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おじさんの「リスキリング」は任天堂に学べ!!

お世話になっております。かずふくです。

先日、任天堂よりゼルダの新作「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」が発売になりました。

前作「ブレス オブ ザ ワイルド」は自分史上最高に面白かったゲームの1つです。「面白すぎてクリアしたくない」と初めて思ったゲームでした。
新作もぜひ早く始めたいところですが、なかなか時間が取れず……。

今回は、そんな面白いゲームを作る任天堂という会社が大切にしていることを踏まえて、おじさんが自身の魅力を最大限に発揮するには、「リスキリング」という言葉に惑わされてはいけないと思ったことをお伝えしたいと思います。

任天堂の歴史に天才あり

ゼルダをはじめとした人気タイトルをたくさんもつ任天堂ですが、100年以上前に花札を作る会社から始まり、今や世界的に有名なゲーム会社になりました。

任天堂の歴史は、以下のひねるゲームスさんの動画でとてもわかりやすくまとめられています。
山内溥氏、横井軍平氏、宮本茂氏、岩田聡氏…。動画をご覧になると、天才から天才へとDNAが紡がれていく歴史に感動します。

天才集団であった任天堂のゲーム開発の思想を端的に表現している言葉が、横井氏によって生み出された「枯れた技術の水平思考」という考え方です。

横井氏は自著のなかでこう述べています。

ゲーム&ウオッチは、5年早く出そうと思ったら10万円の機械になっていた。量産効果でどんどん安くなって、3800円になった。それでヒットしたわけです。これを、私は"枯れた技術の水平思考"と呼んでいます。技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものだから、最先端技術を使うということを夢に描いてしまい、売れない商品、高い商品ができてしまう。値段が下がるまで、待つ。つまり、その技術が枯れるのを待つ。枯れた技術を水平に考えていく。垂直に考えたら、電卓、電卓のまま終わってしまう。そこを水平に考えたら何ができるか。そういう利用方法を考えれば、いろいろアイディアというものが出てくるのではないか。

横井軍平・著 『横井軍平ゲーム館』 (アスキー 1997年)

つまり、「枯れた技術の水平思考」とは、たくさん使われてこなれてきた古いテクノロジー(電卓)を違う分野(娯楽)に落とし込むことで、全く新しい価値(ゲーム&ウオッチ)を生み出すことです。

新しい技術を必死に追わないゲーム開発

任天堂ではこの横井氏の考えがずっと大切にされています。
Nintendo Switchも「枯れた技術の水平思考」の思想で作られたプロダクトです。

2017年に発売された当時、最先端スペックのソニーのPS4の売れ行きが好調でした。

そんな中、任天堂はスマホですでに普及していた小型液晶画面に、先代のWiiと同様の分割できるコントローラー、携帯端末にTVに繋ぐ端子をくっつけた" だけの " Nintendo Switchをリリースしました。

まさに、枯れた技術の水平思考の結晶です。

ゼルダもNintendo Switchと同様に、枯れた技術の水平思考の思想が盛り込まれています。
ゼルダは前作「ブレス オブ ザ ワイルド(BoW)」より初めてオープンワールドというシステムを採用しています。
しかし、オープンワールドシステムは、すでに様々なメーカーからたくさんのタイトルが出ており、BoWはかなりの後発組でした。

そんな既存のジャンルにおいて、BoWでは「岩を押すと転がる仕組み(物理エンジン)」と「枝に火を付けると燃える仕組み(化学エンジン)」という、ゲーム業界ではよく使われている既存の仕組みを組み合わせたアクションを提案しました。

そうすることで、「たいまつで草に火をつけて上昇気流を作る」「うちわで風を起こしてイカダを進める」のような、少しリアリティのある独自の楽しいアクションを可能したのです。

既存の技術の組み合わせによって新たな手法を生み出す。まさにイノベーションです。

選択はトレードオフではない

これほど素晴らしいBoWですが、グラフィックには少し物足りなさを感じます。同時期にリリースされたPSのゲームと比較すると少し、いや、かなり物足りないクオリティです。

ただ、BoWでは「物語本の挿絵」風のデザインとすることで極力グラフィックの粗さを減らす努力をしていることがうかがえます。

「マシンスペックが低いから、グラフィックがしょぼいのは仕方ない」と諦めないのが任天堂のすごいことです。

結果、グラフィックの粗さは気にならない、むしろ味のある映像になりました。

できないことに目をつぶるのではなく、デメリットすらプラスの要素に変えてまう。選択肢はトレードオフではなく、マイナス面も個性に変えてしまう強さが任天堂にはあります。

枯れたおじさんのリスキリング思考

任天堂の開発姿勢から、おじさんがスキルを習得することにも重なる2つの気付きを得ることができます。

  • ベーシックな技術は必要。ただし、応用技術については(知識としてある程度知っておくことは有用なものの)すぐに手を出す必要はない

  • できないことを諦めて放置せず、切り口を変えて良くなる方法を考える

仕事で使う共通言語となるような基礎の技術は必須です。これからの世の中、たとえば、ChatGPTに代表されるAIを使わないことは避けられません。求めたい答えを引き出す質問力を磨く必要があります。

一方、基礎の上に立つ応用技術、例えばデータ分析・ディープラーニングについては、プログラミング技術を理解していないおじさんがいきなり取り組むと大ヤケドします。

また、切り口を変えてみるという点では、サラリーマン生活で培った既存のスキルの棚卸しが有用です。

これまでアナログでやってきた仕事には、進め方などの暗黙知的なノウハウがたくさん詰まっています。

他の業務や部署への横展開、業務の自動化検討への助言などで、考えをアウトプットすることができれば、それは価値のある仕事になります。

新しい技術の習得スピードで若い人に勝ることは難しいでしょう。
ですので、おじさんのリスキリングはこれまで培ってきたさまざまなビジネス基礎力から、「枯れた技術の水平思考」で考えてみてはいかがでしょうか

なお、経済通産省の審議会で発表された資料では、「ソフトスキルが重要」というのがデジタルを理解していない言い訳にならないように提言されています。

誤解4
DXの時代でも、デジタルスキルよりもリーダーシップコンピテン シー、論理的思考力などソフトスキルの方が重要だ

もちろん、ソフトスキルはDXの時代かどうかにかかわらず重要。
だが、「ソフトスキルの方が重要」と言っているのは「デジタルを理解しない」「デジタルの詳細はわかっていな い」ことからの「逃げ」の可能性がないか考えるべき。ソフトスキルだけが高くても、デジタル技術を実際に扱えなければ、生み出せる価値は限定的?

経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会 第2回」石原委員 プレゼンテーション資料より

枯れた技術の水平思考の「枯れた」ということばは、古い技術(=昔取得したスキル)のみに頼るという意味ではありません

「ありふれた技術」を、だれもが思いつかなかったような画期的な使い方や組み合わせで使うことで、全く新しいものを生み出す思想です。

「ありふれた技術」は日々増え続け、そして進化します。新たな情報・技術のキャッチアップを怠ることは逃れられません

まとめ

任天堂は「枯れた技術の水平思考」を大切にし、最先端技術を必須とせずとも、人が楽しむ・驚くかどうかを中心に置いてゲーム開発をしているんだと思います。

我々もビジネスの本質を考え続けることが大事です。
顧客を満足させるため、自分が今のスキルでできることは何か?
これからもアップデートしなくてはならないスキルは何か?

をしっかりと考えるべきです。

「古いおじさん」ではなく、深みのある「枯れたおじさん」を目指しませんか?

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