逃げる

たまに、有名人が不登校の子どもたちについて発言している。
その記事は、私の見たものだけだけれども、
無理に行かなくて良い、しんどければ休めば良い、学校が全てではない、というような論調が多い。理由は、命がいちばん大切だからという明確なものだ。命が脅かされるような場に行く必要はないのだという誰が考えても当然の理由だ。

たとえば、学校に行かなくなる理由はなんだろうか。

勉強に疲れる。ということがある。人間、子どもも大人もそんなに毎日毎日新しいことを欲しているわけでもなく、子どもは吸収力と回復力が速いとはいえ、疲れることもある。
学校の規則正しい生活に馴染まないということもある。人間は動物であり、時計を見ながら行動するようには作られていない。寝たい時に寝て、食べたい時に食べ、立ちたい時に立ち、座りたい時に座り、歌いたい時に歌う。だって、生まれた時から一緒にいる人(親などの保護者)は、それを喜んでくれたじゃないか。なぜ絶賛してもらっていたそれを否定される空間にわざわざ…というような子どももいるのではないかと想像する。
自分以外の人との関係を構築することに疲れる。ということもある。いじめ。いじめるという行為の背後には、いじめる人の生活におけるうまくいかなさがある。ストレス発散。その対象は誰でも良いので、たまたま弾が飛んでくることがあり、弾はやっぱり弾なので痛い。痛い思いをしてまで弾に当たりに行く必要はない。心身ともに死ぬ。
などということを、つらつらと考える。
自己評価と他者からの評価が一致せず、評価する人の懐が深くなかった場合、一方的に権力を振りかざすその「他者からの評価」は暴力装置にもなり得る。怖い。行きたくない気持ちになるわ。

で、私はその有名人の方々が子どもに対してそのような言葉をかけていることについては、概ね好意的に受け取っている。だよね。そのうち、日本でもホームスクールが増えていくかもしれないねと思っていて、独自の教育から、たとえばビリー・アイリッシュのような個性的な子どもたちが育って、新しい世界を見せてくれる未来を想像し、いま生きている社会はあんまり良いものとは言えないけれど、その人が生きているから私も生きられるということがあると思うので、子どもたちが生きやすいように生きられる場所が増えれば良いなと思う。

翻って、私の現実なのだけれど、私はいじめる側にもいじめられる側にもなる子ども時代を過ごし(悪口を言う側と言われる側か。わざわざ言って本人に届いて本人が悲しんでいるので、私もいじめたことがある)、学校には小学校の時からたまに休みながら登校し、大学に行った時に「ホームルームクラスに行かなくて良い、自分の好きな勉強だけすれば良いって良いな!」と生まれて初めて思った。なので、大学がいちばん楽しかったが(もちろん、資格取得のために取らざるを得ない単位もあったものの特に苦痛はなかった)。空きコマを好きなように過ごせるのも良かった。
大学は逃げようとは思わなかった。思ったこともあったのかもしれないが、授業をサボって好きなことをしていたので、もうストレスを忘れているのである。

仕事をしてからは、私は好きなことを仕事にできた人間なので、もちろん好きなこと以外のこともしなければならないけれど(そっちの方が多いような気がするが)、仕事が苦痛で仕方ないということはない。ただ、好きなように働いているだけということでもなく、月々の奨学金の返済のためにとりあえず働かなければならない。あの、「奨学金」という呼び名はもう変更した方が良いのではないだろうか。「ローン」に。
通常のローンと違うところは、返済が滞ると職場に電話がかかってきたり、突如裁判所からお手紙が届いたり、とにかく人権も何もあったものではないような辛いことが多いことである。だから、普通のローンよりも手厳しい「強制力がキツいローン」ぐらいに変名したらどうだろう。

大抵の人は、学歴社会の中で生きていて、就職のために資格を取ったり少しでも有名な大学を出たりしている。100%学費や生活費を保護者が負担してくれる中流階級家庭などもはや日本にはほとんど存在しない。「奨学金」を借りて、仕事をしながら返す。不況なので仕事内容も厳しいし、量も多い。正規雇用をされてもされなくても不安定である。今後もますますそうなっていくと思う。返さなくても良い奨学金を出してくれるとか、学費が要らない職種もあるが、仕事内容が命に関係することだからメンタルが相当強いか鈍くないとやっていけない。

(私は)無理だ。

私はまだまだ奨学金返済が残っているので、貯金を始めたのもだいぶ後になってからだし、どうやって生きていこうかなあとたまに思う。
近年は休職したりした。(ちなみに、「奨学金」返済は、休職・失職期間中は申請すれば待ってくれる。ただ、「待っている」だけなので、減るわけではない。私はそれが辛かったので、傷病手当金を奨学金返済に充てた)

私は、子ども達に「学校に行かなくても良いよ」という言葉をかけている有名人に聞いてみたい。その言葉、奨学金返済、子どもの教育費、生活のために働く大人にも言えますか?

M1グランプリで優勝して1000万円を獲得した時に(半々だと500万円か)、「これで奨学金返済します」と言った霜降り明星のせいやや、家計が苦しい中で高校に通う意味を見失って中退し、おそらく朝から晩までバイト以外の空き時間をDJの練習に注ぎ込んで生きてきただろうCreepy Nutsの DJ松永の「答え合わせはずっと先にある」という言葉の方がよっぽど信頼できる。


🏅結局、優勝賞金では返済できなかったみたいですが…。「親に家を買った」ということで、さらに借金を増やして頑張るせいやさん。


🏅母校の中学生と話した時のDJ松永さん。
DJ松永さんも実家が引っ越したと言っていたと思います。お金を出したのかどうかは言わない人だと思いますが。全部してらっしゃるのでしょう。


▽ご参考に。督促

▽差し押さえと強制執行

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