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2つの世界

このマガジンの「コミュニティとその変遷」(その1)(その2)で述べたグローバル社会とローカル社会について、対比しておきましょう。(下表)

2つの世界1

グローバルな世界では、市場原理に基づく競争社会が浸透していて、世界は均質化・画一化しています。世界中どこに行っても、同じ味のハンバーガーを安価に食べることができます。どこの町も、似通った町並みとショッピングモールと住宅で出来ています。
これに対してローカルな世界は、その土地の風土に根差した世界が多様に展開しています。縁側でおばあちゃんの作った唯一無二のおはぎを食べさせてもらえます。町並みや集落の構成原理は近隣の地域と似通っていますが、それぞれ、その町独自の趣きが感じられます。

グローバルな世界では、経済機能が高度に集積した世界都市(Global City)が、世界を牽引しています。けれども、いったい何処に向かって牽引しているかは明らかではありません。世界は走り続けることを求められます。
これに対してローカルな世界は、地域コミュニティの圏域という輪郭を持った、自律的(autonomous)で、独立した(independent)世界です。独自の世界観と、それを実現する社会経済システムを持っています。世界はいつでも立ち止まることができます。

そして、ここで重要なことは、私たちの選択は「グローバルかローカルかの二者択一ではない」ということです。

グローバル原理の本質は、均質化・画一化による効率化にあります。シビルミニマム(憲法25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」)という豊かさとその底上げを実現してきたのです。
これに対してローカル原理は、その土地の風土(自然や歴史文化)に根差した暮らしや生業という個別独自の豊かさを実現しようとする考え方です。

グローバルという豊かさの地平に、ローカルという個別の豊かさを搭載する......そのように世界を構想することが、現実的な選択であると言えるでしょう。ショッピングモールとコンビニという簡単・便利な社会は有り難いですが、多くの人は、それが全ての社会には住みたくないはずです。

この考え方を、国土計画に落とし込んでみましょう。近代以降のコミュニティの変遷から書き起こして、ここまで述べてきた目的も、実は、以下の国土構造の捉え方について触れたかったからです。

これまでの国土計画では、多極分散型、多核連携型などの用語で、過度の東京一極集中を是正し、地方にも都市核を整備する構想が謳われてきました。
これは、グローバリズムの地平面での都市構造の修正、都市機能の分散化を企図するものですが、そもそもグローバル原理とは真逆の発想であることが分かると思います。
それに、大阪や名古屋、福岡などを別にすれば、地方に東京の劣後のミニチュアを造って、地方が元気になるとは思えません。

これまでの国土の捉え方

そうではなくて、本来の国土計画は、「グローバルな地平」という豊かさに、「ローカルでクリエイティブな地域コミュニティ」という豊かさを乗せる2層構造で、国土空間を捉えるべきなのです。
実際に地方への人口移動を実現するには、このようにして魅力的なコミュニティ圏域を創造するしかないでしょう。

本来の国土の捉え方

至ってシンプルな計画枠組みだと思うのですが、このような考え方はこれまで採用されることはありませんでした。戦後、日本の国土計画は間違いを続け、今も間違い続けているのです。

このように考えたとき、
・2つのレイヤーの国土空間への収め方を調整する「土地利用計画制度」が必要となります。
・ローカルなコミュニティ圏域を形成するための「分散型エリア開発事業」とその理論が必要となります。(グローバル社会を形成するための事業や理論は数多存在するので、改めて取り扱う必要はないでしょう。)

(やっと本題に近づいてきました。)


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