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日本の低賃金を喜ぶ経営者と右傾化する東南アジア(不動産)

不動産とそれに関する社会が大好きな風戸裕樹です。今回は、2020年からはじまった渡航制限だけではない「右傾化する社会」がもたらす不動産市場変化について書きたいと思います。国では、東南アジアのシンガポールとマレーシア2カ国について書きます。(この2カ国が東南アジアでは右傾化しているので)

資本主義経済の限界

右傾化する云々の前に、最初にこれについて話をしなくてはいけません。資本主義とはシンプルに「成長を前提とした社会経済システム」と言えますが、
2020年から始まった終了させることが難しい金融緩和、SGDs、脱カーボンなど資本主義経済の限界について仕事として資本市場に身を置く人ですら、「あれ、この変動は避けられないものかもしれない」と感じたのではないでしょうか。

日本の生産性の低さが露呈した

仕事のマネジメント(管理)に関してもそうでしょう。
テレワークになったことで、
自宅でなんとなく仕事をしていても、午後に1時間から2時間昼寝しても、平日お得なデイユースで彼氏・彼女・愛人とデートついでホテルで仕事をしても、
また、午後に打ち合わせがなければランチからビール飲んで、さらに飲み続けてボケーとして5時に退勤ボタンを押して飲みに行っても、
支障がなく仕事が回ることがわかってしまった。

実際、友人・知人(もちろん他社、会社名は挙げられないけど)と話をすると、ほぼ上記ようなことが「話のネタ」として出てきます。この2年で多くの人が一様に経験したことなのでしょう。

こういったことを2年経ても、
仕事に売上に利益に支障がなかったという事実(業種による)が、日本の管理社会がいかに生産性に悪影響を及ぼしていたのか、身を持って実感したことではないかと思います。

私は、マネジメント層にとって、この不都合なコトが露わになってしまったが、従業員レベルからいうと「管理社会からの脱出」だと感じています。

不都合な真実

とはいいながら、国、企業、市場、野望、野望を持つ若者にとって、資本主義経済としての成長は必要だ!というのが実際のところの心の声でしょう。

ようやく岸田政権発足前の総裁選あたりから、日本の賃金の低さ(成長をしてこなったことについて)を他国と比較して、特に平均所得がお隣の韓国に抜かれてしまっていた事実さえも「普通の人」が知ることになります。

一部の評論家や識者が日本の低成長がもたらした弊害について、日本がシンガポールに抜かれた2000年代はじめから発信していたことですが、なぜかメディアや世論で取り上げられることはなかった。ここに来て、ようやく日本のトップを決める総裁選で発信し始めたあたりから、キー局を始め主要メディアでも多く取り上げるようになりました。

冒頭での、成長を前提とした資本主義経済の限界を世界が議論している最中での、今ようやく始まった日本のこの「議論」。おそすぎるというかズレすぎていて笑ってしまいます。

事実先行きはこうです

さて世界にも目を向けてみましょう。IMFは各国の成長予測というものを定期的に発信しています。日本がどういう成長をするのかの予測の一助となるため掲載します。

日本の場合は、低成長を安定的に続けるという見込みです。
金利を上げる可能性が低く、金融緩和が続くと予想されるものの、過去のレコードをみても物価、賃金の上下の弾力性が低い、政治システムの硬直性も考慮されているものと思料します。

IMF発表の数値を元に作成

成長が見込めない、物価さえ上がらなければ、高齢者にとってはある意味「望ましい国」であり続けるのですが、成長を求めている前述の方々にとってはたまったもんではありません。

他方で、新年の日経で大企業のトップ複数人が今年のビジネス環境についてインタビューを受けていたのですが、賃金上昇について聞かれると「企業が生産性をあげて、儲かることが大前提としての議論だ」と鶏・卵のようなことをいっているわけです。

低賃金を喜んでいるといってもよく、自社の成長や株価を最優先に考えている「利己主義」にしか聞こえません。

また「ゼロ・カーボン」とか言ってみても、同時に資本主義経済を先導する米国を始め、日本企業もそうですが、しばらくは二枚舌で進むのもかと思います。

成長に関して一言を言わせてもらうと、日本は極端に成長が弱すぎるという部分で、少なからずインフレ、賃金上昇は他先進国並みを目指すべきというのが私の意見です。

東南アジア諸国の右傾化と不動産

さて、そんな状況の中で、シンガポールやマレーシアでは外国人排除の動きが進んでいます。資本主義的成長に外資・外国人(人口増加)が必要なこの2カ国での変化です。

シンガポールは2020年前から、外国人への就労ビザ要件が厳しく、高学歴かつ高所得者ではなければ発給していませんでした。

不動産については、富裕層が集まるシンガポールにおいて2020年以降の影響はお構いなしに住宅価格は上昇しました。

シンガポール住宅価格Index(FRED)

この急激な上昇を危惧したシンガポール政府は、2021年12月15日、住宅転売市場の過熱抑制策を発表し翌日施行します。

その中には外国人への不動産投資規制が含まれており、外国人(日本国籍を含むが、一部の国籍は除外)が購入するときの不動産取得税(追加印税)率を引き上げ、最大30%としました。キャピタルゲインタックスがゼロの国とは思えない厳しい税を課していますね。

一方シンガポールのお父さんのマレーシア(お父さんといっても、シンガポールに背を抜かれてから久しいですが)

マレーシアは「オーバーハングとよばれる」竣工後9ヶ月超を経過してまだ販売されている住宅の在庫、約3万戸が問題視されていて、そのため新規住宅供給数を抑制してきました。2021年9月時点のオーバハング在庫は30,290戸あり前年同時期とほぼ変化がないのです。

ここでも右傾化の動きが出てきます。2021年8月、外国人向けに発行されるMM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)ビザの申請要件が強化されました。

マレーシアに住んでいる人、移住しようと思っていた人にとっては青天の霹靂でした。なぜならマレーシアは日本人のロングステイ先希望14年連続第一位の国だから。

ビザですが、50歳以上で本ビザの申請要件として必要だったマレーシアへの定期預金金額が375万円から2,500万円(1マレーシア・リンギット=25円換算)に引き上げるといった政策です。

マレーシア不動産には移住目的での外国人購入者が多かったため、本発表により外国人が購入する高級物件の販売が停滞をしてしまいます。そして、いわゆるアウトレットマンションとなり恒常的な20%~30%の値引きや、表面5~6%の賃料保証を引き渡し後2年~3年といったプロモーションがなされていますが、在庫が減る見込みは不透明です。

外国人富裕層の資金が不動産にも集まり排斥する動きの「シンガポール」、世論に押された無意味な外国人排斥に動く「マレーシア」、そしてインバウンドの熱狂がすでに過去になり経済的な不成功として終わってしまった東京五輪の「日本」、今後も日本の立ち位置を世界と比較しながら客観的に考えていきたいと思います。


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