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思いやりの値段

「少し野菜いらない?」と連絡が来た。

元々同僚だった彼女は、今では家を行き来する仲で、新居から歩いて10分のところに住む彼女とは頻繁に会ったり、連絡をとっている。

悲しいことに、彼女も引っ越しが決まっており、1ヶ月後には海の近くへと行ってしまうので、期間限定のご近所さんを満喫するべく、ここぞとばかり会っている。

そんな彼女からの連絡だった。

なんでも頂き物の野菜とか週末に採りに行った野菜が山ほどあるので、食べきれないからお裾分けをとのこと。

引っ越しが来週に迫っているので、大根一本とかもらっても迷惑かな?と添えられたメッセージに「なんの問題もないのでいただきます」と、すぐに返信をした。

・・・

夕方に彼女の家へいただきに参上する予定だった。日中は私も彼女もお出掛けの予定があったからだ。

東京駅に寄った際に、新潟の物産展のようなブースがあり、笹団子が売られていた。

たしか笹団子好きだったはず。

そう思い、手ぶらで野菜だけ貰いに行くのもなんなので、お土産に買って行くことにした。

850円の笹団子を持って、野菜をもらう。

なんとなく、850円で野菜を買うような気持ちになった。そしてそう考えるとなんだか高い気もした。

しかし、そんな思いは3度「間違いだった」と気付かされることになった。

1度目は、すぐに訪れた。
普段から本当に仲良くしてもらっていること、野菜をいらないかと声をかけてもらったこと、11ヶ月の赤ちゃんがいる上に彼女も引っ越し前で忙しいのに時間を調整して準備してもらっていること等、考えはじめたら850円の笹団子じゃ足りないくらいだと思った。

2度目は野菜の量を見た時。

いざ彼女の家へ行くと、私が想像もしていなかった量のお野菜が袋に詰められていた。

大根だけでなく、白菜・葱・人参などなど、モリモリと詰められている袋を見て、笹団子なんかだけじゃ申し訳なくも思った。

3度目は調理し食べた時。

たくさん野菜をもらったので、せっかくだから鍋をしようということになった。立派な白菜やネギをたくさん入れ、彼の好きなキムチ鍋を作ることにした。

袋から野菜を出すと、葉がぎっしり詰まった色味の良い白菜と、まだ土がついている立派なネギに感激した。

スーパーじゃこんな素晴らしい野菜は手に入らない。

もちろんみずみずしくて、甘くて、とっても美味しかった。それはもうびっくりするくらい。
とても198円のスープを使ったとは信じ難いくらい。

あぁ、笹団子なんかじゃ全然足りなかったと思う気持ちと、一度でも850円で野菜を買うというチンケで浅ましい発想をした自分を往復ビンタしたい気持ちになった。

・・・

貨幣価値が存在する前、物々交換の世界だったら、私の選択は大間違いであっだと思う。

「話にならん、帰れ」と言われてもおかしくないレベル。


他人の思いに、値段をつけるのはやめようという話。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。