が早いため長期期限切れになるとまともに結像しないことも多い。フィルムさんぽに於いても先人達のそういう屍の山を幾度も見てきた。

 20年以上期限切れだとそもそもまともに写るかどうか……

 そして保険として使ったものが、
 右側のKodak Ektachrome 160T

 こちらは2000年期限切れ。メインより生産が古い
 Tは「タングステン用」を意味しており、人工灯下で使う用途のものだ。ネガだとCinestill 800T等がある。

 この二本を用いて撮影に挑んだ訳だが、どちらも写るかどうかよくわからない。何せ以前期限切れポジフィルムセットを買った中の生き残りで一本ずつしか入っていないのでテストが出来ない。
 作例をWebで探してもいい感じのものとグダグダなものが混ざって出てくる。状態が外れのフィルム2本引いたら終わりじゃん。

 その場合は大人しく他の参加者さんの説明を聞くだけとなる。
 そ、それだけは避けたい……。


 斯くして撮影会当日。前日にパッキングした荷物を持ってバスに乗って集合場所まで向かう。バス内でSwitchのドラゴンクエストXオンラインをプレイしようと携帯電話のテザリングを入れようとしてふと気づいた。

 携帯、忘れたなあ……

 最悪、携帯なしでも参加できない訳ではないが、解散時の連絡網や自分の作品の投稿にスマホを使う。
 慌ててバスを降りて自宅へと10分走る。
 おかげで15分前に現着している予定が一転、遅刻する可能性が出てきてしまった。
 今回は集合時間タイトなのに!

 

 実際のやりとり。

 また、雨がぱらつくのも甘く見ており、
 「まあどうせわざわざ傘なんて持ってかなくてもそのうち止むでしょ」と侮っていたら
 私のフィルムさんぽ参加史上初、丸一日雨に降られた。
 エフフォーリアもジャックドールも馬券圏内に来なかったし、今日はもう踏んだり蹴ったりだ。
 これでフィルムもちゃんと写っていなかったら厄日だぞ。

 撮影は鶴見駅から工業地帯に向かい、カラフルな建物や重機などを撮り歩く形となる。
 私はやれミラーレンズだとか、望遠パンフォーカスの出来るへんなレンズだとか普通やらないようなことを沢山やってみた。

 まあ雨は中々大変だった。ファインダー曇るし。カメラ濡れるし。私自身はそんなに雨を気にしたりはしなかったのでズブの濡れだ。
 まあ実は着ていったモッズコートが簡易防水加工だったんだけど。

 「保険を用意してへんなフィルム作戦」、私が提案した時は割合賛同者が多かったものの、蓋を開けたら二本出しは私だけだった。
 梯子を外されただと!?

 あまり長くない時間の中、頑張って本命と保険(?)の二本を取り切り、提出した後はもうドキがムネムネだ。
 別件で主催にラボから電話が入る度に、「今の私?今の私のフィルム駄目だったって連絡?」と
 ウザく問うていた。

 果たして講評の時間となる。配られたフィルム袋を見て、
「やったあ!特記事項なし!!」
 何かフィルムの現像やプリントに問題があった場合、袋に特記事項として記載されるのだ。
 未露光とか。コマズレとか。ネガ擦り傷とか。偏りとか。露出異常とか。未露光以外は全部書かれたことがあるぞ。

 そして袋を開けて撮影結果とご対面。


  P1600 Helios-81M

 P1600 Helios-81M

 P1600 TAMRON SP 500mm F8

 う、写っている……!それも至極真っ当に……!!

 P1600 SIGMA-Z Pantel 300mm F5.6

 
 実はこれには一つタネがあって、先述の通りデータがロクにないフィルムなので、撮影開始前にカメスズさんの部長さんに相談していたのだ。

 「本来基準がISO400で増感できるフィルムだけど、一段くらい下げて(ISO200として)使った方がいいですかね?」

 「いや、もう2〜3段下げた方がいいよ。大体こういう半分腐ったのやると自分の想定より2段くらい下なんだ」

 「オーバーな分には手の施しようがあるけど、アンダーになると即死だからねー。ISO50でやってご覧」

 と、言われて全てISO50で撮影していた
 一応、割と未知のフィルムなのでISOを変えて撮影したりしていたが、結果はこうなった。

 ISO50

 ISO200


 やはり餅は餅屋である。

 ただ、P1600はめちゃくちゃちゃんと写っていた訳だがある一点が少し物足りなかった。


 わかるだろうか。折角のクロスプロセス回なのに結果があまりクロスプロセスっぽくないのだ。

 もっと、こう、変な色になったりさあ……

 と、いうことで保険の方の160Tの結果を確認する。


 そうそう、こういう色合いが出てこそクロスプロセスでしょー。
 まあそれでも現行のリバーサルフィルムに比較すると大人しいし、やはり劣化が進んでいるせいかデータではかなりノイズが走っている。
 (プリントはもっと綺麗に写っている)

 一か八かで試しに使ってみた割には結果が悪くなく、下手をすると普段の回より打率が良かったと思う。


 実際の講評の様子。

 クロスプロセス回、皆素晴らしい作品を撮影されていたと思う。
 私も一所懸命頑張ったが、私の写真よりも……


 芸人魂が燃えてつい付けていったプレイステーション型時計とPSOne型バッグの方が受けが良かったような気がしなくはない。




 kaz



 

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