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『桜の声』【桜回線】③ #毎週ショートショートnote


桜の樹を見上げていたお姉さんは目を閉じたままで
耳を澄ませてなにかを聴くように一人で立っていた。

ボクは好奇心から声をかけた。

「お姉さん、この辺の人じゃないね。
一人でお花見にきたの?」

「・・・キミもひとりでお花見?」


優しそうなお姉さんの声に誘われるように
一緒に桜を見上げていた。


お姉さんが独り言のように話し始めた。

「桜ってね、ひとつひとつの花に心があるの。
多くの生き物たちの魂が桜の花になることで、ちょっとだけ
自分たちが生きていた時に還ることができるの。
短い間だけれど、みんな想い出を懐かしんでいるのよ?」

「・・・そうなの?」

「もちろん、様々な植物もいるし虫さんたちもいるし
動物たちや人間だっているのよ?
みんな同じ仲間のようにいろんな樹に集まって
同じ形の桜の花になって・・・短い時を楽しんでいるの。」


ふと気がつくとお姉さんの姿が消えていて・・・?


風に舞った桜の花びらたちの声が
お姉さんの声に混じって・・・・聴こえた気がした。



【桜回線】
(410字)




お題は【桜回線】。【魅力的な台詞ではじまるお話】。
*続けて参加させていただきます。😊


#毎週ショートショートnote

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