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葉山町議会、14人の熱い本会議討議

令和6年(2024年)2月13日、葉山町議会、令和6年の第1回定例会の初日に、議会を傍聴しました。
三浦半島西部に位置し、神奈川県逗子市、横須賀市に隣接する葉山町の人口は、令和6年(2024年)1月で3万2千人ほど。町議会議員の定数は14人。

昨年、気候市民会議in逗子・葉山を傍聴し、その提言を受ける葉山町長以下執行部と町議会議員を実感しておきたいというのが、主たる傍聴の動機でした。

その件に関するものとして、町議会の本会議場の傍聴席で閲覧ができた、「資料 令和6年度予算編成方針」の「3.予算編成の基本方針」の「(8)はやまクリーンプログラムへの対応」のところに、「SDGsで定める17の目標達成に向け、地域規模で取組む中、「環境の町」を世界に向けて発信していくことを目指すエシカルアクションの推進とともに、「はやま気候非常事態宣言」の趣旨を踏まえ、5つのアクションプランに掲げる施策を中心に、再生可能エネルギーの利用や省エネルギーの推進など、脱炭素社会の実現に寄与する取組を検討すること。」と記してありました。

傍聴の昼休みに町役場の方に伺ったところ、令和6年度(2024年度)に入って、気候市民会議の提言を受けて、町の行動計画の検討を始め、年末ぐらいにパブコメを実施し、年度末ぐらいに行動計画を作る予定だそうです。

葉山町役場。この3階の奥の方に、町議会本会議場がある。

1.町議会の本会議傍聴

さて、令和6年の第1回の定例会の初日。本会議場には、開議10時より少し前から議長、事務局等が着席。立派な本会議場で、今まで傍聴した地方議会の議場と比べて、特徴的なものは、傍聴席から見て正面、演壇の前に、大型のモニタ―が絵のように置いてあることでした。
後に、議員が議場の議席で立って発言したりする際に、そこは傍聴席からは見ずらいので、この正面のモニターにその様子が映し出されることが大事だと気付きました。このモニターがなければ、いちいち、傍聴席から、議場を覗き込むことをしなければ、誰がどう発言しているか分からないということがありました。
議員にとっても、馬蹄形の委員会室等であれば、議員同士、お互いの顔を見ながら、自席で審査できますが、教室型で自席で発言する時に、前方のモニターに発言者が映し出されれば、後ろを振り向かなくて良くなります。

議長席の前の演壇の前に、大型ビデオモニター。

日程は、会期の決定等から始まり、町長行政報告ということで、特に、能登半島地震への消防や町の職員の派遣等についての報告がなされました。

そして、その次に、議案5以下の陳情が議題となりました。陳情の議会審査は今まで見聞きしたことがなかったので、どんなのかしらと思って傍聴し始めたら、これがなんとも熱い議論となったのでした。

2.「陳情」の本会議審査 ー委員会で可否同数のもの!ー

今回の陳情は、議案5から議案11までありましたが、いずれも総務建設常任委員会の案件でしたので、まず、総務建設常任委員会の委員長がまとめて報告を行いました。それぞれの陳情の審査経過と委員会採決の結果を報告されました。

報告の後、議案一つ一つについて、議長が本会議に諮ります。まず、議案第5の陳情5-12号です。
委員長報告は採択でした。これについて、反対、すなわち陳情の不採択の意見の者の討論が行われます。次に、委員長報告に賛成、すなわち採択の者の意見の討論の番になりました。

ここで、なんと、総務建設常任委員長が登壇です。普通、討論に委員長が出て来るなんて、ないことなので、何事かと思いましたが、聞いてみると、それなりの事情がありました。

この陳情、ホテル建設地の取付道路幅員の許可に関する行政手続きの検証と、葉山町まちづくり条例に規定された公共の福祉を優先したまちづくりを求める陳情というものでした。

実は、総務建設委員会で、この陳情の採択については、3対3の可否同数で、委員長決裁で採択を決めたという経緯があり、それについて、委員長が討論に登壇して説明をしたのでした。

どうやらこの陳情、かなり前に出されていたのですが、道路幅について、神奈川県の開発審議会で、神奈川県の判断がなされる部分があったので、町議会の判断が先延ばしされていて、昨年後半にその判断が出され、開発が了とされ、それを踏まえて、町議会でも審査が行われたようでした。

陳情採択の理由を大きくまとめると、神奈川県の判断はあるが、そもそも町に出された陳情で、まちづくり条例との関係もあるし、まちとしても全体として検証すべきという趣旨で、採択すべきということだと認識しました。

この後、さらに(採択)に反対の討論が2人の議員から行われました。

そして、本会議での採決となりましたが、採択に賛成が6人。賛成者少数でこの陳情は不採択になりました。

賛成者6人、、、議場には議長を合わせて14人。議長は採決に加わっていませんから、13ー6=7。そう、賛成6、反対7で、1人差で不採択となったのでした!手に汗握る、白熱の審議でした。

議事日程等

3.「陳情」審査は、法規執行の在り方の探求

この後も、それぞれの陳情について、採択するかしないかについて、いちいち討論が行われました。葉山町という土地柄、リゾートマンションやホテル建設の在り方に多くの住民の関心が集まるということもあり、議員もきちんと精査して自分の考えを示す必要があると認識していることによるのでしょうが、よく事案を分析し、考えを示していました。

不採択に全員賛成のもの、採択4、不採択9で不採択となったもの等がありました。

国会での請願処理には接していましたが、請願は付託委員会の理事会で協議され、そこで議員からそれぞれ意見表明はありますが、会議録がないのと、全会一致が請願採択の条件と先例でなっているので、一つ一つの案件について、個々の議員、あるいは会派の考えがきちんとまとめられて表明されたものに接することはありませんでした。

町議会の陳情への対応については、公開の場で、記録も残り、それにより採決が行われるものですから、討論を聞いていると、陳情者の意見を聞き、現地の状況を把握し、町からの説明を聞いた上で考えをまとめ、それを表明するという、実にしっかりとした内容となっていました。

それは、当該案件についての、町の行政の在り方自体についての探求とも言うべきもので、また、その陳情の検証を通して、既存の条例の在り方も考えるという中身になっていました。実に意義あるものとの印象を持ちました。

4.熱心な本会議質疑

10時に本会議が開会され、議案11までの陳情の審議が終わったのは、11時をかなり過ぎていました。

その後、町の政策財政部長から、令和5年度補正予算の説明が資料に沿ってかなり細かくなされました。

これに対する質疑は、議員が自席で行いましたが、議員が町当局と、2、3問やりとりして、次の議員が質問する。それを繰り返していました。

議院内閣制の国会では、本会議や委員会での質疑は、基本、持ち時間が決められ、質疑順も決められ、事前に質疑通告もなわれて行われますが、地方議会では、その辺りは、事前にしっかり決まっていないようでした。

会派で仲間が質問するから、自分の番が来るまでは、聞いていれば良いということに国会ではなりがちですが、地方議会ではそうはいかないようです。個々の議員が、細かいことでも、きちんと問題点を認識し、課題意識を持って挙手して質疑を行わないと、議員としての存在意義がなくなってしまうというような意識があるように感じました。

定員14人の葉山町議会では、議長の奮闘も含め、熱心な本会議質疑が行われ、令和5年度補正予算の審査が午前では終わらず、令和6年度予算の審議も、午後に回ることになりました。

個々の議員が町の行政の執行の在り方、予算のつけ方について、かなりのエネルギーを使って精査検討し、質問を行っているのが分かりました。この辺りは、もっと上手く住民にアピールすべきとおせっかいにも思いました。

同時に、条例制定を含む、新しい政策展開に、どれだけのエネルギーを用い、知見を集約し、実現に繋げているかも知りたいと、より一層感じました。

一般質問をはじめいろいろな手法があると思いますが、気候市民会議で、何か月もかけて住民が議論して作った提言を、どう町が取り込み、どう町議会が議論し、行動計画の策定に結び付けるか。これだけ熱心な本会議審議をしている議員さんたちですから、かなり「やり方」の問題だと思いますので、上手い「やり方」を構築して、気候市民会議の提言の扱いの良き先例を作ってもらいたいと思います。








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