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原告適格を巡って(オーフス条約)

我が国の行政事件訴訟法では、原告となり得るのは「法律上の利益を有する者」に限定されています。直接に健康被害や金銭的な被害が生じる者は原告として認められやすいのですが、今回私たちが主張している「まちづくり権」や「景観利益」が認められるとは限りません。

これは、国際的にはとても遅れた状況なのです。行政が誤った判断をしたときに、その市民ですら訴訟を提起できないとしたら、いったい誰がそれを正すのでしょう。ここでは、この点について、オーフス条約を取り上げます。

平成4年(1992年)にリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)においてリオ宣言が採択されました。

その第10原則は「環境問題は……関心ある市民の参加により最も適切に扱われる」とし,各個人が「公共機関が有している環境関連情報を適切に入手し」、「意思決定過程に参加する機会を有しなくてはなら」ず、また「司法及び行政手続への効果的なアクセスが与えられなければならない」と定めています。

リオ宣言第10原則を基礎として採択されたオーフス条約では,①情報へのアクセス権、②意思決定への参画権、③司法へのアクセス権を保障することを国の義務としています。そして、同条約2条3項は「環境情報」には「景観」や「影響を受けるおそれのある・・文化的史跡,建築物」が含まれると定義しているのです。

さらに,平成22年(2010年)には、国連環境計画(UNEP)が,オーフス条約を批准していない国を含む全ての国連加盟国に向け、上の①〜③に関するガイドライン」(バリガイドライン)を策定しました。

こうして,これら三点の権利保障は,今や環境保護手続規定の適切な履践を担保する重要なものである旨,国際法上の法理念として確立しています。

我が国はオーフス条約自体は批准していないものの,地球サミットで採択された気候変動枠組条約と生物多様性条約を批准。これに伴う生物多様性基本法の制定などの国内法化によって,これらの法理念を実現していると言えるでしょう。

私たちは、上の①~③の権利は,まちづくり権(まちづくりに参画する権利)として根幹をなすもので、市民は当然に「③司法へのアクセス権」を有していると考えています。

一方で、被告(丹波篠山市)は、個々の市民にはこの権利がない(原告として不適格)と主張しています。
(別稿「原告適格を巡って」を参照してください。)


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