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ダマラのおはなし

そこは深い深い谷の底だった。 ダマラはかれこれ50000年ほどそこにいた。 はるか上空から岩を伝って水が滴り、丸い谷底の中央には湖が浮かんでいた。 この湖の水量は日によって増減を繰り返し、それにはいくつかの周期があることにダマラは気づいていた。 数千年に一度くらいは、ダマラの寝床である洞窟は水で満たされた。 そんなときには井戸のようなこの谷地を登っていって、普段は行き着くことのできない上方に伸びている洞窟に辿り着くのである。 ダマラの寝床は落ち葉と鳥の羽とでできて

    • 心の声にしたがえば

      心の声に従えば わたしはここにいないのでしょうか 心の声に従えば 見返りのない愛を あなたに渡せるでしょうか

      • ある日

        見たことのない鳥をたくさん見かけた日 感じたことのない あるいは忘れていた感情を思い出した日 桜の花びらが地面に落ちてゆくのをたくさん見かけた日 島全体が靄につつまれていた日 薄水色の空に薄ピンクの雲がこっそり重ねられていた夕暮れ お気に入りの場所に腰掛けていたら 自ら近づいてばかりだった猫が 少し近づいてきた もう一度まっすぐになりたいと心から思えた日 なれるんだと思う 私のまっすぐに いつの間にか人の声も猫の声も木の声も花の声も聞こえるようになっていて

        • 永いワルツ

          目を背けた 美しさに生えた棘から (光があれば影がある) 残り香が気になってしまって 痛みを甘受した (それこそわたしが経験したかったもの) あなたの影をよく知っていた あなたの光は相変わらずとても魅力的 (それでこそ光) “しっかり手を握って” だなんて お互い柄じゃないので ワルツを踊ろう

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        ダマラのおはなし

          禁じられたひと

          階段の下からあなたのかもしれない笑い声が聞こえてくる。 あなたのかどうかはむしろ問題じゃないの。 降りて行こうかなんて、何十回か迷ったの。 着替えて、唇を赤くして、 一人で歌ってる。 そういうのが私の愛なの、結局見せたりもしないで。 伝えることはあとまわし、その間にあなたが去っていったとしても。 それでいいの、あなたを汚すくらいなら。 そうじゃないよ、そうじゃないよ。 僕らは生きている。有限の時間を。 決して一人じゃないから。 ここから飛び出すのが怖いの

          禁じられたひと

          ほたる 

          ー湖のほとりでー あおばおつ なつの夕ぐれ コトノハがつむぎだされてみなもはゆれた コトノハはほたるのおからうみいでた よるがおいこしみなもはてった しゅうえんに水と空気はこっそりとまたはじまりをこしらえていた においたつふしぎなあさにたいようがいろをおしえるはるの日のこと

          ほたる 

          砂漠

          ある朝に落とされたのは砂漠だった  吹く砂に身を強張らせたら  風がいう ここにも道が見えるかと 進めば道は砂で消えてく 月の夜に またも2人は巡り合う 永い孤独は終わりを告げる 無音のログ 近くて遠い 離れれば 恋焦がれたわ 狂おしいほど 貝のよう 触れればかたく閉ざされた 止めた話をどうか続けて 溶けあった そしてほどけた 塞がらぬ傷口が今溶け合ってゆく 恋したら実りの季節 少しだけ息を止めたら砂漠の余韻 もう一度 愛に抱かれて 繰り出した 砂漠も今は2

          青い恋人は今はグレー

          青いひと reborn ver. 月沈み心は浮いた 拒んだの あなたのくれた愛でさえもを 自由には狭すぎる島 夢叶う それは運命が鍵を握って 道標だったあなたは消えていた 光をなくし我は彷徨う

          青い恋人は今はグレー

          地獄の門から

          地獄への門をくぐりし君はそう 意見を持たぬ日和見者だ 美しいものに溺れて 溜め込んで浪費したのは狂った異端児 下を見て奢り見上げて妬むのは比較するから 苦しくなった 凍りつく心を守る二枚舌 天国のドアを探し求める 貪欲は節制のなき愛という 色に侵され怠惰に溺れ  手放しをはじめたときはもう遅い 気づいてほしい心の声を 巡礼は外に向かった ぶつかって内へ向かった 自分への旅 本当を贈り損ねた心には 未知のわたしが眠っていたの 氷山をよじ登ったら ゴツゴツの我欲の

          地獄の門から