風の音

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風の音

HSP,LGBT,声,ゾーン,デジャヴ,交通事故,開放骨折,パニック障害,椎間板ヘルニア,フォーカルジストニア,低音障害型感音性難聴,メニエール病,耳管狭窄症,良性発作性頭位めまい症

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  • Doors

    短編小説「Doors」

最近の記事

TOKYO御臨終ピック

別人格から失礼します このくだらないイベントのために これからどれほどの命が奪われるのだろうか そして,もしそうなれば 一体誰が責任を負うのだろうか 答えは そんな人はいない このことをはじめ おかしいことだらけになっている 話を進める前に断っておく このイベントをくだらないと表現したことにより 気分を害された方もいるだろう もちろん申し訳ない気持ちはある しかし,このイベント開催のために 連日繰り広げられる無責任合戦によって イライラしている人もそれなりにいる

    • Doors 最終章 〜 Doors

       僕は細長い廊下に立っていた.先が見えないくらいとてもとても長い廊下に.目の前には沢山の扉が並んでいる.すると,その扉が端から順に開いていき,全ての扉が開いたら扉の中から光が流れ出した.眩い光に一瞬目が眩んで目を背けた.  光が止むとそこには扉が一つだけあった.ドアは開いており,中からキラキラと光が漏れ出ていた.ゆっくりとその中に入ると,中にはまた別の扉が一つ.こちらには鍵が掛かっており厳重に閉ざされているようだった.少しガックリしたが,すぐに前を向いた.鍵を探さなくては.

      • Doors 第26章 〜 夢

         未来で音楽家になる夢を叶えた僕は,もう夢に縛られることがなくなった.そのことは僕をいい方向に大きく変化させた.その一つは夢が変わったということ.新たな夢は『プロ並みの実力をつける』ことだった.一見変わっていないようで,実は大きく変わったように見えるけれど,本質は実は同じものだった.やることに変わりはない.  元々,プロになりたいと思っていたが,どこか周りの同志と違っていた.武道館を埋め尽くす大規模なライブや4大ドームツアーを巡る妄想,音楽番組に出演する妄想,賞賛を浴びる妄

        • Doors 第25章 〜 未来の過去

           2021年1月21日夜.僕は帰ってきた.未来の僕と現実の僕が一つに重なった.ただ,どこか少しだけ違和感が残っている."荷物"は最小限だったが充分だ.その夢だけで.  時間旅行の記憶は線路の継ぎ目くらいの一瞬のことだった.ないに等しいと言えるくらい.しかし,身体に直接刻み込まれた記憶が,その旅の壮絶さを物語っていた.二度と経験したくないと思う過酷な旅の.  時間旅行の際,僕は一人で愛のない世界にいた.右手には夢.決して離さない,何が起きても.そう意気込んで愛のない世界に飛び

        TOKYO御臨終ピック

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        • Doors
          27本

        記事

          Doors 第24章 〜 未来

            ありがとう  そう言うと僕は原稿を置き去りにして夢へと旅立った.いつか誰かがこの原稿を見つけてくれると信じて.そして明日へと戻った.  人はいつだって正しい選択をする.もしも間違った扉を開けばセーブポイントからやり直しになるだけ.途中で間違いかなと思っても,その先には行くべき道が必ず待っている.不甲斐ない人生の幕切れは,冷酷かもしれないが,その人にとってはそれが正しくもあったということ.理由は神のみぞ知る.  明日へ戻ってきたということは正しい扉を開いたということなの

          Doors 第24章 〜 未来

          Doors 第23章 〜 明日への扉

           色々考えた,悩んだ."You"が自分のことではないことくらいは流石の僕でも察しがついた.実らない恋,実らせてはいけない恋だとも.だれも幸せになれない.扉を開ける鍵はあるけれど,そうすればお互いに傷つくだけ.僕が手にしているのは諸刃の剣.どうせ自分はいつだって蚊帳の外だった.  そうだ,お前はJokerじゃないか.忘れちまったのか.その方が楽だぜ.せいぜい庭から道に飛び出た枝になる腐った果実を分けてもらうことしかできないんだよ.それで十分じゃないか.  そう扉を閉めても反対側

          Doors 第23章 〜 明日への扉

          Doors 第22章 〜 運命の人

           運命の人は誰にでもいる.ただし,最初に注意しておかないといけないことが一つだけある.それは,多くの人が思い描く"運命の人"は少し限定的なイメージになっていて,実際はもっと広義な意味を持っているということ.  結論から言うと,運命の人とは『必ず出会う人』のことである.その出会いがたとえ瞬間的なものであったとしても,その人の人生に必要不可欠な登場人物であれば,その人は立派な運命の人と言えるのである.  大事なことなので,もう少し具体的に説明する.たとえば,とあるRPGをプレイ

          Doors 第22章 〜 運命の人

          Doors 第21章 〜 フォーカルジストニア奮闘記5

           ついにその扉に辿り着いた.あれほど必死に探していたその扉,開くときはとてもあっさりしていた.音も立てずに悟ったような扉が開いていた.気がつくと既に別の世界にいた.  その世界は時間が生きていた.僕らの世界では,時間は意志を持たずに無機質に働いている認識だ.直前をただひたすら一定方向に一定の速度で進んでいるかのように見える.しかし,この世界では時間が生活している.右に左に動き回りもするし,早くなったり遅くなったりもする.時間の本当の姿に近いものだと感じた.そして,時間の流れを

          Doors 第21章 〜 フォーカルジストニア奮闘記5

          Doors 第20章 〜 フォーカルジストニア奮闘記4

           その疑問を感じ取ったのか,少女が続けてアドバイスをくれた.沼に飛び込んだら,まず広くて白い雪原を想像すること.それが成功して広い雪原に一人立ったならば,今度は空を見上げること.そうすると雪がひらひらと舞ってきて,やがてどんどん大量に降り始める.その中に紛れて稀に輝いている雪が降ってくるから,それを頑張って見つけること.見つけたらその特徴やそのときの状況,或いは思ったことでも何でもいいからすぐに書き記すこと.手の平に降りた雪のように記憶諸共すぐに消えるので要注意.  とにかく

          Doors 第20章 〜 フォーカルジストニア奮闘記4

          Doors 第19章 〜 フォーカルジストニア奮闘記3

           外は激しく吹雪いている.僕は一人テントの中にいた.雪原のど真ん中に構えたそのテントは,小さいながらも確実に僕を守ってくれている心強い味方.ここにいれば安全であることは保証されていた.ただ,その広大な雪原と激しい吹雪の前に人間の無力さを身をもって痛感していた.吹雪が止むことは二度とない.それがこの雪原の掟.選択肢は二つ,このまま一生この安全の中だけで暮らすか,外に出て本当の安全を探す旅に出るか.  しばらく外をぼんやりと眺めながら考えていた.万に一でも止んでくれたらなぁ.そん

          Doors 第19章 〜 フォーカルジストニア奮闘記3

          Doors 第18章 〜 フォーカルジストニア奮闘記2

           2020年,世間はコロナ禍に見舞われた.多くの人がそうであるように僕の生活も大きく変わってしまった.仕事も含めて音楽関係の活動は全てなくなった.いや,自らなくした.自分自身が不安だったというのもあるが,この状況でリスクを負ってお店に足を運んでもらってまでステージに立つ価値や資格が自分にあるとは思えなかった.どんな顔をして演奏したらいいのか分からない.だから全ての活動を停止させた.  心の中が空っぽになった.けれども,それは同時に動きやすくなったとも言える.悩んでいてもコロ

          Doors 第18章 〜 フォーカルジストニア奮闘記2

          Doors 第17章 〜 フォーカルジストニア奮闘記1

           交通事故で右手の指3本を開放骨折をしたことが原因で後々にフォーカルジストニアに悩まされるようになった.主な症状はドラムの連打奏法が満足にできなくなったことだ.  初めて違和感を覚えたのは事故から半年ほど過ぎた時だった.アップテンポな曲をコピーするバンドのスタジオで,突然動かなくなってしまった.  そのスタジオはとても小さかったので,自分の音しか聞こえなかった.だからボリュームを落とすために少し加減しながら叩こうとした.その時だった.連打でリズムがズレた.嫌な感覚だった.ド

          Doors 第17章 〜 フォーカルジストニア奮闘記1

          Doors 第16章 〜 door

           階段を上っていたら,僕たちはきっと帰っては来れなかっただろう. 旧造り酒屋を利用したスペースで,とある芸術家が絵を展示していた.そのスペースには階段があり2階へと上がれたが,もしそうしていたなら未来は大きく変わっていた. 薄暗くて細い通路を真っ直ぐ進むと曲がり角に差し掛かった.そこで第一のデジャヴが起きた.この場所知っている.そう感じたので,興味が薄れてきた友人三人とは裏腹に僕は先に進みたくなった.みんなを誘導するように率先して進んでいった. しばらく

          Doors 第16章 〜 door

          Doors 第15章 〜 黒いヘモグロビン

           通勤の行き帰りにすれ違う人々の顔はどれもこれも険しかった.自分には想像もできないような大きな問題やプレッシャーを抱えているのだろう.右脳から飛び出ている緊張の糸は,糸というよりも鉄筋のようにピンと張っていた.その鉄筋が周りの人にも容赦なく突き刺さり伝染していくようだ.その表情は今にも崩れそうなくらいヒビだらけだった.にも関わらず次の日も平然と会社へ向かう.向かえる.  どうしてだろう.一体何を考えているのだろうか.きっと仕事のことや家庭のことだけを考えて,自分のことは二の

          Doors 第15章 〜 黒いヘモグロビン

          Doors 第14章 〜 再会2

           メニエール病のめまい発作と騙し騙し付き合いながら僕も社会の歯車になった.約3年振りに音楽活動も再開した.学生時代を取り戻すかのように.辛いことやしんどいことももちろんあったけれど,生きているということが感じられて幸せだった.自分のことを大事にしようと思った.だからだと思う,僕は自然とその扉を開けていた.  以前と同じように俯いていたので顔は見えなかった.僕の存在に気づいたのか,ゆっくりと顔をあげた.伸びた髪で表情がよく見えなかったけど,笑っているのは分かった.僕は初めて扉の

          Doors 第14章 〜 再会2

          Doors 第13章 〜 難病

           バンド活動はそれなりに順調だった.そんな僕に下された次なる試練は難病だった.音楽をやる上で致命的とも言える耳の病気,メニエール病だった.  初めはめまい発作も薬でほとんど抑えられていたので気楽に考えていた.けれど1年もすると頻繁に起こる数時間にも及ぶめまい発作に,日常生活すら厳しくなっていった.リハーサルには参加せずに,病院で点滴をしてから直接ライブハウスに向かうことも多かった.そして限界を感じて遂にその道を去った.病気は僕が大切にしているものを次々と奪っていった.  そ

          Doors 第13章 〜 難病