マガジン

  • 夢の果て

    あらすじ:福祉大学に通う進藤匠は、就活に苦戦していた。 夢なんて特になく、ただ本を読むだけしか取り柄のなかった彼は、夢や明確な目標がないという理由で様々な福祉施設を受けては落ちる日々を送っていた。 今日もまた、ある福祉施設を受けて落ちてしまった。その帰り道の公園で、彼はある物に出会う。 それは、真面目な彼とは真逆の存在である、ヒップホップサイファーであった……

最近の記事

祝宴

大きな扉が軽やかに開く。 瞬間網膜に映り込んだのは 緊張と決意に満ちた若きオベロンと 歓喜に満ちた涙を浮かべる若きティターニア 何処までも続く透き通るような青い空に 色を添えるのは薄緑のドレスと黄金色の髪 無骨に見える焦茶のタキシードは 大樹のようにどっしりと立つ 今日は祝宴。契り誓う日 街中に佇む小さなチャペル そこに集まった多くの天使達は 今か、今かと二人の降臨を静かに待つ そしてかの二人の姿が衆目の前に現れた時 一斉に祝福の声が上がった 今日

    • 丘の上のタチアオイ

      ある丘の上に咲いていた、とても綺麗な花一輪。 それがタチアオイと呼ばれていることを知ったのは、一目見たから一年経った後のことだった。 赤く大きな花を開いたそれは、他のどの花よりも美しく、またどこか遠慮がちなその咲き姿は、守ってあげたくなるような儚さと健気さを醸し出していた。 一目惚れだった。初めて観た時、雷が落ちたような感覚を味わった。 辺りを見渡すと、僕と同じように惚れ込んだ男は何人もいた。皆、誰も彼もタチアオイを自分のモノにしようと必死だった。 僕は、タチアオイ

      • アイスキャンディー

         幽霊が見えることを羨ましいと言ってくれたのは、私の幼馴染だけだった。  普段から変わり者と言われていた彼は、取り分けオカルトやらスピリチュアルやら、そういうこの世有らざるものに出会った時から興味を持っていた。  ────幽霊が見えるだって? 素晴らしいじゃないか! むしろ羨ましいくらいだよ!   私が初めて彼に秘密を打ち明けた時、目を輝かせながら受け入れてくれたことは未だに覚えている。 今日みたいに、日差しが強い夏休みの日の事だった。 「……あったねぇ、そんな事。

        • 一人歩いたその先で

           もう何度目だろう。キミがいない春を迎えるのは。  ワタシは日傘の影からそう感傷に耽る。  今日は春という日にふさわしい、暖かで陽気な晴れ模様。吹く風は温く、照る日差しは優しい。日焼け止めを塗る必要がないと思わせるくらいには、穏やかな日の光が降り注いでいる。  ふと、桜の花びらがひらりとワタシの服に舞い降りた。薄く色づいたピンクのそれを、私はつまんで覗き込む。  ————アナタに似ていますね。このサクラの花びらは。  いつか、キミがワタシに言っていたことを思い出す。

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        • 夢の果て
          2本

        記事

          ある幸せな手紙

           愛するアナタヘ。  この手紙を見ているということは、私はもう既にこの世のものではなくなってしまったのでしょう。  あぁ、誤解しないでください。私は決して、アナタを悲しませるという底意地の悪いことをしようと思っているわけではありません。  この手紙を書いたのは、ひとえにアナタとの思い出を振り返るため、そして、アナタに伝えたい事があるためです。それをお忘れなきようにお願いします。  そんな事は分かっていると、優しいアナタは心の中で笑って答えるのでしょうね。私もそれを分か

          ある幸せな手紙

          11月27日のDYNAM.I.Cがひたすらにヤバくて熱かった話

          はじめに  HIPHOPヘッズ、若しくはMCバトルヘッズの皆さんは、数あるMCバトルの大会の中でどのイベントが熱いと感じるだろうか。  王道のUMB? 豪華なMCが出場する凱旋? それとも長い歴史を持つ戦極? いやいや地元のバトルも熱いんだぜって人もいるかもしれない。  その一つ一つの戦いの中に、様々なドラマや名場面、後世に残る個性的なベストバウトが含まれていることは容易に想像出来るし、理解も出来る。どれが正解で不正解かとか、これが最高でこれはダメとか、優劣をつける事自

          11月27日のDYNAM.I.Cがひたすらにヤバくて熱かった話

          人間失格

          「……ふーむ、成る程ねぇ……」  送付した履歴書を見ながら、対面の面接官が声を漏らす。  志望先の福祉法人の理事長という大きな肩書きを持つこの人は、丸い禿頭をポリポリと搔くと、顔を上げて僕の方を見つめた。 「タクミくん……だったね。君は……履歴書を見る限りだと、とても優秀な方だと私は思う。成績や進学校は申し分ないし、聡明で謙虚なのは姿勢からも見て取れる」 「ありがとうございます」  僕はニコリと笑みを浮かべて、軽く頭を下げる。よかった。少なくとも悪い印象は持っていな

          人間失格

          お月見日和に狐に化かされて20万円取られた話

           人間に助けられたことがある。  ずいぶん昔、ボクが子供の頃の話だ。山を歩いている途中に、崖から落ちて、戻れなくなったことがあった。  幸い、怪我はなかった。だが当然、子どものボクには深くて急な足場を昇れるわけもなく、この時間にこんな場所なんて誰も通らないから、誰かが気付いてくれる可能性も低い。最初こそ諦めずに小さい声を精一杯張り上げたり、登ろうとしていたけど、その事実に気づいてからは、無理だと悟ってその場に蹲った。  ——――もう、お母さんにも会えないのかな……  

          お月見日和に狐に化かされて20万円取られた話

          卒業とスタート

           卒業式が終わった。  会場を出て初めて見た空は、冬の日らしい澄み切ったものだった。まるで自分の今の気持ちとリンクしているかのような錯覚を起こしてしまうほど、外の空気は清々しかった。 「ふぅ……漸く、全部終わった」  解放された気分を押し殺しながら、呟きをため息と共に吐き出す。   そう、終わったのだ。  大学生活四年の集大成が、今日、この日を以て完成したのである。やるべき事をやって、為すべき事を為した。  だと言うのに、なんだろう。この空虚感は。 「……ダメだ

          卒業とスタート

          初めてだけど初めてじゃない自己紹介

           皆さんどうも初めまして。ツイッターから知り合っている人はこちらでもよろしくお願いします。焼き鯖と申します。  お前ハーメルンとかラップとか占いとかやってるくせにまた手を広げんのかいと思ってるそこの貴方、全くその通りです。ぐうの音も出ねぇ。  自分自身、何処に向かっているか全くわからなくなってしまいまして。だからこそここで一度整理をつけて頭の中を整理しときたいと思い、noteアカウントを開設しました。 さて、ここでプロフィール紹介 年齢:24歳 性別:オス 職業:

          初めてだけど初めてじゃない自己紹介