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もし会社員2周目をやるとしたら

 4月に入ったこの時期になると、黒のスーツを着て、キャリーケースを引っ張っている新入社員らしき人達をよく見かけ、なぜかちょっと嬉しくなります。これから色々なことが経験できる、たくさんの可能性がある人を見るのが嬉しいのかもしれません。
 私が会社に入ったのは1990年で、バブル経済の絶頂期のやたらと楽観的な時代でした。会社では忙しいのが当たり前で長時間働くことが当たり前でしたが、あまり深くは考えず、そんなもんだと思っていました。
 その後、33年間同じ会社で働き、昨年退職しました。会社員としては色々なことを経験でき、最終的にはそこそこのポジションまで昇進もしましたので、かなり良い会社員生活だったと思います。それでも、振り返ると、あの時ああしておけばよかったと後悔していることや、思い出すと気が滅入るような失敗もたくさんありました。特に最初の何年かはやり直したくなることがたくさんあります。
 「もし今、新入社員として2周目の会社員生活があるとしたら、自分はどうするんだろうか?」と思ったりもします。

転職するかもしれないが、少なくとも5年は務める

 私が就職をした時期と今では、職業観はかなり変わっています。同じ会社で定年まで働き続けるというスタイルは一般的ではなくなっていくでしょう。2周目の会社員生活では、おそらく何回か転職をしていくことになるだろうと思います。
 昨年まで勤めていた会社では、入社から3年くらい経った時に辞めて転職する人が多いと言われていました。どの会社でも同じ傾向のようです。3年で辞める人が多い理由は、3年間で一通りの仕事を経験した時点で、自分の思っていた仕事とは違うと考えるようになり、まだ若いうちに転職しようということになるからのようです。3年目までの転職であれば「第二新卒」として採用する企業も多いようです。

 しかし、自分ならば、よっぽど耐えられない何かや、逆によっぽど大きなチャンスがない限り、少なくとも5年は辞めないでしょう。
 確かに3年もやっていると一通りの仕事を経験はしますし、色々なことがわかったような気になります。しかし多くの場合、3年目までにやっているのは単に与えられた仕事を「こなしている」だけで、本当の意味で仕事を理解しているわけではありません。普通の人は、3年目までは与えられた仕事をこなすだけで精一杯です。4年目あたりから少し余裕ができてくると、仕事を「こなす」だけでなく、仕事の仕方を客観的に見て、やり方を変えていこうとする人が出てきます。
 実は、会社にとってはこの「変えていく」ことが出来る人はとても大事なのです。会社というのは、その時代や環境に適応して変わっていかないと存続していけないものだからです。そんなわけで、4年目以降を経験するのとしないのとでは大違いで、3年で辞めるのは「もったいない」のです。
 仮に3年で辞めて第二新卒として転職したとすると、次の会社でまた3年間「こなす」仕事を繰り返すことになります。単に仕事を「こなす」ことを一生やっていく人になってしまいかねません。

 少なくとも5年は続け、仕事の仕方を変えられる力をつけてから次を考えようと思います。そうなっていれば転職先の次の会社でも即戦力になれる可能性は高くなりますし、同じ会社にいたとしても、新たなチャンスが与えられる可能は相当高くなります。

なぜそうなっているかを考える

 仕事のやり方を変える力はぜひとも持っておきたいものですが、誰もが簡単に持てるわけではありません。仕事のやり方を変えられるのは、自分がやっている仕事を客観視でき、単に仕事をこなすだけではなく「なぜ、こういうやり方をしているのだろう」と考えることができる人です。
 長く続けられている仕事のやり方やルールには、これが作られた理由や目的があります。それは、過去の失敗や経験から作られたルールかもしれませんし、法規制や顧客側の要求などの外部要因によってできたルールかもしれません。これを知って仕事をするのと、知らないで仕事をするのでは大きな違いが出てきます。
 理由や目的がわかっていない人は、何かイレギュラーなことが起きた時に応用が効きません。やり方を多少変えても大丈夫なのかどうかの判断ができないからです。その結果、非常に硬直的な仕事の仕方になってしまいます。
 また、元々何らかの目的があって決められた仕事のやり方やルールも、時間が経ち、外部環境や使っている技術などが変化していくにつれ、意味のない無駄なものになってしまうことがよくあります。しかし、元々の理由や目的がわかっていない人には、これが気づけません。
 「なぜ、こういうやり方をしているのだろう」と考える人は、疑問に思う度に少しだけ踏み込み、少し調べてみます。この積み重ねが大きな違いを生みます。しかし、多くの人は、そこまで踏み込みません。そんなことを考えている暇はないとか、自分の仕事ではないとか思ってしまいがちです。

 ここで注意事項が一つあります。「なんでこういうやり方をしているのか」を調べようとしても、どこにも書いてないし、誰に聞いてもわからないと言うことがよく起こります。決められたルール自体は文章化されるのですが、なぜそうなったかはあまり文書化されていないのです。しかし、わからないからと言って、そこで考えるのをやめてはいけません。多分こう言うことなのだろうという推測をすることが、とても重要で意味のあることです。そうやって、仕事の背景にある本当の目的や狙いを理解することができるようになって行くのです。

情報を発信する

 仕事の仕方を客観的に見れるようになり、どう変えていくべきかが考えられるようになると、次に必要なのは、それを人に伝え、理解してもらうことです。問題点は何なのか、どう変えるべきなのかを論理的に説明し納得してもらうために、それを言語化・文書化して発信して行くことが必要になります。
 仕事で得られた情報や問題点などは、自分の中だけに溜め込ます、どんどん発信していった方が良い結果につながると思います。会社の仕事は、他人や他部門度の間の相互理解によって成立っています。多くを語らず黙々と仕事をしているだけでは、理解は得られないのです。

 ビジネスにおいて、情報を言語化・文書化していく能力はとても重要で、早い段階から習得しておきたいものです。しかし、文章を書くのに苦手意識がある人は非常に多いようです。私も今でこそ、こんなことを書いていますが、会社に入った最初の頃は本当に苦手で、文章を書くことは、できるだけ避けて通りたいと思っていました。
 最初から文章を書くのが得意な人というのはいないような気がします。文章化のする力をつけるには、やはり文章を書く機会を意識して増やすしかないのと思います。もちろん、わかりやすい文章を書くための技術というのはあって、これを学ぶことは重要ですが、それを実践する場を多く踏まないと上達しません。また、単に書くだけでなく、他の人に読んでもらういフィードバックを得ることも重要です。それによって、人に伝わる文章を書く力が養われます。

仕事以外で大事なこと

 ここまで出来るようになれば、多分どこの会社に転職しても十分に通用するでしょう。実際は、5年くらいでこのレベルになるのはかなり難しく10年くらいで出来るようになれば上出来です。

 もう一つ大事なことがあります。それは「世の中のに目を向ける」ように努力すると言うことです。会社の中に入り仕事をしていると、良くも悪くもその会社のやり方に染まってしまいます。怖いのは、その会社の「職場の論理」が世の中の常識と乖離してしまっている場合です。パワハラや不正などの問題のある職場の多くでは考え方が世間とは乖離しており、さらに職場の中にいる人はそれに気づけていません。
 世間の常識は、時代と共に変化していきます。今の世の中の考え方と、自分の職場の考え方の違いに気づく感覚を保っていないと、いつしか自分がハラスメントや不正をしてしまう人間になってしまうかもしれません。そうならないために、仕事だけでなく、世の中で起きているの色々な事柄に興味を持ち、世の中に目を向ける努力をするべきです。

最後に

 ここまで書きながら、2周目はかなりうまくいくような気がして来ました。
 あとは、1周目の時と同じように、職場環境に恵まれるかどうかですが、これも多分大丈夫でしょう。色々な会社の長時間労働やパワハラの問題は、この数年の間に急速に改善されて来ているのを見ていますので、あまり心配はしていません。

 しかし、残念なことに、2周目の会社員生活は単なる妄想で実際にはありえませんので、これで上手くいくか確かめることは私にはできません。これを読んで、私の替わりにやってくれる人はいないですかねえ。その結果がどうだったか10年後くらいに教えてもらえると有り難いんですけど。

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