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読書感想文「法の近代 権力と暴力をわかつもの」嘉戸 一将 (著)

 法律を法律たらしめる理屈に悩んだ近代であり、それは代表制をならしめるフィクションの歴史である。
 公権力の振る舞いは、役割としての振る舞いである。それは、国民とて同じだ。国民は理性的に法を定め、法により公権力に従う。あくまで、決め事として公権力があり、国民とて規定された存在だ。だから「代表」は「代表しない」というパラドックスが生じする。代表は、選ばれたから代表なんじゃん、というのは手続きの正当性なのであって、選ばれた者が集まって、その代表性をどう発揮するかは別なのだ。近代とは、そのことに悩み続けたと言っていい。
 高らかに雄々しく選良であると宣言したところで、ある一定の手続きに基づいたその時点での集計結果に過ぎないのであって、謙虚さととともに委任と職務の関係を自覚するほかない。
 完全無欠の制度はないのであり、古代ローマの民主制を仮に理想として置いてみて、現実の制度を、我々は使い手として弥縫し、ヒーローもスーパーマンも登場しないこの世の中を主体的に生きていくことを法をテーマに歴史から学ぶのだ。


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