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Weed-out: 目に見えないフィルター

数年前、日本滞在中に関西のとある医学部の教授と夕食をともにした際、その大学の入試問題のことが話題に上った。彼の勤めている大学は昔から超難問奇問が出題されることで有名だ。数学の合格者平均点は100点満点で25点だそうだ。また、毎年どんな問題が出題されるかわからないので、受験生は傾向もつかめないし、対策も取れない。受験生、受験産業泣かせの大学である。

彼曰く、大学はこの難問奇問を解ける人間を探しているのではなく、この傾向も対策も存在しない難問奇問を解こうとする学生を探しているらしい。平均点25点と聞くと25点取らなければ合格できないと思う人がよくいるが、50%の合格者は25点以下、0点近くでも合格している人は少なからずいるはずだ。平均点25点なら、たとえ数学が苦手でもそれほど皆から差がつくことはないし、他の科目で挽回可能だ。しかし、多くの受験生は平均点25点と聞くと、数学が得意でなければ合格できないという思い込みに支配され敬遠する。これは大学が設置した目に見えないフィルターなのである。

同じようなことが一部の国立大学の入試でも言える。国立大学の中には、4科目入試 (理系学部の場合:国語、数学、英語、理科)を実施するところがある。受験科目が多いと受験生からは当然敬遠される。実は、受験生はこの時点で大学にふるいにかけられている。もちろん表向きはオールマイティーな力を持つ学生を探している。しかし、裏を返せば、これは多くの科目を勉強することを嫌がらない学生を探しているとも言える。つまり、面倒臭いことにチャレンジする学生を探しているということだ。ここにも目に見えないフィルターがかけられている。手広く勉強するのは面倒だが、考えようによっては科目が多い方が気は楽だ。 たとえ数学で失敗しても、まだ3科目残っている。逆転が十分可能なのだ。一般的に科目数が少ないと準備が楽だと思われがちだが、それが当てはまらないケースが多々ある。例えば、東京の超有名私立K大学の経済学部。英語と数学という2科目入試のスタイルをとっているが、そこには2科目のエキスパートのみならず、4科目入試の準備をしている学生が日本中から受験をしに来る。失敗は許されないのだ。

アメリカの大学には“weed-out class”という言葉がある。あえて授業を難しくし、宿題を多く出し、学期の前半で学生を脱落させるというクラスである。そこで残った学生にのみじっくり授業をしていく仕組みだ。やる気があり、粘り強い生徒を選別する。上述の医学部や一部の国立大学が行っている試験も、大学に入る前に行うweed-outと言えるのではなだろうか。

『こんな難しい問題は無理!』とか『こんな多くの科目を勉強するなんて無理!』と自分の思い込みだけで決めてしまうのは非常にもったいない。その時点でその大学の思惑にまんまとはまっている。『問題が難しいなら平均点が低いはず。だったら、みんなと差がつかないはず』『科目数が多ければ、失敗しても挽回が可能』 その捉え方は君たち次第だ。“多くの人が敬遠するということは競争があまり激しくないのではないか”と発想の転換ができるかどうかがカギとなる。

Googleの創業者Larry Pageが2009年に母校ミシガン大学の卒業式で行ったスピーチはまさにそのことを言っていた。”大きな夢を実現しようとする人たちの世界は、そんなに競争が激しくない”と。

”困ったときには難しい方を選びなさい”とよく言われる。その真意は実はここにあるのだと思い始めてきた。


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