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双極性障害の歓迎会

4月は新年度の歓迎会が開かれる。
大勢いるレストランに一人、身動きできない自分がいるって話。

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会社からほど近い場所で開かれた歓迎会。

新入社員と、私を含めた転職組の挨拶、そして新年度を迎えたお祝いに、ニンニク料理が総勢25名に振舞われる。

料理はとても美味しくて、もちろんドリンクは飲み放題。アルコールが飲めない私だが、大好きな「トマトジュース」があったので、乾杯の一杯は真っ赤なコップを掲げた。

ワンテーブルに8人座り、アルコールが回っているのか、頬を赤ながら楽しそうに喋る社員たち。

そんな中、一人壁にかかったハンガーを見つめて味のしなくなったトマトの酸味をテイスティングしている奴がいた。

私だ。

コロナの自粛はすでに過去のこと。
しかし、テーブルには、まるで透明の仕切り板が私を囲んでいるかのように、深い断絶があった。

みんなの話し声が聞こえる。
誰かの趣味の話をしているようだ。
話題になっているテーマを、私は知らないわけではない。だから、脳内でその会話に参加している自分がいる。

「こんなことを聞きたいな」
「あっ、それ私も知っている」

だが、その言葉は頭の中からは出ていかない。季節はすっかりお花見日和なのに、私の頭は冬眠しているようだ。

無表情だと空気が悪くなるので、みんなが笑うタイミングを見て私も口角を上げる。気持ちの良さそうな笑い声を上げる。だが、自分からは話さない。

時節、私にも質問が来る。一言「そうですね!」と明るい調子で返事をして、会話は終わり、再び透明の壁に覆われる。

もしくは、質問された際に、何か返答しようと考えていると、別の人が「(私の名前)さん答え辛いだろ〜」と笑顔で返すので、会話のペースに置いてけぼりになる。

誰かと目を合わせると気まずいから、テーブルに置かれた料理を見るか、あるいは笑顔だけど誰も見ないで頷くか。しかし、それも疲れてくると、私の席の正面に見える、壁にかかったハンガーを見つめていた。

ハンガーには何も掛かっていなかったので、頭の中でそこに掛けられる服をイメージした。

黒いコート
ベージュのコート
紺色のコート
カーキのコート

コート以外何も出てこない頭は、衣替えを忘れたクローゼットのようにぐちゃぐちゃだ。

結局、3時間の歓迎会で合計4回トイレに逃げる。それもただトイレに行くのではなく、必ず外の空気を吸ってから戻る。そうやって息継ぎをしないと、窒息してしまいそうだから。

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エピソードが長くなってしまった。
要約すれば、大勢での飲み会は、萎縮してしまって全く楽しめない、ということだ。

なぜ会話ができないのか?
次の理由が挙げられる。

・自分の返答で変な空気になってしまうのではないかと不安だ
・自分の声が小さくて聞こえないのではないかと不安だ
・お前の話は聞きたくねえよと思われていないか不安だ
・珍しく話したなと思われると恥ずかしくて話せない

全部、自分勝手な理由です。

こうやって文章にまとめてみると、理由が自己中心的だと気付きます。
そして、「なんて自分勝手でわがままな人なんだろう」と、自分を嫌いになります。すでに嫌いですが。

自己嫌悪のデフレスパイラルですね。
人間関係で悩みたくないから、一人になりたいんだな。
自分勝手が許されるから、一人になりたいんだな。

それでもなんとか生きています。

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